奈良のホテルで、不思議なポスターが目にとまりました。奈良のネガティブな状況を現したものですが、新たなブームが生まれ、将来の大きな変化も予測される奈良。

いま、注目のエリアかもしれません。

ほとんどの都道府県に複数回 泊まりましたが…

 奈良駅隣接のホテル日航奈良に2021年10月、宿泊しました。

 そのとき、ホテル内で目にとまったものがあります。道路の「止まれ」が「泊まれ」になったポスターです。

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奈良市観光協会が制作した「泊まれ」ポスター(2021年10月、恵 知仁撮影)。

 奈良を訪れる観光客は、京都や大阪に泊まって日帰りで来る人も多いことから生まれたという、ポスターです。

 私(恵 知仁:鉄道ライター)はその趣味&職業柄、日本各地で多くの宿泊経験がありますが、改めて考えてみると、これまで宿泊施設を利用したことがない都道府県は滋賀県のみ。奈良県は1回だけありましたが、中学の修学旅行なので、ないに近い状態でした。

 観光庁の宿泊旅行統計調査では、2019年の都道府県別延べ宿泊者数において、奈良県は46位(273万人泊)。大阪府は2位(4743万人泊)、京都府は5位(3075万人泊)でした。ちなみに、47位は徳島県(257万人泊)、1位は東京都(7898万人泊)です。

 そもそも奈良県の旅館・ホテル客室数は、増加傾向が続いているとはいえ9426室と、全国平均の3万5023室を大きく下回っている背景もあるでしょう(2018年度の厚生労働省のデータ)。

 このホテル日航奈良では、期間限定ですが、ほかにも目にとまるものがありました。

いまブームになっている「奈良名物」

 ホテル日航奈良のレストラン「ファウンテン」で10月1日(金)から11月30日(火)まで提供している、エスプーマかき氷「かき氷新幹線」です。

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「かき氷新幹線」(2021年10月、恵 知仁撮影)。

「N700S」と「ドクターイエロー」の2種類が用意されており、それぞれ同店の特徴であるエスプーマで「青」「黄色」を演出。中に鉄分が多いアプリコットが入っており、「鉄分補給」できるのも特徴だそうです。

 実際に食べてみたところ、まずエスプーマの柔らかい食感と味が口の中でとけて消えていき、続いて現れた氷も、冷たさと同時に来るふんわりした感触。そしてこちらも、とけて消えていきました。

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泡のようなエスプーマが施され、完成していく「ドクターイエローかき氷」(2021年10月、恵 知仁撮影)。

 奈良市には氷の神様をまつる氷室神社があり、「かき氷」がいま、ブームになっているそうです。夏でなくともかき氷を提供する店が少なくありません。

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72時間かけて氷をつくっている日乃出製氷(2021年10月、恵 知仁撮影)。

 多くの店舗へ氷を卸しているという奈良市の日乃出製氷では、今夏は過去最高の売り上げだったとのこと。

ちなみに日乃出製氷では、じっくり72時間かけて氷を製造。途中、不純物を複数回とることで、透明な氷をつくっているそうです。

逆に「のびしろ」しかない?

 先述の「かき氷新幹線」は、JR東海とのコラボで誕生したものです。

 冒頭で宿泊客が少ないという話をした奈良ですが、そこへの訪問者を増やすことは、JR東海にとっても重要。駅はないとはいえ、東海道新幹線の利用者を増やすにあたって、一時はオーバーツーリズムが問題になっていた京都と比べ、奈良はまだまだ「のびしろ」があるからです。

 JR東海のキャンペーンというと、「そうだ京都、行こう」が特に知られているかもしれませんが、奈良についても「うましうるわし奈良」を継続的に展開しています。

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国宝である興福寺の五重塔(2021年10月、恵 知仁撮影)。

 この11月にオープンしたJR東海の「EX 旅のコンテンツポータル」にも、「興福寺 五重塔 令和大修理前の特別御開帳と八海醸造コラボ日本酒付」など、「奈良」をより楽しめる特別プランがいくつも用意されました。興福寺ではいま、令和の大修理前をに、国宝の五重塔が特別公開されています。

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特別に公開されている興福寺の五重塔内部。許可を得て撮影(2021年10月、恵 知仁撮影)。

 将来、奈良市付近をJR東海のリニア中央新幹線が通り、駅も設けられる予定です。

冒頭では奈良のいまについてネガティブな話をしましたが、これからの奈良は、成長が楽しみなエリアのひとつでしょう。

 ただもしかすると、落ち着いた「古都 奈良」を楽しむのなら、いまのうちかもしれませんが。

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