「外車といえば左ハンドル」というイメージは過去のものになりつつあります。右ハンドル仕様の輸入車が増えているためですが、そうしたなか、あえて左ハンドルにする人も。

左側通行の日本において、何がそうさせるのでしょうか。

いまや輸入車も多くが右ハンドル車

 2021年現在、日本では左ハンドルのクルマが激減しています。いまや輸入新車で左ハンドル車の割合は5%ほど。輸入車メーカー各社は、日本向け右ハンドル車のラインアップを増やしてきました。

 以前は「外車といえば左ハンドルで特別なもの」というイメージがあったかもしれません。たとえばメルセデス・ベンツは、この30年で日本における年間の販売台数を2倍以上に増やしましたが、ラインアップの拡充とともに、右ハンドル車の設定を充実させてきたことも、ユーザーの輸入車に対するハードルを下げ、台数の増加につなげたといえるでしょう。

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左ハンドル車のイメージ(画像:nejron/123RF)。

 本来、左ハンドルのドイツ車などで右ハンドル車が増えてきた背景には、技術的な進歩が関係しています。運転制御システムが機械式だったころは、内部のケーブルを湾曲させたり、ペダルの位置をずらしたりして、いうなれば“強引に”右ハンドル化していたため、どうしても操作感に影響を与えることがあったものの、ケーブルを介さない電子制御になったことで、そのギャップが縮まっていったとメルセデス・ベンツ日本は振り返ります。

 ただ、そうしたなかでもあえて左ハンドル車を選ぶ人も一定数いることから、メルセデス・ベンツやBMWでは、日本向けの一部モデルに左ハンドル車を残している状況です。それは、昔から左ハンドル車に乗っていて慣れているから、という人だけでなく、「左ハンドルこそ本来の設計思想だから」といった理由で選ぶ人もいるのだとか。

 また、東京都世田谷区の自動車教習所、フジドライビングスクールの田中さんによると、昨今は左ハンドルかつMT仕様の旧車に乗るために、講習を受けに来る人も増えているといいます。

人とは違う けど苦労も多い左ハンドル

 一方、世界を見回してみると、自国の交通法規に適さない「逆ハンドル車」に厳しい国もあります。たとえばオーストラリアは日本と同じ左側通行・右ハンドルですが、日本と異なり左ハンドル車の運転が禁止されています。

 そのような国がある一方、日本では慣れた人が敢えて選ぶケースもあるという左ハンドル車に、運転するうえでのメリットはあるのでしょうか。

「車体の左側の感覚は掴みやすいですから、狭い道でのすれ違いの際、自分は左いっぱいに寄せて、あとは相手に任せるというケースがよく見られますね」。フジドライビングスクールの田中さんはこのように話します。ただ全体的には、右ハンドル車とは勝手が大きく異なるそうです。

「対向車が見えづらくなりますから、右折は危ないです。左折の巻き込みなども、特に確認しやすいというわけではありません。一時停止の際の確認作業も右ハンドル車とは変わってきますから、慎重さが求められます」(フジドライビングスクール 田中さん)

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右ハンドル仕様のメルセデス・ベンツBクラス(画像:メルセデス・ベンツ日本)。

 また、前述した右ハンドル輸入車特有の操作上の違和感も、いまやほぼ解消されているといいます。そうしたなかで左ハンドル車をあえて選ぶのは、旧車に乗ることも含め、やはり他の人とは違うという特別感からではないかということです。

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