東京の繁華街、上野広小路交差点で信号待ちの歩行者を巻き添えにする交通事故が発生しました。都内では同様の死傷事故が連続。

安全と思える交差点でも、実は危険と隣合わせです。

運転不能の車両が横断歩道の隙間から!

 東京都台東区上野の交差点で2021年10月22日(金)、信号待ちの歩行者を巻き添えにする交通事故が発生しました。現場は上野松坂屋の目の前で、多くの人が行き交う繁華街です。都内では9月にも千代田区役所前の交差点で、同様の死傷事故が起きたばかり。歩道と車道が分離された道路でも歩行者の信号待ち、自衛策が必要かもしれません。

 上野の事故は午前11時頃に発生。「大きな音がして道路を見ると、タクシーが交差点の真ん中で止まってトラックが歩道に乗り上げていて、周りの人がよろめいていた」。目撃した人は事故直後をこう説明しました。

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上野広小路交差点の事故現場。2021年10月22日(中島みなみ撮影)。

 現場は中央通りと春日通りが交差する「上野広小路交差点」(上野3-29-5先)。中央通りを直進する小型トラックと、対面して進むタクシーの事故で、直進するトラックより先に右折して春日通りに入ろうとしたタクシーの運転席側と、トラックの運転席側が衝突。

その際、衝突を避けようとしたトラックが運転を誤り、歩道に突っ込みました。いわゆる右直事故です。この事故でタクシーの運転手と、歩行者の女性2人が負傷したと伝えられています。

 中央通りは片側3車線の幹線道路で、人通りも多いため、かなり広い歩道が整備されています。トラックが突っ込んだ交差点の角にはガードパイプがありますが、トラックはその切れ間、約6m幅の横断歩道から歩道に乗り上げて、歩行者と接触しました。トラックがなぎ倒した郵便ポストのすぐ横は百貨店の出入口でした。

 信号待ちなどで歩道を利用する歩行者が巻き込まれる事故は、都内で先月9月11日にも起きています。千代田区九段南の内堀通りの現場は、目の前が千代田区役所です。歩道と車道がガードパイプで分離され、歩行者にとっては安全と思われる道路環境でした。

 しかし、当事者のタクシー運転者が病気のため運転不能の状態に陥り、車両が大きく歩道側に寄ったため、左端の自転車をはね、交差点の先にある区役所出入口前のガードパイプの切れ目から歩道に乗り上げて歩行者を巻き込み、男女あわせて4人が死傷しました。

歩車分離のあり方考える必要も

 交差点で歩道を通行中の歩行者が巻き込まれるケースは2019年5月8日、滋賀県大津市で起きた園児と引率の保育士15人が死傷した事故が全国的に知られています。

 これも上野と同じ交差点での右直事故でした。

右折と直進の軽乗用車どうしが衝突。はずみで直進車が歩道で信号待ちしていた保育園児の列に突っ込みました。この県道は歩道と車道に縁石を設けることで分離されていましたが、前出した都内の事故のようにガードパイプなどの防護柵はありませんでした。

どう自衛? 多発する歩行者巻き添え事故 交差点の隙間から突っ込む車 対策はあるのか

大津の事故が発生した大萱6丁目交差点。左は琵琶湖。交差点右下の広い歩道部で信号待ちしていた園児や保育士が犠牲になった(画像:Google Earth)。

 事故後、滋賀県はガードパイプを設置。防護柵には設置基準があるので車両の侵入を防ぐ効果は期待でき、改善されたように思えます。しかし、横断歩道に防護柵は設置できないわけですから、安全のため柵から離れて信号待ちをする習慣がついている人も、完全に自衛できるわけではありません。今後は道路管理者も歩行者が巻き添えにならない設置基準を考えていく必要があります。

 しかし、何よりも大切なことは、運転者が交差点進入時に無理をしないことです。直進車は黄色信号で無理に交差点に入らない。

右折と直進では直進車が優先、右折車は「直進車が譲ってくれた」と思っても、直進車をやり過ごしてから曲がることを徹底することが、事故の最強の防護柵になるはずです。

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