日立建機が開発製造する日本最大級の油圧ショベルとダンプトラックの同時納入が栃木県でありました。普段目にする重機とは段違いの大きさを誇る車両を、運転席を含む細部まで探ってきました。
日本国内では“規格外”の超巨大な「はたらくクルマ」が、栃木県にお目見えです。日立建機と販売子会社の日立建機日本が、砕石メーカーである株式会社藤坂(栃木県佐野市)に、560tクラスの超大型油圧ショベル「EX5600-7」と、電気モーター駆動方式のリジッドダンプトラック「EH3500AC-3」の鉱山用機械を同時納入し、2021年7月15日(木)より藤坂の音坂工場で運用が始まりました。
日立建機グループで、500tを超えるクラスの超大型油圧ショベルとダンプトラックを同時納入するのは、日本国内では初めてのケースとのこと。そこで納車式典を取材してきました。
日立建機製の超大型油圧ショベル「EX5600-7」(2021年7月15日、柘植優介撮影)。
砕石は道路や生コン用の材料として使われ、社会インフラに欠かせない素材。藤坂は、長年にわたり国内最大級の生産量を維持し続けている砕石メーカーです。今回納入された超大型油圧ショベル「EX5600-7」とリジッドダンプトラック「EH3500AC-3」は音坂工場内の砕石プラントにおいて、砕石の掘削や運搬に使用されます。
日立建機によると、「EX5600-7」は日本国内で稼働するのは初めて、「EH3500AC-3」は国内で3台目だそう。そのような希少な車両ということで、当日は納車式典に引き続き、デモンストレーションの披露や実機の紹介まで行われました。
マンションくらいデカイ車両、スペックも文字通り「桁違い」「EX5600-7」は国内最大級の油圧ショベルで、重量は約550t、車幅は最大10.3m、運転台天井までの高さは約8.7mあります。ちなみにこの高さはマンションであれば、おおむね3階に相当します。
なお、街なかの工事現場で見かけるような標準的な油圧ショベルである日立建機「ZX120-6 標準タイプ」の場合、重量は約12.5t、運転台の天井高は約2.8m。重量換算であれば、「EX5600-7」はその44台分に相当します。ここまでの“巨体”を動かすエンジンも特別で、出力1500馬力、排気量5万cc(50リットル)のカミンズ製「QSKTA50-CE」V型16気筒ターボ・ディーゼルを2基搭載しています。

納車式典で切麻散米を行い安全を祈願する神職(2021年7月15日、柘植優介撮影)。
一方の「EH3500AC-3」、こちらは国内最大級のダンプトラックになります。重量は空車時で141t、荷台には最大181t(公称)を積載することができるため、車両総重量は322tになります。
全長は走行時13.56m、車幅は最大9.13mあり、運転台天井までの高さは約6mあります。工事現場などで見かける一般的な3軸10輪タイプの10tダンプトラックの場合、全長約7.6~9.1m、車幅約2.5m、最大積載量はおおむね10t前後のため、積載量換算でいえば17両から20両分に相当するといえるでしょう。
搭載するエンジンは超大型油圧ショベル「EX5600-7」と同じ排気量5万cc(50リットル)のカミンズ製「QSKTA50-CE」V型16気筒ターボ・ディーゼルを1基搭載していますが、こちらは電気モーター駆動のため、別途、発電機も搭載しているのが特徴です。
どうやって搬入したのコレ…?このような巨大な2車が動く姿は圧巻のひと言。もはや車両ではなく大型ロボットが動いているかのようでした。
藤坂の山野井社主からは、「現場の生産性をより向上させるために超大型重機を入れることにしました」「日立建機さんの重機は非常に壊れにくいことから、そこを重要視して採用しました」とのコメントがありました。

日立建機製の超大型油圧ショベル「EX5600-7」(2021年7月15日、柘植優介撮影)。
なお、日立建機日本の担当者の話では、これら超大型の重機は、パーツごとに分解して現場まで運び、そこで組み立てて使用するとのこと。そこで組立にかかった日数を聞いたところ、超大型ダンプ「EH3500AC-3」で約1か月、超大型油圧ショベル「EX5600-7」に至っては倍の約2か月かかったといいます。
その大きさも別格でしたが、運用開始までにかかる日数にもまた驚かされました。