キハ85系にかわって、2022年にデビュー予定の新型車両「HC85系」。このキハ85系とHC85系を乗り比べる試乗会を、JR東海が報道陣向けに開催しました。

実際に乗り比べてみたところ、「音」以外に大きな進化のポイントがありました。

JR東海公式の「新旧乗り比べツアー」に参加

 特急「(ワイドビュー)ひだ」「(ワイドビュー)南紀」で使用されているキハ85系ディーゼルカーの後継車両として、2022年度、JR東海の新型車両「HC85系」がデビューする予定です。

 HC85系の大きな特長は、ディーゼルエンジンと蓄電池による電気を用い、電気モーターを回して走るハイブリッド方式を採用すること。ハイブリッド方式では日本初で日本最速となる120km/hでの営業運転を行います。

JR東海の新旧特急 乗り比べてみた結果 新型「HC85系」は...の画像はこちら >>

左が新型のHC85系、右が従来のキハ85系(恵 知仁撮影)。

 HC85系は、すでに試験走行車が登場済みで、営業開始に向けたテストなどを実施中。そうしたなか2021年8月、JR東海がこのHC85系試験走行車の試乗会を、報道陣向けに開催しました。

 試乗会は、名古屋駅から鵜沼駅(岐阜県各務原市)までの往路は従来のキハ85系に乗車し、名古屋駅に戻る復路は新型のHC85系に乗車するという「乗り比べツアー形式」での実施。新型車両「HC85系」の出来の良さに対する、JR東海の自信を感じます。

 はたしてどのくらい進化しているのでしょうか。新型「HC85系」は静粛性が注目点のひとつですが、私(恵 知仁:鉄道ライター)はもうひとつ、「従来車との違い」で強く感心した要素がありました。

実際に乗り比べた結果…これは乗客の疲労度がだいぶ違うかも

 1989(平成元)年にデビューしたキハ85系と、2022(令和4)年にデビュー予定のHC85系。

乗り比べて強く感じたのが、HC85系の揺れの少なさです。

 ハイブリッド方式のHC85系では、震動源であるディーゼルエンジンの数が、キハ85系の2基から1基に減少。加えて大容量の蓄電池を搭載するため、駅に停車中はアイドリングストップ――エンジンが停止します。

 また、ディーゼルエンジンの動力で車輪を回転させて走るキハ85系は、ギアチェンジしながら加速しますが(自動車のオートマチックトランスミッション〈自動変速機〉のような仕組み)、電気モーターの動力を使うHC85系は変速機が不要なため、キハ85系にあるギアチェンジ時のショックが起きません。滑らかに加速していきました。

JR東海の新旧特急 乗り比べてみた結果 新型「HC85系」は「静か」だけじゃなかった

名古屋駅に停車中の新型「HC85系」(2021年8月、恵 知仁撮影)。

 そのほか、床へ施された二重構造の防音・防振対策、エンジンの防振ゴム二重化、エンジン取り付け位置の変更(中央から車端部へ)、台車の改良(軸ばねの固さを上下・左右・前後方向ごとに設定可能)、グリーン車へのセミアクティブダンパ搭載といった様々な振動対策が、HC85系には施されています。

 HC85系は、大きな揺れも小さな揺れもよく抑えられていて、乗り比べてしまうと正直、レベルが違います。キハ85系は全体的に荒い印象になってしまいました(当たり前ですが)。

 振動は、乗客へストレスを与える要因のひとつです。それが大幅に軽減されたHC85系だと、目的地へ到着したあとの疲労度が違うのではないかと思います。

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