東京都内で23区よりも道路整備が進んでない多摩地区では、路線バスが行き違いも難しいような細道をゆく区間がいくつも存在。今回は多摩の入口、吉祥寺エリアの路線を紹介します。

23区より遅れた道路整備 バスは細道をゆく

 路線バスのなかで、とりわけ細い道をゆく路線は「狭隘(きょうあい)路線」と呼ばれ、高度な運転テクニックが見られることから、バスファンのあいだで注目される存在です。地方の山道などなどはもちろん、都市部の駅付近や、住宅地などに見られます。

 東京で23区よりも道路整備が進んでいない北多摩地区では、そうした狭隘区間を行き来するバス路線がいくつも存在。今回は23区に隣接する多摩の玄関口にしてバスの一大ターミナル、吉祥寺駅に発着する路線を紹介します。

吉祥寺駅公園口(武蔵野市)

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吉祥寺駅公園口。駅の階段の目の前でバスから次々と客が降りていく(乗りものニュース編集部撮影)。

●経由するバス
・小田急バスを中心に多数

「はーい、バス通ります!」。沿道に複数人配置された誘導員の掛け声とともに、バス車体からも「バスが通ります、ご注意ください」との放送が流れ、バスが次々と人込みの中を進んでいく--これが吉祥寺駅公園口(南口)の日常です。

 23区に隣接する吉祥寺駅は八方からバスが集まる東京有数のバスのターミナルです。西武バスと関東バスが発着する北口にはロータリーがありますが、南口はロータリーがありません。井の頭公園方面などから到着したバスは、井の頭通りから「パークロード」と呼ばれる細い商店街へ入り、駅の階段の目の前に停車し乗客を下ろします。

 出発便は、井の頭通りにある路上の乗り場から発車しますが、折り返すスペースがないため、到着から出発に至るまでの回送ルートを変えざるを得ないという側面があります。

武蔵野市はパークロードを通るバスルートを廃止したい考えで、吉祥寺駅南口の再開発計画を打ち出しているものの、この状況は当分続きそうです。

すぐそばに広い道があっても…

 新しい道ができても、昔ながらの路線は生活に根付いています。

柳沢駅通り付近(西東京市)

●経由するバス
・西武バス「吉63」(吉祥寺駅~保谷駅)

「吉63」は吉祥寺駅と保谷駅を結ぶ路線のひとつ。吉祥寺駅から青梅街道を経由し、4車線の都道「伏見通り(調布保谷線)」が交わる東伏見交差点で青梅街道から右折しますが、バスが入っていくのは伏見通りではなく、その脇(斜め右上)に接続している旧来の都道。さらに進み西武新宿線 西武柳沢駅東側の踏切を過ぎると、一気に道が狭まります。踏切に近いうえ、最狭隘箇所はバスのすれ違いも困難なため、朝には詰まりがちです。

そこバス入ってくる!? 東京多摩の「狭隘バス路線」 駅から激セマ【吉祥寺エリア】
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吉63。西武柳沢駅の東側が極端に狭い。一般車もバスも双方向通行(乗りものニュース編集部撮影)。

 調布保谷線経由で三鷹駅と保谷駅を結ぶバスも運行されていますが、地域の拠点である吉祥寺駅に発着することもあり、旧来のルートを行くこのバスの乗車率は高めです。また保谷駅に近い区間も道が狭いうえカーブが多く、バスやトラックが通行に難儀する姿が見られます。

そこバス入ってくんですか!

 幹線道路から一歩入って狭隘区間を行くバスもあります。

向台町五丁目付近(西東京市)

●経由するバス
・関東バス「吉73」吉祥寺駅~向台町五丁目、「境12」武蔵境駅~向台町五丁目 ほか

 JR中央線と西武新宿線のちょうど中間、西東京市の南部(旧田無市)の住宅街にあるバスの折り返し拠点です。といっても、狭隘な一方通行路の途上に設けられており、来た方向に戻る運用はありません。

 このバス停がある「鈴木街道」は、花小金井駅方面へ通じる関東バスのルートですが、非常に狭いうえ曲がりくねっています。向台町五丁目のやや西側(上向台付近)では、ほぼ同じ道幅で双方向通行となる箇所もあります。

そこバス入ってくる!? 東京多摩の「狭隘バス路線」 駅から激セマ【吉祥寺エリア】
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向台町5丁目に停まる関東バス吉73。手前の鈴木街道を走る(乗りものニュース編集部撮影)。

 同じ向台町のすぐ近くには、旧IHIの工場跡地を再開発した大型分譲マンション「ヴィーガーデン西東京」があり、吉祥寺駅や武蔵境駅から狭隘区間を通らない直行系統も運行されていますが、古くからある向台町五丁目に発着する系統も利用者は多いです。

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