アメリカ、ニューヨークの巨大空港、ジョン・F・ケネディ空港。ANAのパイロットによると、ここでは着陸進入時にプロの高い技術を必要とする場面があるといいます。
映画『ターミナル』の舞台でも知られるアメリカ東海岸ニューヨークにあるJFK(ジョン・F・ケネディ)空港。8つの空港ターミナルをもち(稼動中のものは6つ)、2018年には約80社が乗り入れています。同年の年間発着回数は約45万5000回で、単純計算で1日に1200回以上飛行機が発着する世界有数のメガ空港です。
着陸進入するANAの国際線主力機のひとつ、ボーイング777-300ER型機。ANAは、JFK空港では「第7ターミナル」に発着する(2020年、乗りものニュース編集部撮影)。
このJFK空港、実はANA(全日空)のパイロットによると、着陸進入時に高い技術を必要とする場合があるそうです。滑走路はかんたんにいうと、東西方向に2本、南北方向に2本の計4本という配置ですが、“プロのワザ”が発揮されるのは、東西にならんだ2本のうち北側にある滑走路の西側、滑走路番号でいうと「13L」へ進入するときに発生します。
ANAのパイロットによると、JFK空港の13L滑走路への着陸では、縦、横方向の電波をガイドに進入する「ILS」、横方向のみの電波のガイドのもと進入する「VOR」、GPSの電波を用いた位置情報をガイドに進入する「RNAV」、3種類のアシストを用いた着陸進入方法が設定されているとのこと。
このうち、後者ふたつのVORとRNAVでの着陸進入が、とくに高いテクニックが求められるケースにあたるといいます。ふたつの航法援助装置の飛行コースは「ほぼ同じ」で、「東~南寄りの風で、ある程度天気のいいとき」に発生しやすいものだそうです。
なお、もっとも精度や信頼性の高いことで知られるILSでの着陸進入は、「これを使わなければ、着陸できないような悪天の場合」といったケースに限られるそう。
プロの高い技術が発揮されるJFK空港の13L滑走路へ、VORやRNAVを用いての着陸進入。そのルートについてANAのパイロットは、「最終進入コースは、空港南側から滑走路に対してほぼ直角に入っていきます。空港の手前まで来て滑走路などが見えたのち、右に90度旋回をして滑走路に正対して着陸します」と解説します。また、滑走路の正面を向くときの高さは、地上からおよそ300フィート(約90m)の高さなのだそう。
ただ、この着陸進入のポイントは、なにも低空で旋回する、というだけではないようです。
「直角に近い角度で旋回し、滑走路に向かっていくとき、実は空港は見えても13L滑走路はなかなかハッキリと見えません。周囲が街で建物が多いような状況で、自機の高度が低いと、滑走路が周囲の景色に埋もれることがあり、想像よりも見えにくいことがあるからです。したがって、パイロット用の空港チャート(航空図)を見て、滑走路の位置関係がどうなっているのか、どのような見え方になるのかを事前にイメージしておく必要があります」

ジョン・F・ケネディ空港の空港地図。13Lは2018年、降下角を示す装置「PAPI」が設置され、パイロットへのアシスト能力が向上した(画像:FAA)。
また、13L滑走路へVOR、RNAVで着陸進入するときのポイントは横方向だけではなく、高さのコントロールにもあるともいいます。
「この着陸進入で適切な降下角を保っているかどうかは、進入方式上、パイロットが滑走路の見た目や地上物標で判断することになります。
また、世界屈指の大空港であるJFK空港では、その運航本数の多さから、ときには離着陸機同士の間隔を適切に保つため、滑走路の手前5マイル(約9.3km)まで180kt(約333km/h)という比較的速い速度で飛ぶよう指示されることもあるそう。その場合は滑走路への旋回進入、高度処理とともに速度処理も適切に行うことが求められるといいます。