旧ソ連・ロシアのツポレフで、初飛行に成功したものの実用化には至らなかったモデルが「Tu-334」です。実はかなり斬新なコンセプトを持つこの機、どのような旅客機だったのでしょうか。
かつて世界有数の航空機メーカーとして君臨した、旧ソ連・ロシアの「ツポレフ」。同社がソ連の崩壊後、初飛行に成功したものの実用化には至らなかったモデルが「Tu-334」です。ただこの機、製造数こそ2機だったものの、コンセプトはロシア機のなかでは、かなり斬新といえるものでした。
ツポレフ「Tu-334」(画像:Public Domain/ZiminVasiliy)。
Tu-334は、800機以上の売り上げを記録しツポレフ製の旅客機としてはヒット作とされるジェット旅客機「Tu-134」の後継機として開発されました。ともに、航続距離2000~3000km程度の短い路線で100席以下の席数を配し、エンジン2基を胴体後部に配した「リアジェット」のスタイルです。
胴体直径約2.90m、全長約37.1mとほっそりした外観をもつTu-134と比べて、Tu-334は、胴体直径約3.8m、全長約31.3mとずんぐりむっくりしたものとなりました。これはTu-134の後発モデルで、機体サイズが大きい「Tu-204」の胴体設計を生かしたものです。
当初の計画ではTu-334は、エンジンのタイプが違う2種類の型式を世に出す予定でした。ちなみに開発が始まったのは、1980年代末から1990年代初頭といわれています。
Tu-334、どんなコンセプトだったのかツポレフTu-334は、先発として一般的なジェット旅客機に採用されている「ターボファン・エンジン」を搭載したものをデビューさせ、そのあと「プロップファン・エンジン」を搭載するタイプをデビューさせる計画でした。
プロップファン・エンジンは、現代のプロペラ旅客機で一般的な「ターボプロップ・エンジン」の発展型で、同軸でつながった二重のプロペラが、相互に逆方向にまわる「二重反転プロペラ」を備えたもの。

ツポレフTu-95MSM改良型。プロップファンエンジンを搭載している(画像:UAC Russia)。
Tu-334はソ連からロシアへ体制が移行する混乱の時期に制作が進められたため、開発まで時間を要しました。初飛行は1999(平成11)年2月に成功、その後、ロシアの型式証明を2003(平成15)年に取得しました。同機は7社から確定注文を経ており、一時は、約100の航空会社が同機の導入を検討していたとも。生産開始は2009(平成21)年とされました。
ただこのころ、ロシアの航空機メーカーに大きな転換点が訪れます。ロシアの航空機メーカーが結集し「統一航空機製造」として作られた旅客機「スホーイ・スーパージェット100」の本格的な実用化です。同機の実用化に専念するとして、2009年にTu-334のプロジェクト自体がとん挫してしまったのです。製造された2機はターボファン版で、プロップファン搭載版の実機が作られることはありませんでした。