通常の格納庫とは、あらゆるところが違いました!
JALでも「エンジン整備センター」は1箇所のみ成田空港にあるJAL(日本航空)の航空機整備用の格納庫。この一角には、旅客機の心臓であるエンジンの整備を行う「エンジン整備センター」があります。
高校生に公開されたJALの「エンジン整備センター」(2022年11月26日、乗りものニュース編集部撮影)。
このエンジン整備センターには、同社の最新鋭機、エアバスA350-900に搭載されている「ロールス・ロイス トレント XWB」をはじめ、現在、同社で長距離国際線主力機「ボーイング777-300ER」に搭載されており、世界最大の推力(11万5000ポンド)を持つ旅客機むけエンジン「GE90-115B」などが、機体からとり下ろされ、カウル(エンジンカバー)もない金属むき出しの状態で、至るところに並べられています。
「GE90-115B」のエンジン整備作業では、「時計と同じ精度、40分の1mmの単位での作業が必要になる」というのが担当者の弁。たとえばこの精度が必要になるのは、エンジンの吸気口に、扇風機の羽根のように備わる「ブレード」1枚1枚と、それらを覆うファンケースとの離隔だそうです。また、とくにエンジン内部にある圧縮機「コンプレッサー」にあるブレードの整備では、マニュアル上「2.54cmの1万分の1の単位」と、非常に細かな作業を要するといいます。
このセンターの奥には厚い壁に隔てられた、エンジンの試運転場があります。
センターの天井を見ると、レールのようなものが設置されており、試運転の際にはこのレールを用いて、懸架式モノレールのようにエンジンを吊り下げた状態で試運転場へ運びます。
この日実際の試運転はありませんでしたが、実施時には、室内の別室からスロットルレバーのようなものを操作しエンジン稼働させ、動作や推力のチェックなどを行います。担当者によると、旅客機の種類によるものの、1基あたりの試運転時間は、1時間半程度にもなるそうです。
実は「飛べば飛ぶほど安全?」 JAL機のエンジン整備事情JALの担当者は、旅客機のエンジン整備の特徴を次のように話します。
「GE90-115Bエンジンは、4000~4500回サイクル(離陸回数)、年数でいうと、おおよそ8年に一回のペースで定期的にオーバーホールし、パーツを交換していきます。ジェット・エンジンに最後まで残るのは、横についているネームプレートくらいです。なので、製造から50年たった飛行機は不安と思われる方も多いのですが、実はジェット・エンジンだけはどんどん安全になっていくんです。ただ、そのぶん、エンジンの維持費はかなりしますね」

JALのボーイング777-300ER(2022年11月26日、乗りものニュース編集部撮影)。
エンジン整備センターの花井直人センター長によると、「航空会社のなかでもエンジン整備をやっている会社は実はあまり多くなく、どちらかというと少数派だ」とのこと。
「お客様が安心して乗っていただくということに向け、自分達で確認していくんだということで、私たちはエンジン整備を長年やり続けています。また、エンジンメーカーの人にユーザーの目線で発信もでき、設計に結びつけることもできます。お客様の信頼にもつながりますし、今後も気持ちを込めて整備していきます。新型コロナウイルスの中で、ここで見学を行うのは久々ですが、ちょっとでも、興味をもっていただければ嬉しいなと思います」(花井センター長)
ちなみに、今回の見学会はJALらが行った「飛行機ワークショップ 2022 ~Power for the Future!!~」の一環で実施されたもの。ワークショップは中高生を対象とした2日間の講座となっており、中学生・高校生が航空の分野に興味を持ち、これからの航空技術の発展に貢献する人材になってもらうべく企画したものといいます。