いまや乗員1人に対し2本分以上は当たり前--クルマの内装でドリンクホルダーの数が近年増えてきました。なぜここまで増えたのでしょうか。
近年のクルマは昔と比べて、ドリンクホルダーなどの小物入れの数が増えています。たとえば、先代のホンダ「ステップワゴン」は2列目のシートバックテーブルの“穴”を含め、ドリンクが入る収納が17か所。スズキ「クロスビー」も13か所。ダイハツ「ロッキー」/トヨタ「ライズ」などは“フロントシート周りだけで”ドリンクホルダーが最大8か所、つまり1人あたりドリンク4本分が確保されているほど。
ダイハツ「ロッキー」。運転席と助手席エアコン吹き出し下に収納式ドリンクホルダーあり。フロントのドアポケット(左下)はドリンク2本の想定(画像:ダイハツ)。
自動車メーカーからは、「小さい子を持つ人や女性の顧客を中心に、細かな収納があると商談上有利になる」「“ドリンクも入れられる収納”も含め、最近の車種では乗員1人につきドリンク2本分以上は確保している」といった声があります。
これは日本に限らないようで、ウォールストリートジャーナルは2018年の記事で、スバルが北米で販売している「アセント」のドリンクホルダー19か所が最多ではないかと考察しています。輸入車に詳しい人からは、「あれほどドリンクホルダーが少なかったフランス車ですら増えている」との意見も。
ドリンクホルダーなどの細かな収納が増えた背景には、クルマ自体の変化も関係しています。
もちろん車種によって収納の多い少ないはあるものの、カー用品店では、社外品のドリンクホルダーも多数見られます。用品メーカーのカーメイトによると、「車内に“穴”は増えましたが、その穴を活用して(ドリンクホルダーを)2つにするような商品もあります」とのこと。足りない人にはまだ足りない……のかもしれません。
ドリンクホルダーに「ドリンク以外」もいろいろドリンクホルダーが増えてきたことには、社会の変化もあります。これに関しても、カーメイトは、「コンビニでカップコーヒーの販売が始まったり、高速道路のSA・PAにスターバックスなどが出店してきたりした時期にいち早く、カップコーヒーに対応した商品を打ち出してきました。大きな紙パックのドリンクが流行った時期もあって、その際も対応しましたね」と話します。
また、ドリンクホルダーに入れるのが必ずしもドリンクとは限りません。たとえばカップ型の空気清浄機(ナノイー発生器など)。これは近年、純正オプションとして用意されるケースもあります。
このように社外のカー用品として登場したグッズの機能を、自動車メーカーが内装に落とし込んでいく流れがあるそう。たとえば、エアコン吹き出し口のドリンクホルダーや、後部座席のトレイ、USB電源などが挙げられるといいます。

カップ型空気清浄機の例。ちなみに、写真の先代プジョー308は、フロントのドリンクホルダーがこの1か所だけ(乗りものニュース編集部撮影)。
そうした収納類も、最近はさらに変化しているようです。たとえば2022年発売の新型ステップワゴンでは、実はドリンクホルダーの数が15か所に減っています。
運転席と助手席のエアコン吹き出し口下の“穴”は、スマホが置けるようなミニトレーに変更されつつも、吹き出し口下のドリンクホルダーは収納式として確保。しかしながら、3列目ドア側に3つずつあった“穴”のひとつは電源に変わったため、ドリンクホルダーの総数としては減少したのです。
一部の“穴”をトレーにする動きについてカーメイトは、ディスプレイオーディオにスマホのツールを連動させる動きを指摘。スマホの画面は見ないようトレーに置き、モニターと連携させるため、トレーのようなスペースは今後も増えていくのではといいます。