指定された場所までLNGを届けます。

LNG船の普及を見越して次の一手へ

 日本郵船、九州電力、伊藤忠エネクス、西部ガスの4社は2022年3月29日(火)、合同で記者会見を行い、九州・瀬戸内地域における船舶向けLNG(液化天然ガス)燃料の供給に関する事業化を進めると発表。

これに基づき、本日付で三菱造船に対してLNGバンカリング船1隻を発注したことを明らかにしました。

 すでに、前出の4社は本年2月2日に合弁会社「KEYS Bunkering West Japan(キーズ・バンカリング・ウエスト・ジャパン)」を設立しています。同社は北九州市に本店を置き、LNG燃料の販売や船舶の保有・管理を主な事業とすることを明らかにしており、三菱造船が建造するLNGバンカリング船も同社と契約を結んでいます。

 この船は2024年3月に竣工予定で、西日本で稼働する初めてのLNGバンカリング船となる予定だといいます。

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記者会見後、手を合わせた4社のトップ。向かって左から西部ガスの道永幸典社長、日本郵船の長澤仁志社長、九州電力の池辺和弘社長、伊藤忠エネクスの岡田賢二社長(乗りものニュース編集部撮影)。

 そもそも、4社が合弁会社を設立してLNG燃料供給の事業に乗り出す目的は、世界的なカーボンニュートラルが背景にあるとのこと。国際海事機関(IMO)は、すでに世界の大型外航船への新たなCO2排出規制を採択し、2023年から開始することを決定しています。

 これに伴い、従来は新造船のみが対象であったCO2(二酸化炭素)の排出規制が既存船に対しても適用されることになっており、新造船についてはより一層の規制強化が見込まれています。

 そういったなか、国内外では重油専焼よりもクリーンなLNGを燃料とする船舶への移行が進んでおり、LNG需要は拡大の一途をたどっているものの、九州・瀬戸内地域では、LNGバンカリング船による供給体制が未構築であることから、前出の4社はタッグを組むことでその部分のシェアを獲得しようと動いた形です。

拠点は北九州LNG基地 ロシアの影響は?

 説明によると、新たに建造するLNGバンカリング船は、北九州市にある九州電力の戸畑LNG基地(北九州LNG基地)を拠点に九州や瀬戸内地域に寄港、あるいは近傍を航行する船舶に対してLNG燃料の供給を行う予定だといいます。

 また、このLNG供給は、特定の港湾内でのみ燃料供給を行うものではなく、広域の顧客に対して、ニーズがあるところにバンカリング船でLNGを届けるというもので、この点は日本初の取り組みだとしています。

 ちなみに、西部ガスの道永幸典社長によると、将来的には戸畑LNG基地の近隣にある同社のひびきLNG基地(北九州市若松区)についても活用していきたいとのこと。ただ、こちらはLNGバンカリング船が桟橋につかないという問題があり、バース(接岸場所)の整備が必要だというハナシでした。

九州・瀬戸内の各港へ天然ガスをお届け 西日本初のLNGバンカリング船が2024年に竣工へ
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記者会見に応じた4社のトップ。向かって左から西部ガスの道永幸典社長、日本郵船の長澤仁志社長、九州電力の池辺和弘社長、伊藤忠エネクスの岡田賢二社長(乗りものニュース編集部撮影)。

 なお、記者からロシアのウクライナ侵攻によって、日本を含む西側諸国がロシアに経済制裁を行っているなか、極東ロシアのサハリン州で行われている石油および天然ガス採掘プロジェクト「サハリン2」に影響がないのか質問が出たものの、これについては問題視していないとのことでした。

 ほかにも、ロシアが西側の経済制裁に対抗して、LNGの支払いをルーブル建てで求めていることに関して影響があるかという質問について、九州電力の池辺和弘社長は「現時点では、ルーブルで支払えという要求がロシアから来ているというのは聞いていない」との回答でした。

 また、池辺社長は、前出の「サハリン2」からLNGの購入をとり止めることはあるのかという質問に対しても、「経済制裁のために購入を止めるという考えは現状ない。なお今般、首都圏で起きたような電力ひっ迫などを鑑みると、サハリン2から安定的にLNGの供給を受ける方が日本の電力需要を考えてもメリットの方が大きい」とコメントしていました。

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