エヌビディアの足元は業績好調だが、2028年1月期売上高の伸び鈍化の懸念、特注型AI半導体との価格競争の懸念などの懸念材料がある。株価のリバウンドがない場合はポジション縮小も検討すべきだろう。
毎週月曜日午後掲載
本レポートに掲載した銘柄: エヌビディア(NVDA、NASDAQ) 、 ブロードコム(AVGO、NASDAQ) 、 アドバンテスト(6857、東証プライム) 、 ディスコ(6146、東証プライム) 、 東京エレクトロン(8035、東証プライム) 、 レーザーテック(6920、東証プライム)
1.好業績にもかかわらずエヌビディアの株価が弱い。
今回は、好業績にもかかわらずエヌビディアの株価は何故上昇しないのかというテーマです。全くの私見ですが、理由を考えてみました。また、このテーマを通じて、GTC2026においてエヌビディアが発表した次世代機「Rubin」(2025年後半生産開始、2026年後半出荷開始予定)の概要とAI半導体の動向、「Rubin」と半導体製造装置の関係について見ていきたいと思います。
1)なぜ上がらない、エヌビディアの株価。
理由(1)今後の売上高の伸びに鈍化懸念がある。
エヌビディアは、2026年1月期3Q決算時には2025~2026年の「Blackwell」と「Rubin」の累計売上高を5,000億ドルとしました。これをGTC2026の基調講演とアナリスト向けQ&Aの中で、2025年~2027年は「Blackwell」と「Rubin」だけで1兆ドル以上になるとしました。
また会社側は、推論特化型の新型AI半導体「Groq3 LPU」を発表しました(後述)。単独あるいは「Vera Rubin」(「Rubin」に新型CPU「Vera」を組み合わせたもの)に組み込む形で販売します。販売価格は不明ですが、高額品になる模様です。
そこで、2025~2027年累計売上高(2026年1月期~2028年1月期で近似)を1兆ドルとした場合の2028年1月期増収率を試算します。2026年1月期売上高実績と楽天証券の2027年1月期予想売上高、米国の証券会社所属のアナリストによる2027年1月期予想売上高を1兆ドルから引くとエヌビディアの2028年1月期売上高予想が出ます。そこから2028年1月期の増収率を算出したものが表1です。これを見ると、楽天証券予想ではエヌビディアの1兆ドル予想が上振れない限り増収率が鈍化することになります。
また、現時点での米国の証券会社(外資系含む)の2027年1月期売上高予想の最高値は4,444億ドル、最低値は3,329億ドル、平均値は3,887億ドルですが、最低値と平均値では2028年1月期の増収率は鈍化します。最高値では2028年1月期は減収になるという結果になります。
次にエヌビディアの累計売上高予想が1兆3,000億ドルに上振れた時の2028年1月期増収率を試算します。これによると、楽天証券予想、米国の証券アナリスト予想の最低値と平均値では2028年1月期も好調な業績が予想されますが、最高値では増収率としては高いものの、伸び率は鈍化することになります。
要するに、会社側が提示した2025~2027年累計売上高1兆ドルという数字は、大きな上振れがなければ、業績鈍化リスクを表したものになっていると思われます。
表1 エヌビディアの2025~2027年累計売上高予想1兆ドルから試算した2027年1月期、2028年1月期増収率
表2 エヌビディアの2025~2027年累計売上高予想上振れケースから試算した2027年1月期、2028年1月期増収率
理由(2)AI半導体の世界では低コスト化が大きなテーマになっている。エヌビディア製AI半導体の性能は素晴らしいが、相変わらずカネがかかる話が多い。
これは先週の楽天証券投資WEEKLY(2026年3月16日付け「ディフェンシブ株としてのエンタテインメント3銘柄(ソニーグループ、ネットフリックス、スポティファイ・テクノロジーの安定成長を評価したい)」)で書いたことですが、今後AI半導体メーカー同士の競争が激しくなりそうです。エヌビディアに対して約半分の価格のブロードコムの特注型AI半導体がエヌビディアのシェアを侵食し始めています。2027年、2028年のAI半導体市場では、エヌビディアの伸びよりもブロードコムの伸びが大きくなる可能性があります。
▼過去のレポート
2026年3月16日: ディフェンシブ株としてのエンタテインメント3銘柄(ソニーグループ、ネットフリックス、スポティファイ・テクノロジーの安定成長を評価したい)
ところがブロードコムにも競争相手が現れています。ブロードコムの特注型AI半導体の最大口顧客はアルファベットと思われますが、スマートフォン向けチップセットの大手であるメディアテックがアルファベットの自社製AI半導体「TPU」の次世代版を開発している模様です(TPUの推論特化版)。ブロードコム製よりも価格が安くなる可能性があります。一部の報道によれば次世代TPUは2026年7-9月期に量産開始とのことですが、実際にメディアテックのTPU生産が実現すれば、これまでTPUの生産を独占してきたと思われるブロードコムにとっては、今後の業績と株価にとって打撃となる可能性があります。
アルファベットが特注型AI半導体の生産においてブロードコム製だけでなく、メディアテック製も採用した場合、ブロードコムの他の顧客(ブロードコムの顧客は、アルファベット、アンソロピック、メタ・プラットフォームズ、オープンAI、推定でバイトダンス、マイクロソフトの計6社)も追随する可能性があります。特注型AI半導体の新規参入はメディアテックだけでなく、マーベル・テクノロジーも行っています(マイクロソフト、アマゾン・ドット・コムが顧客と言われています)。
要するに生成AI向け設備投資の方向性が、これまでのようなAI半導体の性能向上だけでなく、AI半導体の価格引き下げと生成AI向け設備投資の合理化・効率化が柱の一つになってきた可能性があるのです。
エヌビディアは性能向上に注力するあまり、AI半導体の内部構造が複雑になっていると思われます。後述しますが、「Rubin」の上位機種「Vera Rubin」には「Groq3LPU」という推論特化型の新型AI半導体が装着される見込みです(単体での販売もある模様)。「Groq3LPU」の価格も高くなる見込みです。エヌビディアの売上総利益率はこれ以上の上昇が難しいところまで高い水準にありますが、価格競争に弱い体質になっている可能性があります。
グラフ1は調査会社によるAIサーバーのAI半導体別構成比の予想です。2026~2030年はAI用ASIC(特注型AI半導体)搭載AIサーバーの構成比が高くなる予想になっています。ここでAI用GPUはエヌビディア製、AMD製を指しますが、圧倒的にエヌビディア製です。今後のAIサーバー出荷台数成長率は年率30~40%になると予想されるため、AI用GPU搭載AIサーバーの出荷台数が減少することは考えにくいですが、AI用ASIC搭載AIサーバーのほうが成長率が高くなると思われます。
グラフ1 AIサーバー出荷台数におけるAI半導体別構成比
理由(3)2027年の生成AI向け設備投資に不安がある。設備投資ブームの最終局面で主力株が低株価収益率(PER)化する現象が起こる場合がある。それがエヌビディアでも起きているのではないか。
2026年3月2日付けの楽天証券投資WEEKLY「決算レポート:エヌビディア(業績好調だが、株価は下落。AI相場は転換点にあるのか)」で投資家(機関投資家)の多くが2027年の生成AI向け設備投資に懸念をもっていることを指摘しました。
▼過去のレポート
2026年3月2日: 決算レポート:エヌビディア(業績好調だが、株価は下落。AI相場は転換点にあるのか)
この懸念が実際に広く行き渡っているものであるなら、2027年以降の生成AI向け設備投資の鈍化を株式市場が織り込むことによって、足元の好業績にもかかわらず生成AI関連株の動きが鈍ることになり、低PER化し割安状態が続く可能性があります。これは設備投資関連株、例えば機械株が業績のピークが見え始めたときに起こる現象です。この現象がエヌビディアでも起きている可能性があります。
表3 米国大手ITの設備投資額(暦年)
理由(4)株式の需給関係と株主還元の問題。世界中の機関投資家が大抵持っている銘柄がエヌビディア。新規の買い付けよりも買い増し需要に頼るしかない。時価総額も巨大。今の株式市場で誰が上値を買ってくれるのか?
この問題は、実は株式投資の本質です。皆が持っている銘柄は、上値を買う投資家が少なくなり、上がりにくくなるものなのです。
また、株式市場が期待している1,000億ドル規模の自社株買いがまだないことも、株価の勢いがない一因と思われます。
理由(5)世界のマネーの流れに変調が起こるかもしれない。あるいは、すでに起きているのかもしれない。イラン戦争と中東マネー、AIとSaaS、プライベート・クレジットの問題など。生成AIの開発、運用には巨額の資金が必要だが、資金調達に問題がおきないか。
この資金の流れの問題は、まだよくわかりません。わからないから問題であるとも言えます。例えば、中東マネーは米国の上場企業、未上場企業への投資を継続してきました。
原油高によって米国の金利が高止まりすると、戦争やインフレに対する不確実性もあるため、株価に対する見方が厳しくなる場合があると思われます。例えば、赤字が続いているオープンAIが上場するときの株価がどうなるのかです。
2)そうは言ってもエヌビディア株の割安感は強い。リバウンド期待。
今回は、エヌビディア、ブロードコムの業績予想と、今後6~12カ月間の目標株価、エヌビディア210ドル、ブロードコム420ドルは変更しません。
エヌビディアの2027年1月期、2028年1月期の楽天証券業績予想と今の株価を見比べると、割安感が強いものがあります。株価のリバウンド期待を持ってもよいのではないかと思われます。
ただし、リバウンドも大してないとなれば、業界動向、ファンダメンタルズ、株式需給のいずれか、あるいは全てに問題が生じている可能性があります。その場合は、エヌビディア株、あるいはエヌビディア、ブロードコムを含む生成AI関連株のポジション縮小や銘柄によっては手仕舞いを検討しても良いのではないかというのが私の考えです。
グラフ2 エヌビディアのチャート
グラフ3 ブロードコムのチャート
表4 エヌビディアの業績
表5 ブロードコムの業績
2.「Rubin」は半導体製造装置需要にとってプラス要因となろう。
エヌビディアの株価には様々な問題があると思われますが、エヌビディアを取り巻く環境は半導体製造装置にとってプラス要因になると思われます。
1)AI半導体の総個数は増加すると思われる。
まず、特注型AI半導体が増えること、ブロードコムだけでなく、メディアテックが大きな存在になる可能性があることを考えると、今後1~2年はAI半導体の数量が増加すると予想されます。
また、アップルがTPUのユーザーであることは重要です。特注型AI半導体のユーザーはいわゆるハイパースケーラー(大規模データセンター運営事業者)であり、ブロードコムの顧客は公表ベースでアルファベット、アンソロピック、メタ・プラットフォームズ、オープンAIの4社と、未公表の2社(楽天証券の推定ではバイトダンス、マイクロソフト)の計6社です。アマゾンは半導体設計子会社で自前の特注型AI半導体を設計し導入していると思われますが、アマゾンも数多くの大規模データセンターを運用しています。
ところが、アップルの設備投資は、大手クラウドサービス3社、アマゾン、マイクロソフト、アルファベットの10分の1以下ですが、この規模のデータセンター運営業者でもTPUを導入できるのであれば、特注型AI半導体のユーザーが準大手、中堅クラスのクラウドサービス会社などに拡大する可能性があります。これもAI半導体の個数が増える要因になります。
AI半導体の個数増加は半導体製造装置にとってプラス要因です。
2)次世代機「Rubin」も製造装置需要にプラスとなろう。
「Rubin」は内部構造が一段と複雑になっていると思われるため、半導体製造装置にはプラスになると思われます。
また、上位機種の「Vera Rubin」は、GPU「Rubin」、CPU「Vera」、「NVLink6」スイッチ、SuperNIC「ConnectX-9」(NIC(ネットワークインターフェースコントローラー)は、コンピューターをコンピューターネットワークに接続するネットワークアダプター)、DPU「BlueField-4」(DPU(データ・プロセッシング・ユニット)は、ネットワーク、ストレージ、セキュリティ処理を専用の回路で行い、CPUの負荷を軽減する)、Ethernetスイッチ「Spectrum-6」に、今回新たに統合されたLPU(Language Processing Unit、言語処理ユニット)「Groq 3 LPU」を加えた7チップで構成されます。「Groq3LPU」は提携したGroqから導入した技術を使ったAI推論に特化したAI半導体です。Groqチップが全てのRubinに搭載されるのか、上位機種だけなのかは不明ですが、新しいAI半導体がエヌビディアの製品群に加わりました。
これも半導体製造装置にはプラス材料です。
3)特注型AI半導体の増加と「Rubin」は、テスタへのプラス影響が大きいと思われる。
AI半導体の生産出荷個数増加は、まず、テスタ需要の増加に結びつきます。後工程のダイシング(回路を描画したウェハを四角いチップに切り出す工程)も対しても増加要因になると思われます。チップの数が多くなるため、前工程のウェハ処理工程の製造装置にもプラス要因になります。
「Rubin」の内部構造は「Blackwell」よりもさらに複雑になっていると思われます。また、「Groq」という新しいAI半導体を搭載していることを合わせて考えると、これもテスタに恩恵があると思われます。次にダイシング工程、前工程にもプラス影響があると思われます。
エヌビディアがCPUに注力していること、パソコン、スマートフォン等の端末側でAIを処理するエッジコンピューティングのニーズも大きくなっていることを考えると、CPUにも今後大きな需要があると思われます。AI半導体、CPUの需要が大きくなれば、DRAM、HBM、NANDの需要も増加しますので、これは前工程と各種の検査装置にもプラスの影響があると思われます。
そのため、アドバンテスト、ディスコ、東京エレクトロン、レーザーテックの各社にとって、「Rubin」はプラスの影響力があるAI半導体であると言えます。
ただし、今後生成AI向け設備投資の伸びが鈍化した場合は、後工程も前工程のマイナスの影響は受けると思われます。
表6 アドバンテストの業績
表7 ディスコの業績
表8 東京エレクトロンの業績
表9 レーザーテックの業績
3.アドバンテスト、ディスコ、東京エレクトロン、レーザーテックの目標株価を維持する。
今回は、アドバンテスト、ディスコ、東京エレクトロン、レーザーテックの業績予想と、今後6~12カ月間の目標株価、アドバンテスト3万円、ディスコ8万5,000円、東京エレクトロン5万1,000円、レーザーテック4万円は変更しません。
ただし、株価が戻らない場合、2026年1-3月期決算を確認してからでもよいと思われますが、ポジションの縮小を検討してもよいと思われます。
また、半導体製造装置株については、2027年以降の生成AI向け設備投資に不透明感があること、PERが高いこと(会社によって程度は様々ですが)も注意すべき点と思われます。
本レポートに掲載した銘柄: エヌビディア(NVDA、NASDAQ) 、 ブロードコム(AVGO、NASDAQ) 、 アドバンテスト(6857、東証プライム) 、 ディスコ(6146、東証プライム) 、 東京エレクトロン(8035、東証プライム) 、 レーザーテック(6920、東証プライム)
(今中 能夫)

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