免許不要のミニボートにまつわる事故が多発しています。コロナ禍でさらに人気が高まり、ユーチューバーにも注目されていますが、これにピリピリしているのが、海を仕事の場とする漁師など。

背景には根深い問題もあります。

免許不要 手軽なミニボートで事故多発

 いわゆる「ミニボート」の事故が多発しています。第5管区海上保安本部によると、全国で起きたミニボートの海難事故は、2016(平成28)年の68件から2020年には103件に増加しているといいます。

 先日も和歌山県沖の無人島へ向かって転覆し救助されたユーチューバーに取材した報道(2022.2.19毎日新聞)が話題になりましたが、“ミニボート”で検索すると、全国各地のミニボートにまつわる海難の記事が出てきます。

なぜミニボートのトラブル多発? コロナ禍でユーチューバーも注...の画像はこちら >>

ゴム製ミニボートのイメージ(画像:海上保安庁)。

 ここでいう「ミニボート」は、プラスチック製の船やゴムボートに、エンジンとスクリューが一体になった「船外機」を取り付けた小型ボートのこと。法的には船体の長さが3m未満、出力1.5KW(約2馬力)未満でエンジンがついた船舶をさし、船舶の免許もライフジャケットの着用も不要とされています。

 船外機でおよそ10万円、船本体も10~20万円ほどで手に入れられるうえ、クルマに乗せたり一人でも持ち運びができたりする手軽さもあって、人気を集めているものの、利用者増にともない事故も増えているようです。

 ミニボートに係る海難実態調査を行っている福井県立大学海洋生物資源学部の東村玲子准教授は次のように話します。

「以前は釣り人が使うものという認識だったが、最近では他の利用、例えばミニボートに乗って散策するとか、きれいな景色を見にちょっと離れた島へ行ってみるとか、また、そういった動画がどんどんユーチューブにあがるようになってきている」

 この背景には、コロナ禍で密を避けられる楽しみとして、釣りを含めたマリンレジャー全体が注目されていることもありそうです。

漁船が肝を冷やす事情

 具体的な事故としては、転覆や浸水、機関の故障で帰れなくなったりするケースが多いそうですが、東村准教授は、次のような危険性も指摘します。

 実は、海の上で船は“右側通行”です。

船はそれぞれ右側に避けて衝突を避けるように決まっていますが、このことを知らない一般の人は、左側通行に慣れているため、左に避けてしまうため、正面衝突につながりかねず、非常に危険だそうです。

 さらに、事故が起こった場合はクルマと同じで、大きい船の方の過失が大きいと見なされます。ミニボートはとても小さいので、漁船とぶつかった場合、過失が「100%自分の方にくる」と、漁船側が神経をとがらせているといいます。

 このような事情は2010年くらいから危険性が指摘され、全国海区漁業調整委員会連合会が国に規制の法整備を求めていますが、なかなか進んでいないとのこと。ミニボートの管轄は国土交通省で漁業は水産庁、2つの省庁にまたがった問題である点も影響しているかもしれません。

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