2022年10月24日、消防・防災ヘリが主体の地震災害対応訓練が神奈川県の横浜ヘリポートで行われました。東京や茨城、名古屋からも集まった6機のヘリコプター。
横浜市消防局は2022年10月24日、横浜ヘリポートとその周辺で大規模地震災害対応訓練を実施しました。これに伴い、当日は横浜市消防局航空消防隊をはじめ、東京や名古屋などから6機もの消防・防災ヘリコプターが集結。他の自治体から飛来する緊急消防援助隊航空部隊の受け入れや、活動エリアの振り分け、被災者の救助、着陸したヘリへの燃料補給などの各種訓練を行い、災害への対処能力を高めました。
訓練に参加したヘリコプターは横浜市消防局のアグスタAW139「はまちどり2」をはじめ、東京消防庁のユーロコプターAS365N3「かもめ」、千葉市消防局のAS365N3「おおとり2号」、埼玉県防災航空隊のAW139「あらかわ4」、茨城県防災航空隊のBK117「つくば」、そして名古屋市消防局のAS365N3「ひでよし」の6機です。
ドラム缶からの給油作業(深水千翔撮影)。
想定は横浜市直下で朝7時に震度7の地震が発生し、八景島や城ヶ島につながる橋が落ちたというもので、訓練が始まると横浜市消防局の航空消防隊が横浜ヘリポート内に航空指揮本部を立ち上げ、情報収集を開始。それとともに、近隣の都県などから応援で駆け付けるヘリコプターと派遣隊員の受け入れに向けた準備を整えていきました。
同局の高橋一夫航空科長は「ヘリコプターの受け入れは、けっこう難しいところがある」と話します。
「着陸しても渡す燃料がなければ活動はできないし、帰ることも難しい。ヘリコプターはずっと空中にいられるわけではないので、準備をしっかりと行い、必要な情報を渡して一緒に活動してもらえるようにしなければならない」
横浜市消防局は消防ヘリコプターとしてAW139を2機、保有・運用していますが、災害時はより多くの機体がひっきりなしに横浜ヘリポートへ離着陸する可能性があります。助けを必要とする場所へ機体を急行させ、被災者の救出を迅速に行うためには、地上の拠点となるヘリポートの支援が不可欠です。
9時30分に東京消防庁の「かもめ」が到着したのを皮切りとして、続々と他都県のヘリコプターが飛来。指揮本部では任務の付与が行われる一方、エプロンではドラム缶から機体への燃料補給が実施され、準備が完了したヘリコプターはそれぞれ災害が発生した地域に向け、飛び立っていきました。なお、指揮本部には静岡県消防防災航空隊が航空指揮支援隊として入り、運用の手助けを行っています。
10時30分ごろには名古屋市消防局の「ひでよし」が到着。実際の災害では消防庁長官から出動の指示を受けて、緊急消防援助隊として展開することもあります。

6機の消防・防災ヘリが集結した横浜ヘリポート(深水千翔撮影)。
ヘリコプターによる救助・救出訓練は八景島と城ヶ島の2か所で行われました。八景島では先に到着していた東京消防庁、千葉市消防局、埼玉県防災航空隊の機体が要救助者を長浜公園(横浜市金沢区)まで搬送。城ヶ島では島民や観光客が孤立したため、横浜市消防局、茨城県防災航空隊、名古屋市消防局の機体が向かい、こちらでは人工透析が必要な被災者から優先的に救出しています。なお、救助するさいは、いずれも着陸せずホイストを使用した救助を実施していました。
また、横浜市消防局の「はまちどり2」と東京消防庁の「かもめ」に搭載されているカメラを使用し、ヘリテレによる災害現場の情報収集も試みられています。
高橋航空科長は「今回の訓練の大きな目的は、神奈川県・横浜市が被災したときに、航空指揮本部として必要な航空隊の受け入れや任務の付与など運営面での能力向上。
これだけ多くの機体を受け入れる訓練は非常に珍しく、「2~3年に1度行われるくらい」だそうです。一方で緊急消防援助隊として神奈川県外へ出動することもあるため、他都道府県から訓練参加の誘いがあった場合は「応援をする訓練と捉え、救助では何が必要なのか、どれだけの荷物を積んだらよいのかといったことを検証しながら行っている」と話しました。