エアバスの旅客機「A320neo」の一部に搭載されているエンジンで、不具合が予想より拡大することが明らかになりました。過去の同様の事例から、この影響がどう波及するのかを見ていきます。
米航空宇宙・防衛大手RTX(旧レイセオン・テクノロジーズ)傘下のプラット・アンド・ホイットニーが製造する、エアバスの旅客機「A320neo」向けのエンジンPW1100G-JMに見つかった不具合が、予想より拡大することが明らかになりました。このことで、航空業界にどのような未来が予想されるのでしょうか、
エアバスのA320neo。プラット&ホイットニー製エンジン搭載モデル(画像:エアバス)。
RTXなどによりますと、PW1100G-JMは高圧タービンディスクなどの製造に使われた金属に問題があり、運航を続ければ亀裂が起きる恐れがあるとのことです。
PW1100G-JMは、「GTF(ギア―ド・ターボファン)」とも呼ばれる特有の機構をもち、高い経済性がウリ。リージョナル機から小型旅客機まで広く使われています。今回点検が必要なのは、2015年から2021年の間に生産された約3000基と言われています。これにより2024年前半には、世界で最大650機のA320neoが一時的に運航できなくなる可能性があります。
日本では2023年9月現在、全日空(ANA)がA320neo、ならびに胴体延長タイプのA321neoの計33機で、このエンジンを搭載しています。現在これらの機体の運航には影響は出ていませんが、もし問題があったエンジンを搭載していたことで運航停止となってしまった場合、これらの機体が担当するANAの地方路線や一部国際線に影響を及ぼす可能性も否定できません。
こうしたエンジントラブルで国内航空会社が被害を被ってしまったケースは、今回が初めてではありません。
今回の問題で筆者が思い出したのは、2010年代中ごろにボーイング旅客機「787」むけのとあるエンジンで不具合が起きた問題です。
ANAのボーイング787(乗りものニュース編集部撮影)。
不具合は、エンジン内部で高速回転するタービンのブレード(羽根)の腐食を防ぐコーティングが不十分で、これによりブレードが破断し、離陸後に引き返す事態が生じたためでした。点検と改修のため、問題のエンジンを搭載した787を運航していたANAでは、1日に10便程度が欠航することになりましたが、新たに点検が必要なエンジンも増えてしまい、結局、2年後も欠航が続く結果となってしまいました。
これらの787はエンジンが取り外され、羽田空港では旅客ターミナルビルから外れた南側の駐機場に並べられていました。誘導路を走る旅客機からも見ることができました。
航空機はエンジンも含めて、一定の飛行時間ごとに整備と点検が義務付けられています。しかし、航空会社は利益を上げるため整備と点検以外は極力、飛行機を飛ばし、長い時間の駐機を避けます。そのようななかで長い間、運航停止を強いられたANAは、かなりの痛手を負ってしまったことでしょう。
今回のPW1100G-JM、海外での報道を見ていると、改修の必要性と共にRTXの株価下落への言及を多く見ます。即断はできないものの、この状況からすると、航空会社の減便が最も大きい関心ごとになるまでには至っていないと想像できます。
プラット・アンド・ホイットニーは現在、どれほどの製造期間でのエンジンで不具合の恐れがあるか、製造工程の何が原因だったのかを確認し続けているでしょう。

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