駐車場に停める際、ドアミラーをたたむのはマナーだという風潮も一部で見られます。確かに電動格納機能があれば手間もなく、クルマとクルマのあいだも通りやすくなりますが、そもそも電動格納ドアミラーは何のためにできたのでしょうか。
商業施設の駐車場などに停める際、隣のクルマのドアミラーがたたまれていないと、自車とのあいだを通るときなどは確かに邪魔に感じることはあるでしょう。運転席のスイッチひとつでドアミラーをたためるような電動格納機能を備えたクルマも多いためか、「たたむのがマナー」と思う人もいるようです。
しかし、手動でしかドアミラーをたためないクルマもありますし、そもそも、ボンネットに固定されたフェンダーミラーではないドアミラーが「解禁」されたのは1980年代のこと。つまり、駐車場でドアミラーをたたむことは、比較的新しい慣習と考えられます。
ドアミラーをたたんで停めているクルマ(画像:Sakarin Sawasdinaka/123RF)。
フェンダーミラーよりも外側に飛び出す幅が大きいドアミラーは、事故時に歩行者への衝撃を緩和する観点からも、たためる機構であることが保安基準で義務付けられています。ただ、駐車時にドアミラーをこまめにたたむ慣習ができたのは、やはり電動格納機能の普及が大きいでしょう。いまやドアロックやエンジンスイッチと連動し、ドアミラーを自動でたたんでくれる機能を備えたクルマも少なくありません。
では、そもそもこの機能は何のために開発されたのでしょうか。
日本から世界へ広まった電動格納式ドアミラー実は、電動格納式ドアミラーは日本発の技術です。自動車用品メーカーの市光工業(神奈川県伊勢原市)と日産が共同開発し、1984(昭和59)年、「ローレル」C32型に採用されたのが世界初の事例。同社によると、日本車での採用を受け、メルセデス・ベンツやBMWなどがまず日本向け仕様車に装備したことをきっかけに、欧州の高級車を中心として世界へ広まっていったといいます。
開発の目的は、駐車場で人がミラーに当たってしまうことや、狭い道路での行き違いなどを想定し、いちいちクルマを降りて手でたたむ手間をなくすためだったそう。日本固有の道路事情や環境が背景あるといいます。一方で、日本ほど駐車場が狭くない海外では、駐車時にミラーをたたんでいるクルマも日本ほどは多くない印象だそうです。

電子アウターミラーを採用したホンダe。カメラ部のボディからの露出量はドアミラーと比べると極めて小さい(画像:ホンダ)。
そして2021年現在は、ドアミラーの代わりに電子ミラーを装備することも認められ、レクサスESやホンダeなど、いわゆる「ミラーレス」のクルマも徐々に増えています。大きなミラーを駐車場でたたむ慣習も、いずれは過去のものになっていくかもしれません。