ドライバーの酒気帯びの有無を測るアルコール検知器が品薄状態です。白ナンバーの事業用ドライバーへの義務化まで半年を切るなか、義務化の延期を要請せざるを得ない状況も。
2022年4月から、いわゆる白ナンバーの事業用車でも酒気帯びの確認が義務化されました。そうしたなか、酒気帯びの有無を測定する「アルコール検知器」が、全国的に品薄状態に陥っています。
白ナンバー車の営業車などのアルコール検査が義務化された。写真はイメージ(画像:写真AC)。
アルコール検知器は、息を吹きかけたり、吹き込むことで体内の残留アルコール濃度を数値化できるデバイス。従来から運転前後のチェックが義務付けられている運輸・運送業などの緑ナンバー車の運転者だけでなく、最近では営業でクルマを利用する社員向けや、飲酒制限など健康管理を目的とした利用者も増えています。
今年4月1日には改正道路交通法が施行され、白ナンバー車両でも酒気帯びの確認が義務化されました。昨年5月、千葉県八街市で起こった飲酒運転の白ナンバートラックによる児童死傷事故を受けての改正です。
それまで義務付けられていたのは、有償で人やモノを運ぶ「緑ナンバー」だけで、自分の会社の資材などを運ぶ白ナンバーは対象外でした。改正後は、白ナンバーの営業車など5台以上、または定員11人以上の車両1台以上保有している場合、緑ナンバーと同様に酒気帯びのチェックと、さらにその記録の1年間の保管が義務付けられています。
ただし5月時点では、まだ顔色や呼気による確認が認められており、アルコール検知器は不要。
アルコール検知器は家電量販店や通販サイトでも購入可能で、携帯タイプのものは数千円から数万円。設置型はコンピューターと連動、データの保存も可能で30万円を超えるものもあるようです。検知器による検査の義務化を前に、新商品の発表や、運用のセミナーなども盛んに行われています。
そうしたなかで、なぜいま、検知器が品薄状態なのでしょうか。
需要に到底追い付かない供給 “義務化延期”が現実味?大きな要因は、やはりコロナの感染拡大による世界的な半導体不足です。そうしたなか、今のうちに入手しておこうという動きが活発化し、さらに深刻な品薄につながっている状況があります。
たとえば、アルコール検知器の製造大手でもある健康機器メーカー、タニタにも注文が殺到。納品するまでに半年待ちとか。世界的な半導体不足だけでなく、中国・上海のコロナ感染拡大によるロックダウンで必要な部品の調達が難しいとのことで、従来の倍の金額を出して半導体を確保するなど、対応を急いでいると報じられています。また、全日本交通安全協会が購入を仲介するサイトもありますが、5月現在で受け付けを一時中止しています。
今回の改正で、新たに義務化の対象となる事業所は、全国で約34万に上るとされています。
この背景として、同協議会は「働き方」の変化があると指摘します。テレワークの普及で事業所に出社せず直行直帰というスタイルも広がり、1事業所に1台ではなく、1人に1台、検知器を持たせるような動きがあるといいます。また、車両5台以上を保有する事業所が対象ではあるものの、「本来は1台からでも導入すべきもの」とのこと。「34万事業所」という数では、到底収まりきらない需要があることがうかがえます。
同協議会は3月に会員企業へアンケートを行っており、回答した16社のうち14社が、10月以降も「供給は困難」と回答しています。協議会はこの結果から、国に対し義務化移行時期の延期要請を検討する状況と報じられていましたが、5月現在は「3月より欠品はさらに広がっているでしょう。今の状況ならば(延期要請は)間違いない」ということでした。