特急「踊り子」から引退した185系電車の廃車回送を狙った撮り鉄が、鉄道敷地内に侵入。書類送検されましたが、侵入の動機は「高く売れる写真を撮りたかった」。
特急「踊り子」から引退し、廃車のため回送される185系電車を撮影しようと、中央本線の鉄道敷地内に侵入した「撮り鉄」2人が2021年9月、鉄道営業法違反の疑いで書類送検されました。
撮り鉄が侵入した動機について、FNNプライムオンラインは「高く売れるいい写真を撮りたかった」と伝えています。
はたして、そうして撮影された鉄道写真は、メディアなどに高く売れるものなのでしょうか。
特急「踊り子」に使われていた185系電車(画像:写真AC)。
筆者(恵 知仁:鉄道ライター)は長らく、鉄道を中心に様々なメディアに関わってきましたが、結論から言うと「普通はありえない」です。
この撮り鉄が撮ろうとしていたような、明らかにおかしい場所から撮影しただろう写真を使うメディアは、少なくとも鉄道関係では、まずないでしょう。どんなに迫力ある写真だろうと、ほかにない写真だろうと、違法行為が疑われる写真を使うこと自体がメディアにとって危険です。ましてや、それが高く売れることはありえません。
ただ近年は、ネット上で手軽に自分の写真を販売できるストックフォトサービスも登場しており、誰でも写真をお金に換えやすくなっているのは事実。鉄道に詳しくないメディアなどであれば、問題のある写真を買ってしまう可能性はあるのかもしれません。そうしたメディアなどが、廃車回送のような趣味性が高い写真を求めているかは疑問ですが。
鉄道写真を高く売る方法鉄道写真を高く売りたいのであれば、メディア(報道)向けではなく、広告向けなどのほうが、その可能性があるかもしれません。
個人に対してプリントした鉄道写真を売る、ということも考えられなくはありません。
筆者は実際、いまから30年少々前の小学生のころ、名古屋駅ホームで写真を撮っていたら、高校生か大学生ぐらいの人から「鉄道写真を買わないか?」と声をかけられたことがあります。アルバムを何冊か見せられ、L版で1枚100円ぐらいでした。

廃車回送などにも使われるEF64形電気機関車(画像:photolibrary)。
その行為の善しあしはさておき、ネットもパソコンもスマホも一般的ではない当時なら、綺麗に写っている鉄道の写真について、ブロマイド的に需要があったのかもしれませんが、現在はどうでしょうか。
またそもそも、プリントした鉄道写真の商品市場は、一部のプロぐらいの、とても限定的なものです。
ブログなどに載せ、炎上させてPVを稼ぎ、広告をたくさん表示させて多くの売り上げを出す、という意味なら、「鉄道写真が高く売れる」こともあるのでしょうか……。
【動画】撮り鉄が今回の問題を起こした瞬間 止まった電車 逃げる撮り鉄