前編では、5年間の潜伏期間を経て、1,000万円の元手で再起したストーリーを伺いました。後編では、資産を1,000万円から一気に2億円へと押し上げた具体的な銘柄選定術や、地元・愛知県だからこそ気づけた視点、そして驚愕(きょうがく)の「神頼み」の真相に迫ります。


論理、情熱、そして神頼み。200枚の絵馬が2億円へ導く:バリ...の画像はこちら >>

市場からの評価が変わる瞬間。狙い目はPERの「評価替え」

トウシル:資産を1,000万円から5,000万円、そして2億円へと一気に加速させた具体的な手法について、詳しく教えてください!


しろくま。さん:私が軸にしているのは「収益バリュー」と「増配」です。特に「第1四半期(1Q)の決算」を勝負どころと考えています。1Qの数字を見て、通期での上方修正や増配の余地を早く計算し、期待値が高いところにベットします。


トウシル:1Qでそこまで見通せるものなのですか?


しろくま。さん:もちろん100%ではありませんが、数学的な確率の問題です。多くの投資家は「成長性(1株当たり利益[EPS]の増大)」ばかりを見ますが、実は最も効率よく利益を取れるのは「株価収益率(PER)の跳ね」なんです。


 株価は「評価(PER) × EPS」で決まりますので、市場からの評価(PER)が低評価から高評価に切り替わる瞬間、いわゆる「評価替え」が起きる銘柄を狙いました。


トウシル:その具体例として、注目の銘柄を教えてください!


しろくま。さん:例えば、 物語コーポレーション(3097) ですね。地元・愛知県の企業で、私も家族で「丸源ラーメン」に通っています。

あそこの「お子様ラーメン」は約200円、ポテトをつけても350円。おもちゃまでついてきます。この異常なまでのバリュー(価値)は、子育て世帯として「この店は絶対に廃れない」という強い確信につながりました。


トウシル:生活者としての視点が投資判断に直結しているんですね。


しろくま。さん:はい。社長が若い、海外の店舗数が急増、業態が分散している、という点も魅力でした。特に同社は2025年6月期から海外展開を急速に加速させており、特に中国に出店を強化しているハンバーグ店「肉肉大米」は非常に高い利益率を示しています。


 海外展開に成功した飲食店は、「スシロー」の FOOD & LIFE COMPANIES(3563) などにも共通しているのですが、期待感からPERが上に飛びやすい傾向があります。15倍程度の評価が30倍へと切り替わる、その「PERの上昇」を成長と掛け合わせて取りに行くのが私の戦略です。


トウシル:PERの評価替えという点では、他にも狙った銘柄はありますか?


しろくま。さん: トヨタ自動車(7203) もそうでした。

2023年に、現場のディーラーの雰囲気や発表される数字から、明確なビッグチェンジを感じたんです。従来の「ガソリン車メーカーの一角」という評価から「EVやモビリティカンパニー」としての期待感が加わり、PERのステージが一段上がると確信しました。


トウシル:地元の空気感から変化を察知するのは、まさに兼業投資家の強みですね!


しろくま。さん:余談ですが、トヨタ株を大量に保有している 名古屋銀行(8522) にも注目し、利上げ期待恩恵に加え、トヨタの評価替えに連動する形でこちらも成功を収めることができました。2023年と2025年の2回、2倍近くを取れましたね。地元の経済圏を深く知ることで、期待値の連鎖を読み解くことができた事例です。


5,000万円までは「攻め」、2億円からは「ゆとり」

トウシル:1,000万円から5,000万円、そして2億円へと資産を伸ばす過程で、戦略に変化はありましたか?


しろくま。さん:明確に変わりましたね。5,000万円に到達するまでは、数銘柄に集中投資をし高いレバレッジも活用する攻めの姿勢で資産を膨らませました。集中投資はリスクも高いので、逆に行ったらすぐに損切して傷が浅いうちに逃げることも徹底しました。上手に負けることは大切ですからね。


 そこから2億円までは、少しずつレバレッジを下げ、現物株を中心とした「増配銘柄」で複利を効かせていくステージでした。


トウシル:2億円という大台に到達して、今の投資手法はどう変化しましたか。


しろくま。さん:以前よりも、心のゆとりを持って相場に向き合えるようになりました。これまでは「効率」ばかりを求めてきましたが、今は先ほどの物語コーポレーションのような優待株を幅広く保有して、家族で楽しむ時間も大切にしています。


 ただ、軸となる「収益バリュー」の視点は変わりません。現在も 愛知電機(6623) 、 ネクステージ(3186) 、 ゲオホールディングス(2681) など、地元かつ堅実な増配が期待できる銘柄をポートフォリオの中心に据えて、着実に資産を守りながら増やす運用を続けています。


ロジックの先にある200枚以上の絵馬

トウシル:お話を伺っていると、本当にロジカルに投資をされていると感じます。さすが数学教師といいますか。


しろくま。さん:実はそうでもなくて、神頼みも結構するんです。2億円を達成するまでに神社で200枚以上の絵馬を書いてきました。京都の「御金神社(みかねじんじゃ)」や岐阜の「金神社(こがねじんじゃ)」など、お金に縁のある神社へ通い詰めました。


 鉄で勝負していた時は、金属の神様である岐阜の「南宮大社」、海運・造船の時には、香川の「金刀比羅宮」や大阪の「住吉大社」にもよく足を運びましたよ。


トウシル:神頼み! そして200枚以上! 数学教師のしろくま。

さんからその数字が出るとは驚きです。


しろくま。さん:絵馬の裏には、具体的な目標金額、日付、そして自分の名前をハッキリと書いて祈ります。2億円達成を機にほとんどお返ししましたが、手元にある画像を見ると当時の必死さを思い出しますね。


 これは単なる神頼みではないんです。論理を尽くして分析し、最善の手を打った上で、自分ではコントロールできない運の部分を神様に託すんです。そこまでやって初めて、暴落が来ても「これは神様が与えた試練だ」と冷静に受け止められるようになるんですよ。


トウシル:神頼みの話を耳にすることはありますが、ここまで徹底されている話は初めてです…!


論理、情熱、そして神頼み。200枚の絵馬が2億円へ導く:バリュー株投資家・しろくま。さんインタビュー後編
ロジカル思考の投資信念を貫くための支えになったのが「神頼み」。今はだいぶ減ったが、最高時は200枚以上の絵馬をいJ宅に飾り、毎日祈願!

2億円に到達して芽生えた社会貢献の心

トウシル:念願の2億円に到達した今、どのような心境ですか。


しろくま。さん:子どもの学費も用意できましたし、家族の生活に必要なお金もあります。自分のために稼ぐフェーズは終わったな、と感じています。最近は、社会に対して何ができるかという「社会貢献」の気持ちが強くなってきました。


トウシル:具体的に、社会貢献に関するエピソードがあれば教えてください。


しろくま。さん:教師として生徒と向き合う中で、看護師を目指している教え子がいました。非常に優秀で志もあるのですが、家庭の経済的な事情で、私立大学への進学を諦めかけていたんです。「お金がないから夢を諦める」という姿を、どうしても放っておけませんでした。私は本人に「本当に行きたいなら、先生が学費を出してあげるよ」と伝えました。


 結果的に、その子は自力で進学できましたが、あの子がその状況になれば、私は本当にお金を出すつもりでした。資産があれば、誰かの未来を本気で守れる。投資を続けてきて、本当によかったと思えた瞬間でした。


トウシル:生徒さんのためとはいえ、先生がお金を出すとは驚きです!


しろくま。さん:自分が経済的な理由で進路を制限されていた体験が大きいですね。数百万円で若い子の人生が変わるなら安いものかなと。家族のためにつくった2億円ですけど、その一部で誰かの人生を支えられるなら、私もうれしいですよ。


トウシル:…(絶句)令和の足長おじさんはこんなところにいたんですね。


学び、考え、祈る。自分だけの方程式を見つけよう

トウシル:これから資産形成を目指す読者へ、しろくま。さんの経験からアドバイスをお願いします。


しろくま。さん:大切なことは四つあります。まずは、何をおいても「本を読む」ことです。まずは先人の知恵を借りるのが一番の近道。私は500冊近くの本を読みましたが、どの本からも学べることはあったと思いますよ。


トウシル:数ある投資本の中で、しろくま。さんおすすめの本を教えていただけますか?


しろくま。さん:高校生にすすめているのはこの辺りです。


『 金持ち父さん貧乏父さん 』(ロバート・キヨサキ 著。実際に高校で行っている金融経済教育の授業の導入で使っています。本質をついた名言が多数あり。中流以下の人間はお金のために働く、金持ちは自分のためにお金を働かせる)、『 インベスターZ 』(三田紀房 著。マンガだから親しみやすい。でも高校生には少し難しい模様)、『 賢明なる個人投資家への道 』 (株1000著。金融経済教育の授業で教科書代わりに使っています。複利表とインフレの下りがよい)、『 [普通の人]でも株で1億円! エナフン流VE投資法 』(奥山月仁著。136ページから141ページを読むと株式投資がしたくなります。時間軸長めのほったらかし投資)、『 「増配」株投資 年1,075万円もらう資産3.7億円の投資家が教える! 』(ヘム著。今まで自分がしてきた投資法が言語化されていました。守備力が極めて高い手法)、『 50万円を50億円に増やした投資家の父から娘への教え 』 (たーちゃん著。「バリュー株の神」と呼ばれた著者が、資産バリュー、収益バリュー、シクリカルバリューをわかりやすく説明。株式投資以外の生き様からも学ぶべき点が多々あり)などです。


 また、あまり他の人が勧めない本の中ではこの辺りです。


『 相場で負けたときに読む本 実践編 』(山口祐介著。勝者は「大きく勝つ」から勝者なのではありません。「大きく負けない」から勝者なのです)、『 相場で負けたときに読む本 真理編 』(山口祐介著。負けたトレーダーが破滅するのではない。負けたときの対応が悪いトレーダーが破滅するのだ)、『 株のしくじり先生 億儲けたと思ったら溶けちゃった!失敗に学ぶ成功術 』(別冊宝島編集部 編集。「当てはまったら要注意?投資で失敗する人のありがち行動20ヵ条」は勉強になります)、『 億飛んじゃった!株のしくじり先生 天国と地獄 』(別冊宝島編集部 編集。しくじり先生の教訓が多数掲載されている。実際の失敗談なので言葉に重みがあります)。


トウシル:この中にはきっと自分に合う一冊がありそうですね! 残りの三つの要素についても教えてください。


しろくま。さん:二つ目は「数学を学ぶこと」です。何も難しい微分積分が必要なわけではありません。大切なのは期待値の考え方です。勝てる確率が高い場面で、リスクを抑えつつリターンを最大化する。この論理的思考があれば、いちかばちかのギャンブルはしなくなります。


 三つ目は「株の集まりに出ること」です。一人で画面に向かっていると視野が狭くなりますが、オフ会や勉強会で他の投資家と交流すると、自分にはない視点や、新しい銘柄のヒントが得られます。何より、同じ志を持つ仲間の存在は、暴落時の支えになります。


 四つ目は「目標までの道筋を考えること」です。「いつまでに、いくら必要なのか」を逆算し、それを達成するためのポートフォリオを組む。自分の投資期待値の限界も考察し、必要な種銭も計画的に貯める。道筋が明確なら、日々の株価の上下に一喜一憂せずに済みます。


トウシル:四つのステップ、どれも本質的です。これをやり遂げれば、道は開けますか?


しろくま。さん:はい。この「やるべきこと」を全てやり尽くしたなら……最後は「神様に祈ること」です(笑)。人事を尽くして天命を待つ。その境地まで努力を積み重ねた人こそが、相場で生き残っていけるんじゃないでしょうか。


トウシル:ロジカルさと情熱、そして神頼み。しろくま。さんの「2億円の方程式」の正体が見えた気がします。本日は本当にありがとうございました!


▼前編はこちら

数学教師が「2億円」を逆算。退場を経てたどり着いた「勝ち抜くための方程式」:バリュー株投資家・しろくま。さんインタビュー前編


(トウシル編集チーム)

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