国際線のCAやパイロットは、様々な国へ頻繁に出入国します。そのたびにパスポートにスタンプを押していたら、すぐにいっぱいになってしまうのではないでしょうか。

この疑問に、元CAの立場からお答えします。

10年用でもページが足らない!?

「CAってパスポートのスタンプ、すぐいっぱいにならないの?」

 一般の旅客は出入国する際、パスポートに都度スタンプを押してもらいますが、様々な国へ頻繁に出入りするCA(キャビンアテンダント)など国際線の乗務員はどうしているのでしょうか。

パスポートのスタンプ欄すぐ埋まっちゃう? 国際線の乗務員 出...の画像はこちら >>

国際線の旅客機が集う羽田空港第3ターミナル(乗りものニュース編集部撮影)。

 ここで出入国手続きのスタンプについておさらいしてみます。まずは出国の際、国際空港の出国審査カウンターで係員にパスポートと搭乗券を提出し、パスポートの査証ページには日本を出国した印として日付と空港名、「出国」と書かれたスタンプが押されます。そして旅行先の国に着いたら、今度は入国カウンターでパスポート、帰りの航空券、出入国カードなどを提出して、「入国」のスタンプをもらいます。日本に帰る時にはその逆のことが行われます。

 国によっては、出入国カードが無い、スタンプが押されないなどの場合もありますが、この出入国の手続きはどの国に行ってもたいてい同じように行われます。つまり単純往復で旅行した場合、計4つのスタンプが押されるというわけです。

 さて、冒頭の質問に戻ります。CAやパイロットも出入国の際、同じように審査を受けてパスポートにスタンプをもらっているのでしょうか。もし押されているとしたら、多ければ月に8~10往復ほど出入国したとして、10年用パスポートでもあっという間にページが埋まってしまいそうです。

 実はCAなど乗務員は、一般の旅客のようにスタンプはもらっていません。

国際線CAやパイロットの出入国の方法は?

 仕事とはいえ乗務員も原則、空港の出入国カウンターを通過します。ただし一般旅客とは別のところです。出入国エリアの端の方を見ると、「CREW」と書かれたカウンターがあり、ここには地上係員があらかじめ準備したGDという書類が必ず提出されています。

パスポートのスタンプ欄すぐ埋まっちゃう? 国際線の乗務員 出入国どうしてるのか

成田空港第1ターミナルの国際線出発ロビー(乗りものニュース編集部撮影)。

 GDとは「General Declaration」の略。飛行機を運航する上でなくてはならないもので、「出航許可証」とも呼ばれます。GDには各フライトにおいて必要な情報━━例えば航空会社名、便名、日付、飛行機の登録番号、出発地、到着地などが記載されていて、そこにその便に乗務するCAやパイロットの名前も書かれています。係員はこのリストと各乗務員のパスポートや社員証を照合し、名前と顔に相違がないかをチェック。つまりGDこそが、一般旅客の航空券の代わりになるわけです。一通りのチェックが終わると、GDに記載された自分の名前の横にマルを付けて手続き終了です。

 以上から、乗務員はパスポートにスタンプを押されることは基本的にありません。

とはいえ、これはあくまで仕事としてのフライトの話です。プライベートでたくさん海外旅行し、スタンプでいっぱいになりパスポートを増補したという人もいました。手数料がかかりますが、増補は1冊につき1回だけ可能です。

 しかしながら最近は日本でも「自動化ゲート」や「顔認証ゲート」が普及し、パスポート内のチップに登録されている指紋や顔を認証することにより、自動的に出入国審査を行えるシステムが利用されています。混雑時には短時間で通過できて便利な反面、希望しない限りスタンプをもらえないので、少し寂しい気もしてしまいます。

※一部修正しました(7月12日11時50分)。

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