瀬戸内海の中距離フェリー「ジャンボフェリー」、その32年ぶりとなる新造船が進水しました。船体の大型化や客室の豪華志向といった近年の傾向に加え、コロナを経ての新趣向も。
ジャンボフェリーは2022年5月28日、同社としては32年ぶりとなる新造フェリー「あおい」の命名・進水式を内海造船瀬戸田工場(広島県尾道市)で行いました。同船は9月に竣工し、10月から神戸~小豆島~高松航路に就航する予定です。
ジャンボフェリー新造船「あおい」(深水千翔撮影)。
新造船「あおい」は、1989(平成元)年に竣工したフェリー「こんぴら2」(3700総トン)の代替船として計画されました。船体の大きさは「こんぴら2」の約1.4倍となる5200総トン。積載能力は大型車換算で現行船の64台から84台に増強するうえ、客室スペースを拡大することで旅客定員は475人から620人に増えます。船体の塗装も変わり、側面には瀬戸内海の波をイメージした紺碧色の曲線が大きく描かれ、ファンネル(煙突)と船首・船尾には縞模様が取り入れられています。
フェリー「あおい」の内装は「瀬戸内海に浮かぶテラスリゾートAoi」をコンセプトに掲げたデザインを採用しています。
近年の傾向として、プライベートスペースが用意された客室や、コロナ対策として「密」を避けた空間が求められていることから、個室や半個室タイプの客席も用意。船内をプレミア席専用エリア/自由席エリア/ペット専用エリア/大型ドライバー専用エリアの4区分に分けるとともに、完全チケットレスを実現する「QRスマート乗船システム」と組み合わせ、エリアごとの入退場をQRゲートで管理します。
自転車持ち込みOK ドライバーズエリアも超快適!プレミア席専用エリアには、風呂や足湯もあり、瀬戸内海の景色を眺めながらリラックスすることができます。
大型ドライバー専用エリアは、一般客室と完全に分離。シングルベッドの個室、専用シャワールーム、ランドリー、給湯設備などが用意されています。
これら設備に加え、高い換気能力と深紫外線(UV-C)殺菌デバイスを備えた空調システムも導入するとのことです。

ジャンボフェリー新造船「あおい」(深水千翔撮影)。
運航性能の面では、浅喫水・全面無柱フルフラット甲板対応型2サイクル1機1軸推進システムや、高速離着岸デバイスなどのパッケージ化により、大幅な燃費削減と環境性能の向上が図られています。衝突などで浸水した場合でも、残る浮力で船体を安全に維持するための国際安全基準に適合しているほか、大規模災害時には、乗客の避難に役立てるよう、ストレッチャーごと載せられる大型エレベータも装備するといいます。
ジャンボフェリーの山神正義社長は新造船について「トラックドライバー不足の世の中にあって、シャーシのみの無人航送に対応できる船型。環境に優しく、コロナ対策も十分にできる」とアピールポイントを紹介し、「地元の皆さんから愛される船になってほしい」と期待を示しました。