先週の日経平均は、米国とイランの停戦合意や国内主要企業の好決算を受けて5万7,000円台まで急反発。中東情勢に左右される「モメンタム相場」が続く中、今後は企業決算を重視する「業績相場」の要素も加わってきます。

今週は、海外企業の決算が注目されそうですが、業績を背景にした銘柄物色が相場上昇の持続性を占うカギになりそうです。


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停戦合意と決算で水準を切り上げた先週の日経平均

 先週末10日(金)の日経平均株価終値は5万6,924円となり、前週末の終値(5万3,123円)からは約3,801円高の大幅上昇で1週間の取引を終えました。


<図1>日経平均の5分足チャート(2026年4月6日~4月10日)
株価上昇しても、相場が強いとは限らない?イラン情勢が不透明な中、国内外の決算が本格化
出所:MARKETSPEEDII

 あらためて、日経平均の先週1週間の値動きを5分足チャートで振り返ると、「もみ合い」と「一段高」を繰り返しながら、階段状に株価水準を引き上げていった様子が確認できます。


 とりわけ、チャート中央の8日(水)の上昇が目立っていますが、この日の日経平均は歴代3位の上げ幅となりました。


 この株高は、「米国とイランが2週間の一時的な停戦に合意した」と報じられたことがきっかけとなりました。直前まで米国によるイランへの地上軍事作戦の実行が警戒されていただけに、停戦の合意自体がサプライズになったことや、合意に合わせてイランのアラグチ外相がホルムズ海峡の安全な通航を可能にすると表明したことも安心感を誘いました。


 さらに、株価の下落を見込んでいた売り手が、急反発に慌てて買い戻す「ショートカバー」なども株価の上げ幅拡大に貢献したと考えられます。


 また、週末10日(金)の日経平均も、米国株市場で半導体関連株が上昇した流れを受けたことや、前日に決算を発表した ファーストリテイリング(9983) 株が買われたことで、1,000円ほど株価水準を引き上げる展開となりました。


 もっとも、中東情勢は依然として不透明であり、さらなる状況の改善期待と同時に、悪化懸念も併存している状況ではあります。ただ少なくとも、直近までのネガティブムード優勢が後退し、日経平均が週間を通じて前週末の終値を下回らなかったことはプラス材料です。


 そして、これから本格化する決算シーズンを前に、業績を素直に好感して株価が上昇する動きがあったことも、今後の株高への期待感につながりそうです。


 このことは、チャートの視点を5分足から日足に切り替えても感じられます。


<図2>日経平均(日足)とMACDの動き(2026年4月10日時点)
株価上昇しても、相場が強いとは限らない?イラン情勢が不透明な中、国内外の決算が本格化
出所:MARKETSPEEDII

 図2は、日経平均の日足チャートと下段にMACDの推移を描いたものです。

前回のレポートでも想定していた上値の目安(2月26日の高値をつける前にもみ合っていた株価水準の中心)である5万6,700円を上回ってきたほか、下段のMACDも「0円」ラインを上抜けてプラス圏に浮上するなど、日足チャートの形状も回復基調を描いています。


▼前回のレポート

2026年4月6日:乱高下の日本株、底打ち期待と下落警戒続く。4月相場の転換点は?


「モメンタム相場」と「業績(期待)相場」

 このように、先週の動きから足元の相場環境を整理してみると、ポジティブとネガティブのあいだで振り回されやすい中東情勢という「モメンタム相場」と、決算シーズンを迎えるタイミングでの「業績(期待)相場」の要素が入り混じっている状況と言えそうです。そして、チャートの形状も悪くなく、条件が揃えば2月の高値を超えるシナリオも想定できるかもしれません。


 もっとも、中東情勢は先週末からパキスタンで行われている米国とイランの協議の行方次第であり、予測が難しいため、もう一方の業績相場について、もう少し細かく見ていく必要がありそうです。


 先ほども見てきた通り、8日(水)の上昇は「イラン情勢の改善」、10日(金)の上昇については「業績評価(期待)」が主因と考えられます。


<図3>東証プライム市場の状況と日経平均の動向
株価上昇しても、相場が強いとは限らない?イラン情勢が不透明な中、国内外の決算が本格化
出所:MARKETSPEEDIIおよび取引所公表データを基に作成

 図3は、直近2週間における東証プライム市場の状況(売買代金、騰落銘柄数)と、日経平均の推移を示したものです。


 日経平均が前日比で2,878円の上昇となった8日(水)は、株価の上昇に伴って、東証プライム市場の値上がり銘柄数も1,383銘柄と多かったのですが、1,029円上昇した10日(金)の値上がり銘柄数は469銘柄と、値下がり銘柄数(1,050銘柄)よりも少なくなっており、一部の銘柄によって引き上げられた可能性が推察されます。


 そこで、8日(水)と10日(金)のそれぞれの、日経平均への上昇寄与度トップ10の銘柄を計算すると、以下の通りになります。


<図4>日経平均上昇寄与度ランキングの状況
株価上昇しても、相場が強いとは限らない?イラン情勢が不透明な中、国内外の決算が本格化
出所:MARKETSPEEDIIデータおよび日経平均プロフィル公表の係数・除数を基に筆者作成

 まず、8日(水)のトップ10銘柄の上昇寄与度を合計しても約2,002円で、この日の上昇幅(2,879円)に届かず、11位以下の銘柄も含めて多くの銘柄が上昇していたことになります。


 反対に、10日(金)の取引では、ファーストリテイリング、 東京エレクトロン(8035) 、 フジクラ(5803) 、 ファナック(6954) 、 キオクシアホールディングス(285A) の5銘柄の寄与度合計(1,074円)だけで、この日の上昇幅(1,029円)を超えています。とりわけ、決算を好感して買われたファーストリテイリングの寄与度(650円)が半分以上を占めています。


<図5>ファーストリテイリング(日足)と75日移動平均線乖離率(2026年4月10日時点)
株価上昇しても、相場が強いとは限らない?イラン情勢が不透明な中、国内外の決算が本格化
出所:MARKETSPEEDII

 実際に、ファーストリテイリングの値動きを図5に日足チャートで確認すると、10日(金)の上昇が大きくなっている様子がうかがえます。

また、チャートを過去に遡ってみても、決算発表のタイミングで株価が大きく上昇している傾向があります。


 とはいえ、下段の移動平均線乖離率(75日)を見ると、株価が75日移動平均からプラス20%近くになると、いったん株価の天井をつける傾向も読み取れます。先週末10日(金)の乖離率もプラス20%近くになっており、目先は利益確定売りなどに押される可能性を視野に入れておく必要がありそうです。


今週のカギを握る半導体企業決算

 このように、好決算に反応しやすい相場地合いではあるものの、相場全体として株高基調を維持するには、「後に続く好決算銘柄」が出て来るかどうかがカギになります。


 ただ、今週は 東宝(9602) や 高島屋(8233) 、 J.フロントリテイリング(3086) といった日経平均採用銘柄の決算発表が予定されているものの、いずれも指数への影響度は高くはないでしょう。そのため、今週は国内よりも海外の企業決算に視線が向かいやすくなりそうです。


 今週は、 ゴールドマン・サックス(GS) や JPモルガン・チェース(JPM) など、米国の大手金融機関をはじめ、海外の半導体企業の決算が予定されています。


 特に、15日(水)に予定されているオランダの ASMLホールディング(ASML) や、翌16日(木)の台湾 TSMC(タイワン・セミコンダクター・マニュファクチャリング:TSM) といった半導体企業の決算は、図4でも見てきたように、 アドバンテスト(6857) や東京エレクトロン、 ソフトバンクグループ(9984) 、 TDK(6762) 、フジクラ、ファナックなど、日経平均への寄与度が大きい銘柄の株価に影響を与えることが考えられるため、重要になります。


 したがって、今週の株式市場は、モメンタム(中東情勢)が不安定な中でも、企業決算を手掛かりに、「意外と上昇していく」場面を見せるかもしれませんが、「株価は上昇しても、相場が強いとは限らない」ということも意識しておいた方が良さそうです。


振れ幅の大きい相場展開への疲労感にも注意

 そして、最後に前回のレポートで解説した「信用残(信用取引残高)」の動きについても答え合わせをしていきます。


<図6>信用残高の状況(2市場、制度・一般合計)
株価上昇しても、相場が強いとは限らない?イラン情勢が不透明な中、国内外の決算が本格化
出所:取引所(東京証券取引所)公表データを基に作成

 前回のレポートでは、2026年に入ってからの信用取引の規模が1月と2月は「日本株の先高観」から3月は「値動きの大きさ」を意識した増加へと変化している点を指摘していました。


 それが、先週公表された4月3日時点の信用残の状況を見ると、買い残・売り残を合わせて、わずか1週間で約8,400億円も減少したこと、そして、評価損益率も悪化していることが、図6から読み取れます。


 その内訳を見ると、買い残が1,715億円の減少、売り残が6,741億円の減少となっていて、売り残の減少が大きくなっています。


 4月3日の週は週初の30日(月)が3月権利銘柄の「権利落ち日」だったこともあり、いわゆる「優待取り(株価変動リスクを抑えながら株主優待を得るために現物買いと信用売り建てを組み合わせる)」による売り建ての返済が多かったことも影響していると思われますが、基本的には4月1日(水)の株価急騰によって、損失が出始めた売り方によるショートカバーがメインと思われます。


 一方の買い残については、株価上昇による利益確定や戻り待ち売りによって減少したと考えられ、いずれにしても、売り残・買い残ともに、中東情勢を背景とした足元の株価の振れ幅の大きさが、「短期的な収益機会」ではなく、「持ち高を整理する機会」へと変わったことも想定できます。


 ここ2週間の株価の上げ下げは、トランプ米大統領の発言に振り回されている面が強く、「TACO(トランプはいつもビビッて退く)」の思惑が先行するトレードが活発だったと言えます。


 とはいえ、実際の中東情勢がどこまで変化し、改善(もしくは悪化)したのか、今後の物価や供給網(サプライチェーン)への影響はどのくらいなのかについては、まだ不透明な状況が続いており、さすがに「TACO疲れ」が出始めているのかもしれません。


 そのため、中東情勢については、発言に振り回されるのではなく、具体的な進展による成果や影響の見極めが求められ始めている段階に入り、これから本格化していく決算シーズンも併せて、銘柄の選別が進んでいくことになりそうです。


(土信田 雅之)

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