かつてアジアの大空港では、乗り継ぎ客むけの拠点空港化などをめぐり競争が繰り広げられ、各空港が発展してきました。現在も拡張が続く香港国際空港も同様です。

これにより「過去の競争」が再燃する可能性も否めません。

2024年にはフル体制に

 2022年に第3滑走路がオープンしたのが、香港国際空港です。アジアではこれまで、おもに乗り継ぎ客むけの拠点空港(ハブ空港)としての地位などをめぐり、各国の巨大空港が国際的な競争を繰り広げてきました。香港国際空港とともにこの一角にあったのが、2029年春に新滑走路ができる予定の成田空港です。香港国際空港の拡充は、いずれハブ空港を巡る国際競争への関心を再び呼び起こすかもしれません。

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香港国際空港の駐機場。多数のキャセイ・パシフィック機がターミナルビル前に止まる(加賀幸雄撮影)

 香港国際空港がオープンしたのは、香港が英国から中国へ返還された翌年の1998年7月6日。第3滑走路の建設が始まったのは2016年です。建設費は1415億香港ドル(1香港ドル=18.15円として約2兆5682億円)に上るといわれ、約4か月前の7月から既に試験的に使い始め、2022年11月25日に本供用が始まりました。

 3本の滑走路による年間発着数は、IATA(国際航空運送協会)の予測によると、2030年に60万回以上となります。同空港では、第3滑走路の使用開始にともなって、中央の滑走路は閉鎖し2024年まで大規模修繕に入り、第2旅客ターミナルビルも改装のため2024年まで閉鎖されているということです。

つまり2024年からはターミナルと3本の滑走路を使い、多くの旅客をさばくことができる体勢がフルに整うわけです。

「日本の空港負けるぞ?」の声は過去にも

 一方、成田空港で2本目の滑走路の建設がようやく始まった1999年から2000年代初めにかけて、日本ではアジアの空港建設ラッシュに取り残されるのでは、と懸念の声が上がったこともありました。

 このとき、香港国際空港も羽田と成田両空港の競争相手と見られていました。しかし、2014年の反政府デモ(雨傘運動)や、今年6月末に成立3年を迎えた「香港国家安全維持法」に見るように、中国政府が返還前の香港の態勢を維持するのかという懸念もささやかれ、香港自体の行く末は現在を含めて憂慮されています。

 ただ、第3滑走路や2022年11月に開業した、第1ターミナルビルとサテライトを結ぶ超巨大なガラス張りの連絡橋「スカイブリッジ」に表れるように、香港国際空港の拡充は続き、空港を通した香港の活況は続きそうです。

成田の地位を脅かす? 大拡張中の「香港国際空港」迫る本気オープン よぎる“アジアの大空港”争いの記憶
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成田空港。今後拡張が予定されている(乗りものニュース編集部撮影)。

 筆者が香港を訪れた2023年6月、第1ターミナルビルには、第3滑走路に加えて隣接する国際展示場など空港周辺の開発計画を示す大きなボードが置かれていました。

 香港に向かう機内で、隣に座った北京の金融関連企業に勤めるという中国人男性は「日常生活で香港人が使うのは広東語のまま。北京語はほとんど通じない」と語りました。中国返還前は、広東語は北京語に取って代わられ潰えるのではないかと言われていました。しかし、今も “街の公用語”のままです。

 使われ続ける広東語と同じように、香港が繁栄し続けるため、重要な手段となる香港国際空港の整備が続くのも間違いありません。

同時にそれは、アジアの空港間競争の再燃も示しています。

 羽田空港と成田空港の発着数を合わせて年間100万回にするめどがついたことで、日本では空港整備の議論自体は一休みした感があります。しかし、さらに発展が続く香港国際空港の現状を見ていると、将来、また「アジアのハブ空港の国際競争に、日本の空港が取り残される」という声があがる可能性は、皆無とはいえないでしょう。

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