ウィラーが新しい交通サービス「mobi」を始めます。主力である高速バスとは対象的な、「自宅から2km圏内の移動に特化した交通」で、「呼べば10分でくる」「運賃はサブスク」などが特徴です。
ウィラーが新しい交通サービス「mobi」を間もなく開始します。それに先立ち2021年6月10日(木)、同社の村瀬茂高(瀬の字は異体字)社長を交えた記者レクチャーがオンラインで開催されました。
mobiは3月にその構想が明らかにされました。利用者の呼び出しに応じて迎えにくるオンデマンド交通であり、「自宅から2km圏内の移動に特化」「ライバルはマイカーのチョイ乗りと自転車」というもの。同社の主力である長距離の高速バスとは対照的なサービスです。主な特徴は次の通り。
mobiの車両イメージ(画像:ウィラー)。
・呼べば平均10分で迎えに来る
スマートフォンアプリの地図上から乗車地を指定して申し込めば、自宅などまで、平均10分で迎えにきます。電話予約も対応するそうです。
・運賃は「サブスク」(1回利用も可)
本会員は5000円で30日間乗り放題。家族会員を1人あたり500円で追加でき、同居家族6人まで登録可能。このほか1回あたりの利用も大人300円、子供150円でOK。
なお登録から最初の2週間は無料お試し期間、その後の3か月(90日)間は月額3000円。
・「店舗会員」を設定
一般会員とは別に、30日間2万2000円の「店舗会員」も設定。アプリに店舗のロゴや簡単な店舗情報を掲載して宣伝ができるほか、店舗の目の前に乗降ポイントを設定可能。店の利用客の無料送迎に活用できるほか、従業員の通勤や営業にも使える。
アフターコロナならではのサービス?村瀬社長はこのmobiを、「コミュニティ・モビリティ」と呼称。コロナを経て自宅にいる時間が増えていることから、自宅の周りの移動を増やし、人と街とのつながりを深める狙いだそうです。
「家族みんなで何度も利用でき、地域の活性化につなげます。たとえば2台目のマイカーをなくしてmobiに切り替えれば、経済負担も抑えられます」(村瀬社長)
また、利用者とドライバーが顔なじみになることにより、子どもも安心して利用でき、地域の見守りなども担うことになるといいます。
では実際、どのように運行していくのでしょうか。

mobiの車両イメージ。京都府京丹後市での実証実験時(画像:ウィラー)。
車両はハイエースやアルファードといったワゴン車が用いられます。利用者の予約に応じて、AI(人工知能)が導き出したルートに基づき運行するというものです。ある地点からの利用者をその車両が乗せるか、あるいは別の車両が乗せるかも、AIが判断するといいます。
利用が多い場合には、適宜、増車をします。ルートを利用に応じて判断することと、全体的な車両配置の2軸で運行を調整していくそうです。
この運行管理を円滑にするのが、「会員制」主体である点です。どのような利用が多いのかを会員から事前アンケートで把握することで、必要な時間に増車もしやすくなるのだそう。不特定多数ではなく「特定の人」のデータから、より精度の高い運行ができるといいます。
まず京都、そして渋谷でスタートmobiのサービスは「地方」と「大都市」の2エリアから始まります。
前者は、京都府京丹後市の峰山町・大宮町エリアにて、6月30日(水)からスタート。利用可能時間は8時から21時で、車両は9人乗り(運転手除く)のハイエース。常時1台から開始されます。
「大都市」は東京都渋谷区で、7月1日(木)から開始予定です(関東運輸局に認可申請中)。エリアとしては、南は渋谷駅および神泉駅周辺、北は原宿駅、西は代々木上原駅にかけて。利用可能時間は7時から22時で、6人乗り(運転手除く)のアルファードにて常時2台から開始されます。

mobiのロゴ(画像:ウィラー)。
村瀬社長によると、地方と大都市の双方でサービス向上させていくのが年内の目標とのこと。ただ、すでに多くの自治体から「我が街でも」との声があるといい、2022年には、これを100エリアくらいに拡大したいそうです。
なお、ウィラーはmobiのサービスのみを提供し、車両の運行は、地元のタクシー会社やバス会社が担うモデルになっているとのこと。
レクチャーでは記者から「採算は」との質問が寄せられましたが、村瀬社長によると、1エリアあたり一般会員200世帯、店舗会員が40ほど集まればペイできる見通しだそうです。