2023年現在も現役であるU-2「ドラゴンレディ」は、操縦が難しいことで有名なアメリカ空軍の偵察機です。高高度の偵察性以外、全てを省みない同機は、ある意味で軍用機にあるまじきピーキーさです。
2023年現在も現役であるU-2「ドラゴンレディ」は、操縦が難しいことで有名なアメリカ空軍の偵察機です。
低空を飛行するU-2(画像:アメリカ空軍)。
なぜそこまで難しいかというと、高度約2万mからの超高高度で長時間の偵察飛行をするため、機体の構造そのものが原因です。軽量化を徹底した結果、降着装置が胴体前部と後部の2か所にしかないため、離陸時には翼の両端に地上から離れる際に外れる補助輪をつけ滑走します。
着陸時はもっと大変で、主翼方向はおろか前方さえも長いノーズのせいで視界が遮られるため、地上で待機していたチェイスカーによる着陸のサポートが必須となっています。
しかも、高高度に上がって偵察任務をしているあいだも、機体構造が脆弱なため、スピードを上げすぎると機体が自壊する危険があり、失速ギリギリで上昇しなければなりません。そのため、世界一操縦が難しい航空機ともいわれ、この機体を飛ばせるパイロット資格を得た者は1955年の初飛行以来、わずかしかいません。
さらに、こうした難しい操縦を、宇宙飛行士と同じような与圧服を着用して行う必要があるというオマケ付きです。食事も宇宙食と同様チューブを使って摂取し、また排尿もチューブで行います。
2023年の中国気球追跡でも活躍!東西冷戦終了以降は、その役割はじょじょに小さくなり、アメリカ軍でも偵察の役割は、軍用のドローンや無人機などがテロ組織を探し当てるケースにシフトしていました。しかし、2023年2月頃から騒動になり始めたアメリカ領内に侵入した中国製の気球の追跡には、まさかの気球のさらに上空から監視するという、U-2くらいにしかできない偵察をやってのけ、未だ優れた性能を有していることもアピールしました。
実はこの機体は、面白い逸話も持っています。
銀色に光る初期のU-2(画像:アメリカ空軍)。
1950年代にロッキード(現:ロッキード・マーチン)と、アメリカ空軍、CIA、NASAなどがU-2のテストに共同で取り組んでいた頃、同機のような超高度まで上がる偵察機はありませんでした。そのため、「公には存在していない基地」「当時としてはありえない高高度を飛ぶ飛行物体」という要素と、テスト機時代の同機は無塗装アルミボディむき出しだったため、「やたら太陽光を反射する機体」という要素が合わさって、UFOと誤認された可能性があるようです。

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