首都圏の私鉄で、各駅停車しか停まらないにも関わらず、異例の長さのホームがあるのが東武スカイツリーラインの梅島駅。上下線の乗り場が盛大に“ズレた”構造はなぜできたのでしょうか。
私鉄で最も長い電車は京急の12両編成、約216mですが、その電車も余裕で収容できてしまいそうな、異例の長さのホームを持つ駅が東武スカイツリーラインにあります。東京都足立区の梅島駅です。
梅島駅。ホームの中心から左上(西新井方)が下り線乗り場、右下(北千住方)が上り線乗り場(画像:Google earth)。
梅島は各駅停車のみが停まる高架線上の駅で、上下ともに通過線を有する「島式ホーム1面4線」の構造。西側から、下り通過線(急行線/ホームなし)、下り本線(緩行線)、ホーム、上り本線、上り通過線(ホームなし)という配置です。
高架の中央にある1本のホームは、北千住方が上りの乗り場、西新井方が下りの乗り場に分かれています。つまり、ふたつの乗り場を一直線上に配置しているのです。列車が停車しない部分には柵がありますが、コンコースへの階段が通じる中央部で行き来が可能。端から端までの長さは350m以上あり、もはや「新幹線級」です。
なぜこのような構造になったのでしょうか。
地上時代の梅島駅は「相対式ホーム2面2線」、すなわち、下りホーム、下り線、上り線、上りホームというオーソドックスな構造でした。
昭和40年代に行われた高架化・複々線(線路4本)化にあたり、この駅では用地の関係から、地上の駅を営業しつつ真上に高架駅を構築する「直上高架橋方式」が採用されました。
高架ができた後は、下りの通過線側に仮ホームが設けられ、上り線側の線路と本設ホームは後から構築されました。東武鉄道の社史では、梅島駅の工事を次のように記述しています。
「上り・下りホームを連続して並べた設計とした。発想としてはきわめて画期的なものである。これによって、線路用地に隣接する商店街の大がかりな買収や、小学校の移転といったきわめて困難な事態を避けて工事を進行させることができ、工期の短縮や工事費の圧縮を図ることが可能となった(中略)それ以後の市街地の高架化計画に貴重な貢献をなしている」(東武鉄道百年史)
仮に上下線のホームを分離して平行に配置すると、駅部の高架橋はより大きな面積が必要になるでしょう。旧日光街道と東武線が交わる位置にある駅の立地を維持しつつ、限られた用地で高架化・複々線化を行う工夫が、ホームの直列配置だったのです。なお、上下線の乗り場がつなげられ行き来が可能になったのは、後のことです。
地上時代の梅島駅。2面2線のオーソドックスな配置だった(内田静雄撮影/東武鉄道提供)。
ちなみに、同様の例はJR中央本線の藤野駅(神奈川県相模原市)や、名古屋市営地下鉄東山線の名古屋駅などがあります。いずれも用地の関係によります。
東山線名古屋駅の場合、もともと長さ約100mの島式ホームの両面に電車が発着していましたが、名古屋駅以西へ延伸する際、もう100mぶんのホームを一直線に配置して上下線の乗降スペースを分離、トンネルを拡幅することもなく乗降需要に対応したのです。一方のホームの電車が停まらない部分は通路になっています。

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