混乱が続くロシア・ウクライナ情勢を踏まえ、JALが欧州線を「世界一周ルート」で運航すると発表しました。ロシア上空を避けるふたつの飛行ルートを組み合わせたものですが、どのようなものなのでしょうか。
JAL(日本航空)が19日(火)から5月7日(土)までの期間におけるヨーロッパ線の運航ルートを2022年4月12日(火)に決定しました。混乱が続くロシア・ウクライナ情勢に鑑みたものとしており、旅客便・貨物便ともにロシア上空を避けるふたつのルートを組み合わせた「世界一周ルート」を採用するといいます。
JALの旅客機(乗りものニュース編集部撮影)。
JALがいうところの「世界一周ルート」は、日本出発時に「北回りルート」、欧州出発時に「南回りルート」で運航するというもの。「北回りルート」は日本出発後アラスカやグリーンランドの上空を経て欧州に至るもので、「南回りルート」は欧州からいったん南下し中東や中国上空を経て日本に至る予定のものです。
同社は2022年3月から、ウクライナへ侵攻したロシア上空を回避するルートとして「北回りルート」を採用してきました。過去に北回りルートで欧州線を運航していた実績が多くあったことなどが選定の理由としていました。
その一方で、JALの担当者は、回避ルート設定直後「たとえばフィンエアーなど、他社の欧州便では、北回りと南回りをすでに組み合わせて飛ばしています。将来的には同じように組み合わせて飛ぶことは大いに考えられます」とも話していました。
JALがこのたび「世界一周ルート」を導入した決め手、そしてそのメリットはどのようなものがあるのでしょうか。
「世界一周ルート」どのようなメリットが?「北回りルート」を採用した直後、JALはその理由に過去の運航実績とともに「安全」を挙げていました。対し、このたびの「世界一周ルート」の採用では「南回りルートでの安全性や、北回りルート継続時と比較した場合の経済性が確認されたため」と公式にコメントしています。

JALより先に「世界一周ルート」に相当する飛行方式をとっていたフィンエアー(乗りものニュース編集部撮影)。
南回りルートは、北回りルートとくらべて、100マイル(約185km)程度飛行距離が短くて済むというのもメリットです。ただそれ以上に、欧州発の便で南回りを採用する大きなメリットは、風を有効活用できることでしょう。
JALの担当者によると「(南回りルートで通る)ヒマラヤ上空では西から東へ強いジェット気流が吹く」とのこと。日本発ではこれは強い向かい風のなか飛ぶことになり、飛行時間が伸びる一方で、欧州発ではこれが強い追い風に。「北回りルート」より飛行時間が短く、経済性も高いフライトすることができるのです。
南北ふたつの迂回ルートを組み合わせたJALの「世界一周ルート」導入路線では、欧州発の飛行時間が大幅に減ると発表されています。「南回りルート」で運航されるヘルシンキ→羽田線、ロンドン→羽田線のダイヤ上の飛行時間は、ともに14時間10分。これはロシア上空を通る平時の飛行時間よりは依然として大幅増とはなるものの、北回りルートと比べると、1時間30分から1時間40分ほど、短くなっています。