神奈川県の久里浜港と、千葉県の金谷港を結ぶ短距離航路・東京湾フェリー。全区間乗船しても40分という短い航路ですが、景色・設備・サービスは本格的で、東京近郊で手軽に船旅を味わうことができます。

東京発だと長い航路ばかり…短く船旅を味わえる東京湾フェリー

 東京湾には様々な旅客航路があります。長距離航路としては、東京~徳島~北九州を結ぶオーシャン東九フェリーに加え、2021年7月には横須賀~北九州を結ぶ東京九州フェリーも加わりました。また離島航路として東京~大島・神津島、東京~三宅島・八丈島を結ぶ東海汽船、東京~父島を結ぶ小笠原海運の航路があります。

 それぞれに見どころがある航路ですが、所要時間が長かったり、目的地が離島だったりと、気軽な船旅を楽しむにはややハードルが高いかもしれません。そうしたなかで、距離が短く、気軽に船旅を楽しめるのが東京湾フェリーです。

40分の航路に船旅の良さ凝縮 東京湾フェリーに乗る 「グリー...の画像はこちら >>

東京湾フェリー「しらはま丸」(安藤昌季撮影)。

 東京湾フェリーは神奈川県の久里浜港(横須賀市)と、千葉県の金谷港(富津市)を結びます。運賃が安価な上に首都圏からの日帰り旅が可能で、グレードによっては豪華な施設や、船内グルメも楽しめます。船旅になじみがない方には、うってつけの航路かもしれません。

 久里浜港は京急電鉄とJRの久里浜駅から2km程度の距離。駅から京急バスも運行されていますが、久里浜港まで歩いても25分くらいです。久里浜港のフェリーサービスセンターはレストランやみやげ物屋もあり、レストランでは「よこすか海軍カレー」やそば・丼ものも楽しめます。

 一方、千葉県側の金谷港のフェリーサービスセンターは、房総半島で最大級のおみやげセンター「食彩市場」や、地魚海鮮料理の「波留菜亭」も利用可能です。最寄りのJR内房線浜金谷駅まで徒歩8分ほど。ただJR内房線は館山方面の本数が少ないので、乗り換えるなら時刻は事前に調べた方が良いでしょう。ちなみに、金谷港のすぐ近くに鋸山(のこぎりやま)があり、山頂まで4分の鋸山ロープウェーも楽しめます。

 なお、東京湾フェリーは、徒歩やバスでのアクセスだけでなく、自動車ごと船に乗り込むこともできます。自動車航送料金は普通車で1台4100円です。

グリーン車ならぬグリーン室がある

 東京湾フェリーで運用されているのは、「かなや丸」「しらはま丸」の2隻で、いずれも総トン数3351~3580t、航海速力13ノット(24km/h)の中型客船です。

 客室部分は1階と2階に分かれ、1階にはスナックコーナーや売店も設けられています(時間帯によっては非営業)。特筆すべきはスナックコーナー。片道40分程度の短距離航路にもかかわらず、食事メニューが豊富です。筆者(安藤昌季:乗りものライター)が乗船したときは、チーズ入りフライ、サバのからあげ、まぐろのつみれ、くじらのおにぎりといった特徴的な軽食メニューがありました。

 魚の旨味が口の中に広がる「まぐろのつみれ」は、温かいお味噌汁も付いてきます。

その他、焼きそばや鳥のからあげ、たこ焼き(しっかり温かいもの)、サンドイッチなど、選択肢は豊富です。

40分の航路に船旅の良さ凝縮 東京湾フェリーに乗る 「グリーン室」が豪華すぎ!

通常客席(安藤昌季撮影)。

グリーン室は豪華な応接室

 客室設備は広間に座席が並び、大きな窓から景色を楽しめる開放船室が基本ですが、1室だけ「グリーン室」も設けられています。これは20人分の座席が設けられた個室であり、空気清浄器やテレビも設けられた、本格的な応接室です。

 利用するためには、運賃(片道800円)に加え、ルームチャージ料金3000円が必要です(臨時便では開放していないことがあります)。仮に他の利用者がいなければ、1人で20人分の面積を独占することもできます。

 東京湾フェリーはその景色も大きな楽しみのひとつ。長距離フェリーなどでは、ずっと海上で変化が乏しいこともありますが、東京湾は日中であれば、クルーズ客船から自衛艦、貨物船まで多種多様な船舶を見ることができます。場所や気象状況によっては、房総半島はもちろん、遠くの富士山も楽しめます。

 身近な距離にある本格的な船旅。それが東京湾フェリーの魅力だと、著者は考えています。船旅の良さを体験してみては、いかがでしょうか。

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