エアバス社の工場では、まず日本では見ることができない不思議な形の飛行機を日常的に見ることができます。胴体の上がコブのように大きく盛り上がった輸送機「ベルーガ XL」です。

同社協力のもと、間近でその姿を見てきました。

双発旅客機「A330」がベース

 ヨーロッパの航空機メーカー、エアバス社の本拠地フランス・トゥールーズなどでは、まず日本では見ることができない不思議な形状をした飛行機を日常的に見ることができます。輸送機「ベルーガ XL」です。

 エアバス社協力のもと、この機を近くで見ることができました。

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エアバス「ベルーガXL」(2021年10月、乗りものニュース編集部撮影)。

 この機の最大の特徴といえば、胴体の上がコブのように大きく盛り上がっていること。このコブはまるごと巨大な貨物室となっています。貨物室はマックスで幅約8.1m、高さ7.5mの物体が入る大きさ。そしてなんといっても、その強みは長尺貨物への対応力で、約47mの物体が入る奥行きをもっているのです。なお、同機の全長は約63m、全幅は約60m。このサイズ感は、ジェット旅客機であれば標準的ともいえますが、コブの高さがあるためか、それ以上に大きく見えます。

 デビューは2020年。

ベースとなっているのは、日本でも遭遇率の高いエアバス社の双発旅客機「A330」ですが、その胴体上部はもちろんのこと、尾翼などの胴体後部、胴体下部のコクピット部分など、各所に大きな改造が施されているようで、パッと見たところA330の面影はありません。

 この不思議な飛行機は、どのように使われるのでしょうか。用途を知ると、日本での遭遇率が限りなくゼロに近い理由もわかります。

「ベルーガ XL」はどんな飛行機なのか?

 エアバス社の工場はヨーロッパ各地に11か所点在しており、それぞれで各部分のパーツが組み立てられたのち、最終組立工場へと運ばれます。「ベルーガ XL」は、この工場間で旅客機のパーツを輸送すべく作られました。

 こういったパーツ輸送用の巨大輸送機がエアバス社で用いられるのは、「ベルーガ XL」が最初ではありません。この歴史は1970年代の同社草創期、A300旅客機のパーツ輸送を目的としたターボプロップ輸送機「スーパーグッピー」の導入から始まり、1990年代に入るとA300をベースとした「ベルーガST」がデビュー。「ベルーガ XL」はいわば3代目にあたる存在といえるでしょう。

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エアバス「ベルーガXL」(2021年10月、乗りものニュース編集部撮影)。

「ベルーガ XL」は、業績を伸ばし続けるエアバス社の生産率向上に対応するため、そして同社の双発機「A350」シリーズの立ち上げにともない開発されました。

 スペックの向上も図られています。これまでの「ベルーガST」と比較し30%輸送能力がアップ。

「ベルーガ ST」では1枚のみだったA350の主翼を、「ベルーガ XL」では2枚同時に運ぶことができます。また、ターンアラウンドタイム(到着から次のフライト出発までの折り返し時間)も「ベルーガ XL」は1時間。既存の「ベルーガ ST」の半分の時間まで短縮されているとのことです。

 ちなみに「ベルーガ」は日本語でいうと「シロイルカ」の意味。「ベルーガ XL」には目が描かれ、機首のコックピットの窓あたりからは「口」をイメージした黒いラインが引かれています。つまり、全景を見渡すと「巨大なシロイルカが空を飛んでいるように見える」というわけです。

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