全人代が閉幕し、中国にとっての2026年度が本格的にスタートしました。1~2月の中国経済は、好調の様相を見せているようですが、実際はどうなのでしょうか。
内外の情勢が混乱しているからこそ重要なのは経済
中国では1年に1度の政治イベント全国人民代表大会(全人代)が3月5~12日に開催され、李強(リー・チャン)首相による「政府活動報告」で経済を中心に各種政策の方向性が示されました。
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これを受けて、中国政治は本格的に2026年度に突入したと言えます。
昨今の中国を取り巻く状況を見ていると、軍内粛清、米中攻防、台湾有事、イランやベネズエラといった地政学情勢など、一つかじ取りを間違えれば致命的な政策リスクにつながり得る火種が山積しているように見受けられます。
私が20年以上曲がりなりにも中国と付き合ってきた経験と感覚からすれば、中国共産党指導部は、内政・外交を含め、情勢が不安定でリスクが不透明に山積している状況下では、まずは情勢を静観し、見極め、慎重に慎重を重ねた上で、動くときには満を持して一気に、大胆に動くという傾向があると思っています。
現時点で俯瞰(ふかん)する限り、2026年も中国のそうした一面が可視化されるかもしれません。
そして、内外が混乱しているときだからこそ、「政治の安定」という観点が重要になるのが経済だと思います。中国と聞くと、しばしば想起されるのが「社会主義」「共産主義」「マルクス主義」「毛沢東思想」など、政治、イデオロギーにまつわるものが少なくありません。
一方で、西側諸国や日本で実践されている民主主義に基づいた選挙によって為政者の立場にいるわけではない中国共産党は、「結果」を出すことによってしか、人民の信頼と委任を勝ち取ることはできません。
日本であれば、政権が経済政策や外交政策で失策を犯し、国益を損じた場合でも、首相が辞任したり、衆議院を解散したりすることで、責任を取る、責任の所在を明らかにする、その上で、状況改善のために再スタートするというプロセスを踏むことが制度的に可能になっています。
ただ、中国はそうはいきません。
為政者が致命的なミスを犯した場合(例:経済状況が極端に悪化し、ハイパーインフレが起こり、失業者が続出:米国との関係が極端に悪化し、断交も辞さない苦境に陥る:「台湾統一」を試みて失敗する、など)、政権が交代するのではなく、政権の転覆などにより国全体がひっくり返ってしまい、統治機構そのものが瓦解(がかい)の危機に陥ってしまう可能性すらあります。
政権としてではなく、国家として再スタートを切らなければならなくなる可能性があるのは、激動の中国史が証明しているとおりです。
そして、結果として最も重要なのは、共産主義やマルクス主義の宣伝、すなわちプロパガンダ工作を通じて14億の人民を「洗脳」することではありません。
経済の成長を促し、国民の生活を物質的に守っていくことを通じて、物価や雇用の安定の確実な実現を通じて、人々に日々豊かになっている、安心して暮らせていると実感してもらうことです。そうすることでしか、中国共産党は為政者としての立場を死守できないという非常に厳しい実情が横たわっているのです。
私自身、中国ほど「唯物史観」に基づいて為政者と被治者の関係性が構築されている国はないと思っています。
2026年1~2月の主要統計発表。上々の滑り出し?実際のところは?
中国国家統計局が、全人代閉幕後の3月16日、1~2月の主要統計結果を発表しました。直近の昨年12月、昨年1~12月と比較しつつ整理してみます。
2026年1~2月 2025年12月 2025年1~12月 工業生産 6.3% 5.2% 5.9% 小売売上 2.8% 0.9% 3.7% 固定資産投資 1.8% ▲3.8% 不動産開発投資 ▲11.1% ▲17.2% 不動産を除く固定資産投資 5.2% ▲0.5% 貿易(輸出/輸入) 18.3%(19.2%/17.1%) 4.9%(5.2%/4.4%) 3.8%(6.1%/0.5%) 失業率(農村部除く) 5.3% 5.1% 5.2% 消費者物価指数(CPI) 0.8% 0.8% 横ばい 生産者物価指数(PPI) ▲1.2% ▲1.9% ▲3.0% 出所:中国国家統計局の発表を基に筆者作成。数字は前年同期(月)比
工業生産、固定資産投資、貿易は、直近の12月、および昨年通年の数値と比べて改善しているのが見て取れます。個人消費動向につながる小売売上は、12月に比べればマシになっていますが、依然として低迷から抜け出せていないように見受けられます。
違和感を覚えるほどに伸びている輸出入とは対照的であり、中国政府が掲げる「需要不足の脱却」「内需に立脚した経済成長」と逆の方向に進んでいるのは不安要素と言えるでしょう。
不動産開発投資は昨年通年と比べると若干下げ幅が改善されています。
失業率は統計から見る限り上昇傾向にあるようです。ちなみに、現時点で発表されている若年層(学生を除く16歳から24歳)の失業率を見ると、2025年12月は16.5%、1月は16.3%、2月は16.1%と改善傾向が続いています。
学生を統計から除いた2023年12月以降で最も悪い水準だった昨年8月の18.9%からは2.6ポイント改善していますが、依然として高止まりは続いています。「高止まりする若年層の失業率」問題は今後とも、中国経済(もっと言えばその先にある政治を含め)にとっての不安要素であり続けるでしょう。
この発表を受けて、国家統計局の報道官は、次のようにコメントしています。
「1~2月、主要経済指標は明らかに回復しており、今年、国民経済は良好なスタートを切ったと言える。一方、外部環境の変化がもたらす影響は深く、地政学的リスクも持続的に上昇している。国内経済の成長と転換における古い問題、新たな課題は依然として少なくない。一部企業の経営も困難に陥っている」
景気回復に向けた兆候は見えつつあるけれども、まだまだ油断できず、予断を許さない状況が続くという警戒心と危機感を当局としても抱いていると見るべきです。
2026年中国経済五つの注目ポイント
ここからは、現時点で2026年の中国経済を占う上で、私が注目しているポイントを五つ書き留めておきたいと思います。中国経済、およびマーケットへの影響を見ていく際の参考にしていただければ幸いです。
(1)デフレスパイラルと不動産不況
近年、中国経済の成長と運営にとっての足かせ、および不確実性になっているのがデフレスパイラルと不動産不況です。これら二つの「問題児」が、2026年を通じてどう推移していくか、らせん的に悪化していくのか、それとも復調の兆しを見せるのかが、バロメーターになると思っています。
(2)マクロコントロール
リーマンショック後に見舞われた「4兆元のわな」の教訓もあり、中国政府は経済が低迷していても、大胆な景気刺激策を打ち出すことには依然慎重姿勢を崩していません。一方、「積極的な財政政策」×「緩和的な金融政策」という姿勢、および方向性は打ち出しており、これらのマクロコントロールが経済成長にどうつながっていくのか(その逆もまたしかり)に要注目です。
(3)消費と投資
表にも反映されているように、昨年、消費と投資が落ち込みました。いま中国経済は需要不足×過剰供給という構造的問題に見舞われていますが、生産ラインだけが突っ走り、輸出主導で成長率を追い求めるのはもはや過去の遺物であり、中国政府が掲げる成長モデルとも合致しません。
その意味で、政府だけでなく民間による投資がどの分野に、どれだけ効率的に実施されるか、そして何より、国民による消費活動がどこまで経済成長に寄与するかは極めて重要です。個人的には、「カネの使い方」に関しては非常に強かな中国人民が、「どこにお金を投じるのか?」に注目しています。中国における資産運用の環境も質的に変化してきていると感じています。
(4)地政学的リスク
依然緊迫しているイラン情勢を中心に、地政学的リスクの顕在化が、原油高などを含め、中国経済にどう跳ね返ってくるかも重要な要素でしょう。
中国はエネルギー構成の約60%を石炭が占めており、ホルムズ海峡経由の輸入はエネルギー総消費の約5%にとどまりますから、日本などと比べても、経済活動、国民生活という観点では、ホルムズ海峡封鎖といった事象の影響は限定的かもしれません。
中国は近年、食料やエネルギーを含め、自給自足、自力再生といった観点から備蓄を重視していますが、地政学情勢が混乱する中、経済成長をどう担保していくのかに注目したいと思います。
(5)トランプファクター
最後に、やはりこの男、トランプ大統領です。第2次トランプ政権の発足をきっかけに始まったトランプ関税、および貿易戦争再燃のリスク。米中は6回にわたってハイレベル協議を続けてきました。イラン情勢が原因で今月末に予定されていたトランプ氏の訪中は少なくとも想定通りには進まないでしょう。
中国にとっては米国との関係が、習近平国家主席にとってはトランプ大統領との関係が最もクリティカルであり、中国経済の持続的成長と安定的管理を占う上でも最大要因になり得ると言えます。2026年を通じて、トランプファクターと中国経済の相関性をモニタリングしていきたいと思います。
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(加藤 嘉一)

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