警視庁が実施した自転車や電動キックボードの取締りに密着。真夜中の六本木交差点は、歩道を走る電動キックボードのほか、“アシスト”か“フル電動”か判別がつかない自転車など、さながら新モビリティの混沌をそのまま映し出していました。

夜の繁華街 酔客に混じる自転車や電動キックボードを対象に――

 2022年11月3日0時、東京港区「六本木交差点」の四方に警察官が姿を見せました。目的は深夜の自転車と電動キックボードの指導と取締り。警視庁は自転車に対して重大事故につながりかねない4つの違反行為について、警告にとどめず赤切符(告知票)を使った摘発に乗り出すことを明らかにしていますが、その姿勢はすでに数字に表れていました。

夜の六本木は“モビリティのカオス” 警視庁の取締りに密着 歩...の画像はこちら >>

六本木交差点で行われた深夜の自転車・キックボード取締り(中島みなみ撮影)。

 祝日前の六本木交差点は、昼間以上に盛り上がりを見せる都内屈指の繁華街です。そんな象徴的な場所で、20人近い警察官が交差点の角々に立ちました。

 主な目的は電動キックボードの終電後の飲酒運転取締りと、自転車の悪質運転の指導と取締り。電動キックボードの運転者には呼気検査で対応。自転車利用者は、車両の動力性能にも注意を払いながら、悪質性の高い違法運転について指導を行いました。

 取締りを担当した警視庁麻布警察署交通課は、こう言います。「終電後の深夜だけでなく、明け方にも電動キックボードや自転車に対して実施しています」。

 あらゆる車両が電動化に向かう中、免許を必要としない自転車の指導・取締りは複雑になっています。

利用者の車両が自転車か否かを確認しなければならないからです。電動化した車両は、日本版はアシスト自転車でも、海外版はフル電動のバイク車両、同じモデルでも異なる性能を持っていることがあります。フル電動の場合は運転免許が必要で、そもそも歩道を走ることはできません。

「フル電動の自転車についても、今年に入って何度も警告を出しています」(同交通課)。

 電動キックボードの場合も、個人所有の場合は原付扱いでヘルメットが必要ですが、そもそもヘルメットを携帯も着用もせず、押して歩くことで違反を免れている例もあります。

 利用者が違いを自覚していないこともあり、警察官は粘り強く、利用者に自覚を促します。六本木交差点の昼間のような照明は、混沌とするパーソナル・モビリティを、そのまま映しているようです。

前年比で違反件数増加、警告カード減少

 この秋警視庁は、こうした状況下で事故の割合を増やしている自転車利用について、事故につながりかねない4つの悪質な乗り方を重点的に取り締まることを公表しました。

・信号無視
・一時不停止
・右側通行
・歩道通行

 しかし、この方針が打ち出される前から、警視庁は自転車の関連する事故の割合が増えることに注意を払い、摘発に乗り出していました。東京都内の自転車に関する数字です。

●自転車の違反件数
2021年1~12月 4315件
2022年1~9月 3906件

●自転車の警告カード発出件数
2021年1~12月 33万2228件
2022年1~9月 24万8067件

 12か月と9か月の違いがありますが、2022年の違反件数は前年を上回る一方で、警告カードの件数は前年を下回る見込みです。警視庁交通執行課は、次のように話します。

夜の六本木は“モビリティのカオス” 警視庁の取締りに密着 歩道ゆく電動キックボードに自転車
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六本木交差点で行われた深夜の自転車・キックボード取締り(中島みなみ撮影)。

「悪質危険なものは取締りを強化するよう指示を出しているので、警告は少なくなっているのかもしれません。(割合が増え続ける)自転車事故状況のもとでは、4つの項目をより重点的かつ積極的に、集中した取締りをやっていくべきと注意を促していますが、方針を打ち出す前から自転車の取締りに力を入れ、違反件数は右肩上がりです」

 警視庁まとめた都内における2022年中(9月末日まで)の自転車が関与する交通事故は1万271件。交通事故全体の46.6%を占めています。また、前年同期比で1718件増えています。

自転車の罰則「厳しすぎる」の声に警察は

 反則制度のない自転車は赤切符(告知票)で摘発を受けると、罰金を伴う刑罰を受けることがあります。そのため警告カードで対応を続けていますが、自転車の関連する事故の割合は高止まりしています。

 全国的にも自転車の乗り方に対して厳しい目が注がれています。例えば、歩行者との衝突につながる歩道通行は、自転車安全利用五則の中では「歩行者優先」との記載が、「原則車道」に改められました。

 自転車で利用者が違反に問われると、先の重点項目では、3月以下の懲役または5万円以下の罰金が定められています。厳しすぎるのではないかという声も聞かれますが、前出・交通執行課はこう話します。

「本来であれば交通安全教育、啓発活動で利用者がルールを守ってもらえたら、事故も起きないはず。

ただ、自転車の関連する事故はなかなか減っていかない状況がある。我々の目的は事故防止なので、取締り強化するので気を付けて下さい、ルール守ってくださいということを少しでも理解してもらいたい」

 歩道に「自転車通行可」の標識がある場合、自転車は歩道を走れますが、この場合も歩行者優先です。徐行せずに歩行者妨害に問われた場合は2万円以下の罰金、または過料です。

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