長い距離を走るバス路線のなかには、本数が極端に少ないものが全国的に存在します。東京やその近郊でも同様で、だんだんと本数が減り、いまや1日1往復、なかには「週イチ」という路線もあります。

乗るのが難しい…名物の長距離路線たち

 バス路線のなかには、本数が極端に少ないものも存在しますが、とりわけ運行コストのかかる長距離路線は近年、東京近郊でも減便の動きがあります。今回は東京近郊で、そのような「乗るのがやや難しい」長距離路線を5つ紹介します。

環七の「右上」走破 しかし本数僅少:東武バスセントラル「王30」

・区間:亀有駅北口~王子駅
・所要時間:45分

東京圏「本数僅少の長大路線バス」5選 1日2往復、1往復…激...の画像はこちら >>

王子の街を走る東武バスセントラルの車両。「王30」は東武バスで北区に乗り入れる唯一の系統(中島洋平撮影)。

 東京都内では葛飾区や足立区を営業エリアとする東武バスセントラルの一般路線で唯一、北区の王子駅まで乗り入れる系統です。亀有駅から環七通りを一路西へ、足立区内の環七を端から端まで走破する路線バスとしても唯一の存在。仮に環七を路線バスで走破する場合、この系統に乗れるかが、成功のカギを握るといえます。

 かつては都営バスとの共同運行でしたが、東武バス単独となったのちに減便され、現在は日中に2往復のみです。ちなみに、割増運賃の深夜バスとして王子駅から西新井駅西口行きも1本設定されていますが、2021年2月現在、緊急事態宣言の発出にともない運休しています。

日本一のターミナル駅にもレア路線

 巨大ターミナル駅に発着する路線のなかにも、本数がかなり少ないものがあります。

小田急なのにレアな「新宿発」:小田急バス「宿44」

・区間:新宿駅西口~武蔵境駅南口
・所要時間:1時間15分

 新宿駅西口から吉祥寺駅を経て、武蔵境駅南口までを結ぶ「宿44」系統。新宿にターミナルを構える小田急ですが、毎日運行される一般路線バスとして小田急バスが新宿駅に乗り入れるのは、この系統が唯一です。

運行距離は18kmを超え、都内でもトップクラスの長大路線といえます。

 かつては京王、小田急、東京都交通局(都営バス)の3者が共同運行していましたが、京王と都営が撤退し小田急の単独運行に。その名残か、一部の停留所は京王のバス停を共用しています。2014(平成26)年に8往復から2往復まで減便され現在に至ります。

東京圏「本数僅少の長大路線バス」5選 1日2往復、1往復…激レア「週1」も

新宿駅西口に停まる小田急バス「宿44」系統(中島洋平撮影)。

横浜駅にもレア路線:神奈中バス「横04」

・区間:鶴間駅東口~横浜駅西口
・所要時間:1時間7分

 神奈川県の広い範囲を営業エリアとする「神奈中バス」(神奈川中央交通)には、極端に運行本数の少ない「免許維持路線」と呼ばれるものが少なくありません。その中で長大なもののひとつに、小田急線の鶴間駅(神奈川県大和市)東口から、相鉄線の鶴ヶ峰駅、西谷駅前を経て横浜駅西口まで20km弱を結ぶ「横04」が挙げられます。

 運行は平日早朝の1往復のみ。2019年まで毎時1本ずつ運行されていたものの、鶴間駅東口~鶴ヶ峰駅間の区間便に振り替える形で、横浜駅西口発着は大幅減便となりました。

20km超え激レア路線も

 さらにロングランかつレアな路線が存在します。

2020年10月 さらに減便の最長路線:西武バス「大34」

・区間:所沢駅東口~大宮駅西口
・所要時間:1時間18分

 埼玉県の所沢駅東口から、東武東上線の上福岡駅入口を経て、大宮駅西口まで24km近い距離を走る西武バスの最長路線です。2010(平成22)年の時点では往復合わせて15本ありましたが、2021年現在は1往復、すなわち上下1本ずつしか走りません。

2020年10月にはさらに、土休日の運行便が所沢駅東口~上福岡駅西口間に短縮され、平日のみの運行になりました。

 所沢駅東口を12時ちょうどに発車し、大宮駅西口で折り返し、所沢駅東口へ14時50分に戻ってくるダイヤになっています。所沢や上福岡、大宮の周辺は都市化されていますが、それらの境界付近にあたる地域は、のどかな風景が広がっています。

東京圏「本数僅少の長大路線バス」5選 1日2往復、1往復…激レア「週1」も

さいたま市と富士見市の境、釣りスポットとしても名のあるびん沼川を渡る西武バスの車両。「大34」系統も経由する(中島洋平撮影)。

運行は週イチ!?:神奈中バス「平44」「平45」

・区間:平塚駅北口~小田原駅(平44が小田原行き、平45が平塚行き)
・所要時間:1時間9分(平44)、1時間11分(平45)

 神奈川中央交通西が運行する、神奈中バスの路線で最長クラス、かつ本数も僅少の路線で、平塚駅北口から小田原駅を結ぶのが「平44」、その復路となるのが「平45」系統です。路線距離はいずれも約22kmで、ルートが微妙に異なるため別系統として扱われていますが、運行はいずれも日曜・休日の早朝1本のみ。つまり祝日や振替休日がなければ週に1往復しか走りません。

 おもに国道1号を経由し、平塚駅北口から二宮駅南口までは複数の系統が同ルートを走っていますが、小田原駅まで乗り入れる神奈中バスは、この2系統が唯一です。

 なお、神奈中バスでは登戸と淵野辺駅北口のあいだ約19kmを結ぶ神奈川中央交通東の「淵24」系統も、「週1往復」の長大路線として挙げられます。

※ ※ ※

 今回は年間を通じて運行される路線を紹介しましたが、不定期路線も含めると、たとえば小田急バスでは6月の日曜・休日に1往復のみが走る新宿~よみうりランド系統なども長大路線に挙げられます。この系統は「宿44」と一部同ルートを経由し、約21.4kmを走破する小田急バスの最長路線です。

 また全国には、「年1回」運行する路線なども存在します。

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