現役の高校数学教師でありながら、億り人となった個人投資家・しろくま。さん。
しろくま。さんプロフィール
始まりは投資雑誌から。追い風を受けた現物株デビュー戦
トウシル:短期間で2億円に到達された投資の達人の正体が、高校の教師と聞いて非常にビックリしています。授業を受けている生徒さんは、先生に2億円の資産があるなんて、想像もつかないのではないでしょうか。まずは、投資を始めたきっかけを教えてください。
しろくま。さん:投資を始めたのは、2013年9月。ちょうど東京オリンピックの開催が決定した直後でした。テレビや新聞で建設関連の銘柄が次々とストップ高になる光景を目の当たりにして「経済って、こんなにダイナミックに動くのか」と衝撃を受けたのが始まりでしたね。
トウシル:当時は、どのようなライフスタイルだったのでしょうか。
しろくま。さん:日中は今と同じ高校の数学教師として働いていました。たまたま職場に株をやっている同僚がおり、いろいろと教えてもらったのが投資を始める後押しになりました。「金銭的な余裕が欲しい」という漠然とした願いが、投資という具体的な行動に結びついた時期でしたね。
トウシル:数学の先生なら最初から高度な分析をされていたのでは、と期待してしまいます!
しろくま。さん:いえいえ、最初は本当の「素人」でした(笑)。まずは書店に行って、『ダイヤモンドZAi』や『日経マネー』を買い込み、隅から隅まで読みあさるという、ごく一般的な投資デビューでした。
最初に買ったのは、地元・愛知県にゆかりのある 東祥(8920) というスポーツクラブを運営する会社や、LINE銘柄とされていた ネットイヤーグループ(3622) 、あとは高配当銘柄として紹介されていた 三井物産(8031) など。当時は「雑誌に載っている有望そうな銘柄を買って、上がったら売る」という、手法とも呼べないようなやり方でした。
それでもアベノミクスの追い風もあり、300万円で始めた資金は、1年ほどで800万円くらいまで増えていたんです。
トウシル:時代の流れもあるとはいえ、上々すぎるデビューですね!
しろくま。さん:これが後の悲劇を招く甘いわなだったんですよね…。
甘い言葉に乗った代償は800万円の資産消失
トウシル:順風満帆に見えたスタートから、一体何が起きたのでしょうか…。
しろくま。さん:自分の実力ではなく相場環境で勝っているだけなのに「自分には投資の才能がある!」と思い込んでしまったんです。もっと効率よく、もっと大きく稼げるはずだ、と。そんな欲に駆られていた時、インターネットである投資顧問を見つけました。
トウシル:どのような投資顧問だったのですか。
しろくま。さん:「数十年間無敗の男」というキャッチコピーでした。バブル崩壊もリーマンショックも乗り越えて無敗。そんな人がいるなら、もうその人に乗っかれば絶対大丈夫だろうと、安易に信じてしまったんです。そこから有料会員になり、推奨された数銘柄にレバレッジ(信用取引)をかけて全力投資しました。自分で考えることを放棄し、他人の選んだ銘柄に自分の資産を全額委ねたわけです。
トウシル:その結末は…。
しろくま。さん:案の定、2015年の夏に起きた暴落、いわゆるチャイナショックが直撃しました。みるみるうちに含み損が拡大し、下がるごとに信用取引でナンピン(含み損の状態で、さらに低い価格で買い増すことで平均取得価格を下げる方法)し…。必死に耐えていたのですが、追い打ちをかけるように2016年2月12日、チャイナショック第二弾ともいえる大暴落が襲いました。
レバレッジをかけていた私の資産はとどめを刺され、ほぼゼロになりました。事実上、相場からの完全な退場です。
トウシル:800万円がゼロ! その時の心境をお察しします。
しろくま。さん:目の前が真っ暗になりました。しかし、不思議と相場そのものに対して怒りは湧きませんでした。「数十年間無敗の人なら大丈夫だろう」と、思考停止に陥った自分自身が一番悪かったのだと。
数学の教師をしていながら、確率やリスク管理を完全に無視し、他力本願で勝負に挑んでいたという愚かさを悔やんだ一方、自分なりの論理的で正しい勝ち筋を見つけることができれば、もう一度やり直せるはずだという、妙な確信だけが残ったんです。
トウシル:投資から完全に離れる気持ちはなかったんですね。
しろくま。さん:そうです。一度は成功した体験があったからかもしれませんが、投資そのものを見限ることはしませんでした。体が動くうちに経済的自由を獲得するには株式投資しかない。そんな思いもあり、種銭を貯める期間に入っていきます。
種銭は先に引く、そして500冊の本を携えた潜伏期間
トウシル:全てを失ってから、再チャレンジまでに何年ほど時間をかけたのでしょうか。
しろくま。さん:2016年2月から2020年3月までの約5年間ですね。この時期を私は「潜伏期間」と呼んでいます。
まず1,000万円貯めてから相場に戻ってこようと考えていました。とは言っても、私の当時の年収は700万円程度でした。
残った金額での生活は苦しかったです。生活に必要な自動車も中古車しか買えませんでした。旅行も高い時期には行けないので、時期をずらして激安のプランで行きました。勤務先の高校までの片道20キロ、大雨の日以外は、ガソリン代を節約して自転車で通いました。いい運動でしたね(笑)。
スーパーでは半額シールハンターでしたし、もやし・納豆は友達でした。飲み物は常に水筒を持参し、昼食代も節約しました。家族に協力してもらいながら、一円単位で無駄を省く生活を続けました。
トウシル:数学教師らしい、具体的な目標設定&徹底した管理ですね。
しろくま。
目標金額を決め、期間で割り、その金額を別の口座に移した残りの金額で生活する。目標・計画が具体的であれば人はがんばることができます。生活は苦しかったですが、経済的な自由獲得のため、耐えるフェーズを楽しみました。
トウシル:その間、投資の勉強はどのように進められたのですか。
しろくま。さん:投資関連の本を買いあさり、最終的には500冊近くほど読み込みました。『 ピーター・リンチの株で勝つ 』、DUKE。さんの『 1勝4敗でもしっかり儲ける新高値ブレイク投資術 』、みきまるさんの『 楽しみながらがっちり儲かる 優待バリュー株投資入門 』、オリバー・ベレスさん他の『 ディトレード マーケットで勝ち続けるための発想術 』、吉川英一さんの「 低位株必勝ガイド 」、朝香友博さんの「 大化け株(テンバガー)サイクル投資術 」など、古今東西のあらゆる手法を頭にたたき込みました。もちろん、「この手法は自分の性格に合うか」「数学的に理にかなっているか」を常に自問自答しながらです。
トウシル:徹底的…! それほどの多くの本を読みあさった結果、何か見えてきたものはありましたか。
しろくま。さん:共通していたのは「自分のストライクゾーン以外は振らない」ということです。私は、世間を驚かせるような10倍株(テンバガー)を見抜くセンスはありません。
しかし企業の決算書(PL/BS)を分析し、利益が増え、それによって配当が増える「増配銘柄」を拾うという観点なら、論理的に戦えることが見えてきました。「2倍になる株を確実に拾い、それを複利でつなげば目標に到達できる」という数学的な確信こそが、5年間の修行で得た最大の武器でした。
また、相場から離れている間に「この銘柄をここで買って持っていれば取れたはずだ」というシミュレーションを繰り返したことも、勝ち筋を確かなものへと変えてくれました。
目指すは2億円!教育費から逆算した父としての目標
トウシル:先ほど「目標」というお話がありましたが、どこに目標を設定されたのでしょうか。
しろくま。さん:再スタートの時に立てた目標は「投資で2億円稼ぐ」でしたね。
トウシル:億り人を超えて2億とは…。なぜその金額を目標に設定したのでしょうか?
しろくま。さん:投資を再開する前に、人生のゴールを「逆算」したんです。私は生まれ育ちがそれほど裕福ではなく、大学進学の際に経済的な理由で進学に制約がありました。1人暮らしは許されず「家から通える国公立大学のみ」という条件が、当時の私にとって現実的な限界でした。
自分の子供には、そんな思いをさせたくありません。もし将来、子供が「私立の医学部に行きたい」と言い出したなら、生活費も含めて1人5,000万円は必要になります。子供2人なら1億円。そして、家族が不自由なく暮らすための資金、あるいは自分が自由に仕事を選べるようになるための資金としてもう1億円。合わせて2億円。これが私の設定した方程式の「解」でした。
トウシル:動機のつくり方までとても論理的です!
しろくま。さん:数学教師ですから、曖昧な目標は立てたくなかったんです。「なんとなくお金が欲しい」では、暴落時に心が折れてしまうでしょう。
しかし、1,000万円を5,000万円にすれば第1ステージクリア、2億まで走り抜ければ子供たちの未来が拓けると考えれば、それは戦うためのエネルギーになります。2億円あれば、仮に10%で回せば年間2,000万円。これなら家族そろって自由に暮らせますから。
コロナショックは天恵!育休投資家の再起が始まる
トウシル:第2章のスタートが近づいてきましたね。運命の再スタートの日はいつだったのでしょうか。
しろくま。さん:5年かけて貯めた1,000万円を手に、いつ復帰するかをうかがっていたところへ、コロナショックが来ました。世界中がパニックになり、優良銘柄が投げ売りされている。でも、私は震えませんでした。5年間牙を研いできた私にとって、それは「今だ」という絶好のタイミングにしか見えなかったんです。
トウシル:「また全てを失う」という恐怖はなかったのでしょうか。
しろくま。さん:全くありませんでした。むしろ、かつて自分を退場に追い込んだ暴落が、今度は最大のチャンスとして目の前に現れたことに、運命的なものすら感じました。ちょうどこの時期、私は育休を取得していました。
「育休投資家」なんて新しいかもしれませんが、これが大きかったんです。教師の仕事は授業や部活動で拘束されますが、育休中であればプロ投資家に近い動きができますから。
トウシル:育休という時間を、最大限に投資活動に充てたと。退場した男が反撃ののろしを上げた瞬間ですね! その成果はぜひ後編で教えてください!
▼後編はこちら
論理、情熱、そして神頼み。200枚の絵馬が2億円へ導く:バリュー株投資家・しろくま。さんインタビュー後編
(トウシル編集チーム)

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