国の審議会で「自動物流道路」なる構想が浮上しています。人が荷物を運ぶのではなく、荷物そのものが自動で配送される仕組み。
国土交通省は2023年10月24日、道路政策を話し合う有識者審議会「第59回国土幹線道路部会」を開催。将来的な「高規格道路ネットワークのあり方」について、中間とりまとめ案が作成されました。
この中間とりまとめに、道路空間を活用した「自動物流道路」なる新たな構想が盛り込まれる見込みです。
高速道路を走る物流トラック(佐藤 勝撮影)。
「我が国においても、構造的な物流危機への対応、温室効果ガス排出削減の切り札として、自動車に頼らない新たな物流形態として、道路空間をフル活用したクリーンエネルギーによる自動物流道路(オートフロー・ロード Autoflow Road)の構築に向けた検討を進めていく必要がある」
中間とりまとめ案にはこう記されています。その参考として挙げられているものの一つが、スイスの「地下物流システム」。同国では、地上のトラックが運ぶ貨物の一部を地下へ移転させる構想が実現へ動き出しています。
スイスの主要都市間に総延長500kmに及ぶトンネルを構築し、自動運転専用カートを24時間体制で運行。速度30km/hの自動運転カートのほか、別途、トンネル内には60km/hの小口梱包専用レーンも設ける計画です。トンネルは地下20~100mに設けられ、直径は6m。小さなトンネルのため道路トンネルよりもはるかに低コストになりそうです。
地下物流システムは2026年に建設を開始、2031年から運用、2045年には全線完成という計画だそうです。建設費は約5兆円(約330億スイスフラン)で、民間資金により実施するそう。全線開通後は、大型貨物車の交通量を40%削減できる見込みだといいます。
建設の背景には、貨物交通量が2040年までに約4割増加し、トラック輸送が限界を迎える見込みがあること、一方で貨物車の積載効率が低下し、非効率になっていることが挙げられています。
日本ではどうなる?さて、これが日本でどう展開されるのか。中間とりまとめ案では次のように書かれています。
「海外においては、(中略)都市間の輸送においては人が荷物を運ぶという概念から、人は荷物を管理し、荷物そのものが自動で輸送される仕組みへの転換を図ろうとしている」
「既存の高速道路空間を最大限活用するとともに、徹底した省人化を図り、低炭素なシステムとするなど、諸外国にも倣いながらシステムとしての必要な機能や技術、その実現に要する期間等を明確にして検討を進める必要がある。特に、ハブ機能を持つ物流拠点の配置や配送に至るトータルの物流サービスを提供する視点から、ロジスティクス改革への貢献を考えていくことが重要である」
さらに、通常であれば30~50年かかるパラダイムシフト的な大事業になるものの、逼迫する物流需要を踏まえれば「10年で実現する気概を持って」と書かれています。
必要性は明記されたものの、その姿がどうなるかは、まだ未知数と言わざるを得ません。これまでの審議会では、海外事例や国内の過去の構想などが再び取り上げられています。もしかすると“道路”ではない可能性もあります。
矢印が外環道に構築された土砂運搬用ベルトコンベア。
たとえばイギリスでは、鉄道の敷地を活用して直径1mのパイプを敷設し、そのなかで低コストのリニアモーターを使用した自動運転車両を走らせる「Magwayシステム」の実現へ向け、許認可に動きだしているそう。これも道路輸送の代替手段として紹介されています。また、外環道のトンネル工事の掘削土を運ぶため、外環道本線の空間を利用して設けられたベルトコンベア(稼働中)も、物流システムと見ることもでき、審議会で取り上げられています。
物流の幹線を担う、トラックでもフェリーでもないシステムがどのような姿になるのか、今後注目したいところです。

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