東京オリンピック・パラリンピックの開催に伴い、全国から警察官が集結し、会場周辺の警備に就いています。集結したのは警察官だけでなくパトカーも。

なかには警視庁では見ることのできないレア車両もありました。

“万一”が起きないよう最大規模の警備態勢

 東京オリンピックの開幕を前に、2021年7月19日(月)、都内を中心として大規模な交通規制が始まりました。メイン会場となるオリンピックスタジアム(新国立競技場)周辺は、道路封鎖も含む厳重な警備態勢が敷かれています。

 警察庁の発表では、東京オリンピック・パラリンピックの警備に約6万人の警察官が従事するとのこと。これは過去最大規模の警備態勢だといいます。すでに東京には全国から応援の警察官が入っており、「大阪府警」を始めとして「○○県警察」と記されたパトカーが都心を走り回っています。

 国立競技場周辺だけを見ても、7月中旬時点で新潟県警や愛知県警、広島県警、山口県警、熊本県警などの警察官および警備車両を確認することができました。

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広島県警のCX-5パトカー(2021年7月、乗りものニュース編集部撮影)。

 よく見かけたのは、事故処理車や誘導標識車などと呼ばれるタイプで、トヨタのハイエースや日産のキャラバンなどワンボックス車のルーフ上に赤色灯付きの電光掲示板を備えた車両です。これらは交差点などの要所に配置されていました。

 またバス車体がベースの大型輸送車も各所に停まり、警察官の待機所兼バリケードとして用いられていました。そのようななか、警視庁では使われていないレアパトカーを複数見つけることができました。

マツダの激レアパトカー&スバルのベテランパトカー

 最初に目にしたのは、広島県警のCX-5パトカーです。同車は2014(平成26)年にマツダが2台寄贈した車両で、うち1台はルーフ上に誘導標識を備えていました。今回、東京に派遣されたのは、この誘導標識付きの方で、東京メトロ外苑前駅直上の青山通り(国道246号線)外苑前交差点入口で警戒にあたっていました。

 CX-5パトカーは、数が極めて少なく、広島県警のマツダ寄贈車以外では、埼玉県警が県費で少数を導入した程度です。なおCX-5は2016(平成28)年12月にフルモデルチェンジしており、埼玉県警の車両はフルモデルチェンジ後の2代目、いわゆるKF型と呼ばれるタイプのため、初代KE型がベースのものは広島県警の2台のみで、誘導標識付きはこの1台しかありません。

日本唯一のレアパトカーから謎のバスまで 全国からご当地警察車 新国立競技場で警備に

広島県警のCX-5パトカー。
電光掲示板付きCX-5としては日本唯一といえよう(2021年7月、乗りものニュース編集部撮影)。

 青山通りからJR総武線の信濃町駅方面に向けて進んでいった先で見かけたのが、山口県警のレガシイB4パトカーです。山口県警の車両はBL5と呼ばれる4代目セダンタイプで、そのなかでも2000ccターボエンジン搭載の「2.0GT」モデルです。そのため、ボンネット上部にエアインテークが設けられています。

 レガシイB4パトカーは2008年度に「交通取締用四輪車(高速II型)」として導入された車両で、警察庁予算による、いわゆる国費調達車です。同年度に6台まとめて調達されているものの、配備から15年近く経過しているため、現役で運用されている車両は少なくなってきています。

新国立競技場の近くにいた詳細不明の警察車両

 また、それ以外にも普段ならなかなか目にかかることのない車両がオリンピックスタジアムの入口近くに停まっていました。それは熊本県警の護送車です。

 護送車は、警察が被疑者(容疑者)を移送するのに用いる車両です。乗車人数とそれに伴うサイズによって基本的に小型、中型、大型の3種類あり、小型はミニバンやワンボックスカー、中型はマイクロバス、大型は中型バスが用いられています。国立競技場の近くで見られたのはマイクロバスがベースの中型護送車でした。

日本唯一のレアパトカーから謎のバスまで 全国からご当地警察車 新国立競技場で警備に

JR千駄ヶ谷駅の近くで警備にあたる新潟県警機動隊の人員輸送車。
「毘」の文字が特徴。奥の建物は東京体育館(2021年7月、乗りものニュース編集部撮影)。

 機動隊や警察署などに配備されている人員輸送車にも、マイクロバスをベースにした中型輸送車というものがあり、なかには一般的な青白の機動隊カラー以外の塗装が施されたものもあるため、ぱっと見、護送車とはなかなか判断し難いです。

 ただ、同車には外からドアを施錠するための打掛錠(うちかけじょう)が取り付けられていたほか、運転席および助手席と後部座席のあいだには内壁が設けられており、物理的に後部座席を遮断できるようになっていたことから、まず護送車といえるでしょう。

 警察に詳しい人の話では、おそらく警察官など関係者の人員輸送に用いたのではないだろうかということでした。同じようにマイクロバスがベースの機動隊の中型輸送車や、遊撃車の代わりとして使っているのだろうとのことです。

詳細は不明ではあるものの、これもまた、なかなか目にすることのない“レア車両”といえそうです。

 今回は国立競技場周辺のみでしたが、東京オリンピック・パラリンピックは東京の他地域はもちろん、神奈川県や千葉県、埼玉県、静岡県、茨城県、福島県、宮城県、北海道などでも行われます。

 それら開催地でも、もしかすると普段目にすることのない警察車両が大会支援にあたっているかもしれません。