フォークランド紛争の「One for all, All for one」は有名!
イギリス「3Vボマー」のなかでは最も長生き1952(昭和27)年の12月24日。イギリスのハンドレページ社が開発したジェット戦略爆撃機「ヴィクター」が初飛行しました。
「ヴィクター」は、ヴィッカース製の「ヴァリアント」、アヴロ製の「ヴァルカン」とともに「3Vボマー」と呼ばれることの多い機体です。これは3機種とも名前がアルファベットの「V」から始まるため。これらはイギリスの核戦力の一端を担う軍用機として同時期に開発されています。
この「3Vボマー」のなかで最後に初飛行したのが「ヴィクター」で、性能的にも「ヴァリアント」や「ヴァルカン」よりも秀でていたものの、登場が遅れたことで生産機数はほかの2機種と比べて少なく、86機にとどまっています。
イギリス空軍のハンドレページ「ヴィクター」。写真は空中給油機仕様(画像:アメリカ国防総省)。
のちにイギリスが国防戦略の方針転換を図り、核戦力の主軸を潜水艦発射型弾道ミサイル(SLBM)に置き換えたことから、維持運用コストのかかる大型戦略爆撃機は順次退役または運用形態の変更が図られます。
「ヴィクター」も、空中給油機や写真偵察機として運用されることとなりましたが、前述したように「ヴァリアント」や「ヴァルカン」よりも飛行性能などが優れていたことなどから、最も長生きし、1990(平成2)年から翌1991(平成3)年にかけて起きた湾岸戦争にも参加しています。
「ヴァルカン」1機のため、「ヴィクター」11機が支援特に1982(昭和57)年に起きたフォークランド紛争では、「ヴァルカン」爆撃機1機(ほかに予備機1機)をフォークランド諸島まで飛ばすために11機の「ヴィクター」空中給油機が支援にあたっています。
「ブラック・バック」と呼ばれたこの作戦は、南大西洋の中央にあるイギリス領アセンション島から長駆6300kmを飛行し、フォークランド諸島に展開したアルゼンチン軍を攻撃し、戻ってくるという壮大なものでした。

イギリス空軍のハンドレページ「ヴィクター」(画像:アメリカ海軍)。
往復約1万3000kmを飛行する「ヴァルカン」爆撃機の任務をサポートするために、「ヴィクター」空中給油機は各給油ポイントへ進出。
このような実績から、退役後もイギリス各地に11機が保存展示されており、うち2機は飛行可能な状態で維持されているそうです。