飛行機に搭乗した際、高い確率で耳にする巡航時の「パイロットからのアナウンス」。CAではなく、わざわざパイロットがアナウンスするのには、どのような意味があるのでしょうか。
飛行機に搭乗した際、高い確率で耳にする巡航時の「パイロットからのアナウンス」があります。普段はCAがアナウンスしますが、パイロットのアナウンスは利用者への搭乗のお礼から始まり、現在の飛行状況、揺れの予想、目的地への到着予定時刻などを説明します。便によっては、ユニークなアナウンスを耳にすることもありますが、そもそもなぜパイロットのアナウンスは随所で聞かれるのでしょうか。
ANAのボーイング787型機(乗りものニュース編集部撮影)。
ANA(全日空)のパイロットによると、アナウンスの実施目的を「お客様の安心と信頼を高める情報提供手段と考えている」と話します。そして、実施のタイミングを次のように解説します。
「パイロットはアナウンスを行う際、もう1人のパイロットに操縦のみでなく管制官との交信や機体のモニターなど、本来2人で分担しておこなっている業務のほとんどを任せます。もちろん、アナウンスをしながらも機体の状況をモニターし続けたり、管制官との交信をモニターしています。したがって、安全を維持するためには、業務量が少ない時間帯を選んでアナウンスを行う必要があります。離着陸前後だけでなく、上昇・降下中も機体の状態の変化が大きかったり、モニターする項目が多かったりするため、巡航中の落ち着いた時間を選んでアナウンスをするのが最も一般的です」
同氏によると、パイロットは常に業務負荷の大きさ「ワークロード(Workload)」をコントロールしながらフライトしているといいます。巡航中であっても管制交信の周波数変更が来ないタイミングを見計るなど、アナウンスを行う数分のあいだコックピットが忙しい状況、すなわちワークロードの高い状況にならないかを予想して、タイミングを判断しているそうです。
コックピットからのアナウンスは機長が実施する――と思いきや、ANAのパイロットによると「必ずしもそうとは限りません。ANAにおいては副操縦士がアナウンスを実施することは全く珍しいことではないのです」と話します。
「ANAでは2人のパイロットのうち、どちらが操縦をするか事前に決めており、操縦を担当するほうのパイロットがアナウンスも実施するケースが大半だと思います。理由は明確に決まっているわけではありませんが、操縦を担当するパイロットは今後の飛行方針について意思決定をしていくので、お客様に対してフライトの説明をしやすい立場にいる――ということもひとつの要素としてあるかもしれません」(ANAのパイロット)
ただ同氏によると、「必ずしも操縦を担当するパイロットが機内アナウンスも実施しているわけではなく、フライトによる、というのが実際のところです」とも。これは、副操縦士が操縦を担当していても、機内アナウンスはその便の責任者として機長が実施するという考えのパイロットもいるというのが理由と話します。
ANAのボーイング787型機の機内(乗りものニュース編集部撮影)。
なお同氏によると、ANAの場合、パイロットが機内アナウンスで話す内容は「文例集」と呼ばれる雛型でまとめられており、実際のフライトではパイロットがそれを参考にしつつアナウンスをするといいます。とはいえ、それぞれのパイロットは文例を参考にしつつも状況に合わせて内容を多少変えてアナウンスをするというのが一般的だそうです。

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