箱根でヘリコプターに搭乗できるのをご存じでしょうか。運航会社は東京都の離島への航路を持つ東邦航空で、代金も格安です。
存在はよく知られていても、乗ったことのない人が大半な乗りものに、ヘリコプターが挙げられるのではないでしょうか。「どこで乗れるのかわからない」「運賃が高額」など、搭乗機会が少ないことは確かです。
例えば東京の遊覧飛行では「20分4万5900円(3人まで搭乗可能)」「15分2万400円(平日)」、2人貸切だと「17分4万2000円」といった価格帯であり、特別なタイミングでなければなかなか搭乗しにくいでしょう。
東邦航空が運航するユーロコプター エキュレイユ AS350。箱根で遊覧飛行できる(2022年10月、安藤昌季撮影)。
そのような中で「5分で4000円(子ども3500円)」という、格安ヘリコプターが運航されているのはご存じでしょうか。場所は神奈川県の箱根・芦ノ湖エアポート。2022年は土日祝に年間14日間運航されます。決して高頻度ではありませんが、筆者(安藤昌季:乗りものライター)は2022年10月に搭乗してみました。
芦ノ湖エアポートは芦ノ湖西岸にあります。東京から訪れるなら、小田急電鉄と箱根登山電鉄で箱根湯本駅に向かい、そこからバスで「箱根町港」に向かいます。
バスセンターでは、周囲のタクシー会社の電話番号を教えてもらえるので、当日は電話すると5分でタクシーが来ました。タクシーで「芦ノ湖エアポート」(あるいは「レストハウスフジビュー」)まで10分ほど乗車すると、タクシー料金は片道3230円でした(「芦ノ湖エアポート」は有料道路内なのでその料金を含む)。
派生型は世界で初めてエベレスト山頂に着陸した機体新宿から現地までは3時間弱で到達できました。周囲には箱根海賊船だけでなく箱根関所などの観光地も豊富にあるので、それらを巡るついでにヘリコプターを利用することもできます。
運航している「東邦航空」は、日本唯一のヘリコミューター輸送を行っている航空会社で、伊豆諸島(大島、利島、三宅島、御蔵島、八丈島、青ヶ島)への足となる「東京愛らんどシャトル」や、ドクターヘリなども運航しています。

代金は5分で4000円(2022年10月、安藤昌季撮影)。
芦ノ湖へリポートで飛行するのは、長野朝日放送の報道ヘリでも使われていた「ユーロコプター エキュレイユ AS350」という機種です。1974(昭和49)年初飛行の機材ですが、派生型の「AS350 B3」は、2005(平成17)年に世界で初めてエベレストの山頂に着陸したヘリとしても知られています。
箱根遊覧飛行は通常「AS350B」で行われ(取材時はAS350B2)、その性能は速度220km/h、航続時間2.5時間、上昇限度約4800m、641馬力とのことです。芦ノ湖周辺を一周する約20kmの距離は5分間で飛行します。最大搭乗人員は5名とされていますが、コロナ禍のため、後部座席のみ使用の4名搭乗で運航されています。
取材時は親子連れが搭乗しました。近くで見送ると、出発時に轟音と暴風が体を叩きます。航空機では、出発に立ち会うことはまずないので、貴重な体験です。
実際に搭乗してみた乗車すると、10数秒で芦ノ湖を見下ろす高度に達します。取材時は雲に覆われていましたが、富士山も近くよく見える距離です。
航行中の箱根海賊船も眼下に見えます。パイロット曰く「初心者向けの安定飛行を心がけました」とのことでしたが、それでも機体はかなりの角度で傾き、斜め下にある芦ノ湖の絶景を堪能できました。リピーターも多く、ヘビーユーザーは「倍額を支払うので、もう少し飛行してほしい」などの交渉をする方もいらっしゃるとか。要望受付の可否はパイロットが判断します。

芦ノ湖周辺20kmを5分間で遊覧する(2022年10月、安藤昌季撮影)。
飛行時のヘリコプターですが、機内ではそこまでの轟音はなく、揺れはゆったりしているため、そこまで振動も大きく感じられません。側窓は機体下部にも設けられており、空のパノラマを堪能できました。
ゴールデンウィーク中は1日50便も運航したという人気のヘリコプター。次回遊覧飛行は、2022年12月31日~翌2023年1月3日です。なお、悪天候により中止されることもあります。