あおり運転をされるきっかけとなる運転行為、どのようなものでしょうか。それは、追い越しをしたなどの具体的な行為とは限らないようです。
あおり運転をされた経験のある人が、そのきっかけとして思い当たる運転行為とは、どのようなものでしょうか。チューリッヒ保険会社が2021年8月17日(火)に発表した「2021年あおり運転実態調査」で、その一端が明らかになりました。
調査は全国2230人のドライバーを対象に実施。あおり運転をされた経験がある/ないと答えた人は、50%/50%と割れました。ただ、近年のあおり運転に関する報道を受け、あおり運転されないよう、以前よりも意識して運転するようになったと答えた人は76%を超えています。
あおり運転をされるきっかけとなる運転行為とは。写真はイメージ(画像:Graca Victoria/123RF)。
あおり運転を受けたことがあるドライバーに、その「きっかけと考えられる運転行為」を聞いた回答結果は、次のようになりました(抜粋)。
・追い越しをした:25.6%
・スピードが遅かった:21.4%
・車線変更をした:15.4%
・車間距離を詰めた:12.0%
・制限速度で走っていた:11.1%
・クラクションを鳴らした:10.3%
このうち「制限速度で走っていた」は、2020年の調査では17.2%で1位だったそう。逆に「スピードが遅かった」は13.8%から21.4%にアップしました。
いずれにしても、追い越しなどの具体的なアクションではなく、自身が走っていたスピードがあおり運転されるきっかけになった、と考える人が一定数いることが伺えます。
交通心理学を専門とする九州大学大学院システム情報科学研究院の志堂寺和則教授は、チューリッヒの調査結果に次のようなコメントを寄せています。
「私はあおり運転には2つのタイプがあると考えています。ひとつは衝動的にあおり運転をしてしまうタイプ(衝動型あおり運転)、もうひとつは邪魔な車を排除するためにあおり運転を道具として使うタイプ(道具型あおり運転)です」
このうち「衝動型あおり運転」は、追い越しや車線変更をされた際、瞬間的にカッとなって、ついやってしまうあおり運転とのこと。一方の「道具型あおり運転」は、「前を走る車が邪魔で追い越せない時に、追い越したいということを知らせる目的で行うあおり運転」だといいます。
アンケートで「スピードが遅かった」「制限速度で走っていた」ことが、あおり運転されたきっかけになったと答えた人が少なくないことは、全てイコールとは言えないものの、「道具型あおり運転」が少なくないことを裏付けているといえるかもしれません。

あおり運転の対象となる10類型の違反には、高速道路における最低速度違反も含まれる。これは相手を妨害する目的でわざとゆっくり走ることを想定している(画像:千葉県警)。
なお、「あおり運転をされた時にとった対処方法」という項目では、「何もしなかった」と「道を譲った」が大多数を占めました。これについて志堂寺教授は、状況により対処も様々としつつ、「あおってきた相手は興奮していることが多いため、相手を刺激しないように対処することが重要」としています。
また、「あおり運転をされないように工夫していること」の項目では、「車間距離をしっかり取る」が55.5%を占め、そのほか「急な割込みをしない」「ウインカーは早めに出す」といった回答が続きました。
志堂寺教授によると、特に車間距離を広く取ることは「あおり運転を受ける危険性がかなり下がるだけでなく、追突事故も減らせる」とのこと。急ブレーキなど後続車に迷惑がかかることを防ぎ、気持ちに余裕を生み、ひいては周囲のドライバーを気遣う運転につながるというわけです。