ANAグループでは、イルカのイラストが描かれた「スーパードルフィン」という旅客機が運用されていました。全機退役となったいま、実は1機だけ羽田空港で「整備訓練機」という形で使用されています。

今回初の一般公開にあわせその機内に入ることができました。

2018年2月に退役の「JA301K」

 ANA(全日空)グループではかつて「スーパードルフィン」と呼ばれたジェット旅客機、ボーイング737-500が運用されていました。エンジンカウルに「イルカ」のオリジナルイラストが描かれていることが特徴で、2020年をもって全機が退役したものの、未だに根強いファンがいる機体として知られています。ただ「スーパードルフィン」は、実は旅客を乗せてフライトする本来の旅客機の役割とは全く違う形で、羽田空港に1機だけ残っているのです。その激レア機の内部に迫ります。

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一般公開されたANAの整備訓練機(2022年5月14日、乗りものニュース編集部撮影)。

 ANAウイングスのボーイング737-500は、ANK(エアーニッポン、現ANA)で1995年から導入され、以降25年間、地方路線で活躍しました。愛称の「スーパードルフィン」は、その短い胴体がイルカに似ていることなどに由来します。

 羽田空港に保管されているのは、1997年4月に登録され、2018年2月に退役した「JA301K」。同機の総飛行時間は約4万7000時間、総サイクル数(飛行回数に相当)は4万8254サイクル。旅客便としてのラストは2018年2月1日NH1231便(小松→福岡)でした。

 一般的に、国内航空会社での役目を終えた旅客機は海外に売却されるなどの運命をたどりますが、この機は違いました。

 JA301Kは、退役後、1機丸ごと「整備訓練専用機」として余生を過ごすことになったのです。同機は、整備士をはじめとするANAの技術系新入社員などが、実機を用いて航空整備の実技経験を積むことで、ノウハウを効率的に習得するための「トレーニングの場」として使用されることになりました。

 その転身から約4年たった2022年5月、その機内が初めて一般開放されました。

現役時代と「整備訓練機」のいま、どう違う?

 ボーイング737-500「スーパードルフィン」の「整備訓練専用機」の外観は、現役時とほとんど同じ。エンジンカウルの「イルカ」も健在です。ただ「ANA」ロゴのところは「ANA TECHNICAL TRAINING」と塗り替えられています。胴体の各所には点字ブロックのような凹凸が。これは外装整備のトレーニングによってできたものだそうです。

 続いて機内。実はこちらも「整備訓練専用機」となったことで、現役時代とは一変した姿も予想できましたが、なんとほとんどが、現役時代の「スーパードルフィン」そのままです。

激レア! ANA「整備訓練機」に迫る わずか1機の737-500「スーパードルフィン」 機内はどう変化?
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一般公開されたANAの整備訓練機(2022年5月14日、乗りものニュース編集部撮影)。

 機内は126席の厚みのあるクラシカルな黒系統のカラーリングのシートがならび、照明の色も蛍光灯カラーの黄色。

ギャレー(キッチン)や、CA(客室乗務員)が座る「ジャンプシート」もほぼそのままで、機内アナウンスなども実施することができます。

 なお、ANAによると同機の機内ではこれまで「シート取り外しや取り付けの訓練などが何度も実施されています」とのこと。利用者目線からはわからないような”原状回復”ができることも、プロの航空整備士になるための大切な要素なのかもしれません。

 今回整備訓練専用機が一般公開されたのは、ANAウイングスの社員発案の同機を活用したツアーが実施されたことによるものでした。普段は立ち入りできない整備訓練専用機のコクピットや機内外を、パイロットや客室乗務員による案内のもと見学するというもので、ツアー参加者は、客室下の貨物室「ベリー」やエンジンの内部などを、スタッフの生解説のもと肉薄するという、レアな体験をしていました。

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