有事のドル買いと原油急騰、それに伴う金利上昇でドル円は2024年ぶりに160円台の円安へ、しかし、政府・日銀の介入警戒と日銀の利上げ期待ですぐに円高に反転。4月相場となる今週、紛争終結を示唆するトランプ大統領の演説や集中する雇用統計発表も重なり、イラン攻撃前の水準で156円台前半に戻れるかに注目です。


イラン紛争終結期待と介入警戒で円高に!ドル円は156円台前半...の画像はこちら >>

ドル円160円超えの円安もつかの間、介入警戒と利上げ期待で円高反転に

 3月27日(金)、ドル円は1年8カ月ぶりに160円台の円安に行きました。160円台は政府が介入を行った2024年7月11日以来です。今回の160円台乗せは、中東情勢緊迫化による有事のドル高と原油価格の上昇とそれに伴う金利上昇が背景でした。


 しかし、160円超の滞空時間は短く、翌週30日(月)に付けた2日間だけでした。介入警戒と日本銀行の利上げ期待によって、その日のうちにドル円は159円台の円高に行きました。 


 30日の円安けん制発言は一歩踏み込んだ発言でした。三村淳財務官は「そろそろ断固たる措置も必要」との強いトーンで円安をけん制しました。160円を超えたため、「そろそろ」という介入のタイミングを示唆するような発言をしたことによって市場の警戒心は高まり、円高要因となりました。


 さらに、公表された日銀3月会合分の「主な意見」では、タカ派的な内容が目立ったことも円高要因となりました。


「主な意見」では、中東情勢緊迫化による原油高が景気の下押し要因となる可能性はあるものの「物価上昇上振れを重視した対応が必要だ」との指摘が出ていたり、政策委員からは今後も物価高が続く中、「経済環境や中小企業の賃上げスタンスが大きく崩れる兆しがなければ、ちゅうちょなく利上げに進む必要がある」といった意見が出ていました。


 31日には、WTI原油価格が100ドルを突破したことから再び160円手前まで円安に行きましたが、米・イラン紛争終結期待が高まり、原油急落とともに円高となりました。トランプ大統領がホルムズ海峡封鎖解除なしでも軍事作戦終了に前向きな姿勢を示したことから、原油が急落し159円台半ばの円高に行きました。


 そして米2月JOLTS求人件数(688.2万件)が予想を下回ったこともあり、4月1日には158円台半ばまで円高が一段と進みました。


 3月を振り返りますと、2月28日、米国とイスラエルがイランを攻撃し、リスク回避の円買いが強まるよりも有事のドル買いの方が強まり、ドル円は156円台から157円後半の円安に進む動きとなりました。その後も攻撃激化やホルムズ海峡の事実上の封鎖によって原油価格の上昇とともに、金利高・ドル高となり、3月27日に160円半ばまで円安が進みました。


 しかし、政府・日銀の円安けん制発言のトーンが一段と強まったことや、原油高の中でも日銀の利上げ期待が高まったことから、円安は160円台で反転し、加えて攻撃強化と停戦協議の間を二転三転するトランプ大統領の発言が、31日には終結に前向きな姿勢に転じたことから、原油安、金利低下、株高、ドル安に相場も転じました。


紛争終結に向けてどう動くのか。雇用統計と2日のトランプ大統領の演説に注目

 31日、トランプ大統領は合意なくても作戦を終了させる可能性を示唆しました。一方、イラン大統領は欧州連合(EU)大統領との電話会談で、侵略を再発させない保証を前提に戦争を終わらせるために必要な意志を持っていると述べています。


 両国からの発言によって市場にはイラン紛争終結の楽観ムードが広がっていますが、原油は下がったとはいえ、金利低下やドル安に比べると高止まりしています。ホルムズ海峡が完全解除になっていない状況や、トランプ大統領が他国に対して、「自分でホルムズ海峡に行って取って来い。米国はもう助けない」と突き放した言い方をしていることが影響しているようです。 


 トランプ大統領は、日本時間の4月2日午前10時から国民向けに演説をする予定のようです。紛争終結に向けてどのような演説になるのか注目です。実際に紛争終結に向けた動きになると、相場の材料は日米金融政策に焦点が移りそうです。

その場合、原油価格の高止まりに対してどのような見方や判断をするのかに注目です。


 原油は紛争終結となると、少しは価格が下がるでしょうが、ホルムズ海峡が完全に自由航行にならない限り、上昇は止まっても、高止まりする可能性があります。さらに、ホルムズ海峡が自由航行になっても、攻撃で受けた石油施設の被害が回復するまでには時間がかかるため、原油高止まりが続くことが予想されます。


 4月27~28日の日銀金融政策決定会合では、4月利上げが織り込まれつつあります。前述した3月会合分の「主な意見」で見られたように、原油価格が高止まりしていても一段の上昇がなければ、紛争終結に向けた動きによって日銀の利上げ期待が一段と高まることが予想されます。織り込まれているとはいえ、実際に利上げをすれば円高要因になりそうです。


 4月28~29日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、紛争終結に向けた動きになれば、3月のFOMC後にみられた利上げ観測は後退することが予想され、3月FOMCのように様子見姿勢が続くことが予想されます。パウエル議長は3月30日の米ハーバード大で行われたイベントにて、予想されていた程タカ派姿勢は示しませんでした。


 パウエル議長は原油高について、「エネルギー危機は比較的短期で収束する傾向がある。反応しないのが一般的な対応だ」との見方を示し、その上で現行の金融政策は「適切な位置にある」と述べ、当面は政策金利を据え置く考えを示唆しました。ただ、パウエル議長は足元の経済情勢については、物価上昇への懸念と雇用の下振れリスクが併存しているとの認識を示しています。


 今週は雇用指標発表が集中しています。

4月1日の米3月ADP雇用統計は前月の6.3万人から4万人の予想となっています。3日の米3月雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月のマイナス9.2万人から6万人の増加予想となっています。


 失業率は前月と同じ4.4%の予想となっています。31日の米2月JOLTS求人件数(688.2万件)は予想を下回りました。これら二つの雇用指標が予想を下回った場合には、紛争終結に向けた進展速度によっては利下げ期待が浮上してくるシナリオにも留意する必要がありそうです。


 日銀の利上げ期待、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ観測浮上によって、原油が高止まりしていても、米・イスラエルのイラン攻撃前の水準である156円台前半に戻るかどうか注目です。


(ハッサク)

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