JALグループのLCC、スプリング・ジャパンには、航空機の地上支援スタッフ「グランドハンドリング」から、地上係員に配置転換したスタッフがいます。空港の“裏方”から接客の最前線へ、彼らは全く異なる職種にどのように対応したのでしょうか。

2022年まで貨物の積み込みや客室のセッティングを

 JAL(日本航空)グループのLCC(格安航空会社)、スプリング・ジャパンで働く地上係員(グランドスタッフ)には、驚きの転身を遂げたスタッフたちがいます。彼ら・彼女らは2022年まで、JAL便などの貨物の積み下ろしなどを行う、地上支援スタッフ「グランドハンドリング」として駐機場で働いていたのです。

 乗客と接することはなく、発着する旅客機を陰で支える業務から、乗客たちと面と向かって対応を求められる業務へ――。かけはなれた業務を担うこととなった2人のスタッフに聞きました。

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上がJAL機の貨物搭載のイメージ。下がスプリング・ジャパン機(乗りものニュース編集部撮影)。

 話を伺ったのは、JALグループの航空支援業務を担当するJGS(JALグランドサービス)の岩村昴樹さんと木津谷武彦さんです。岩村さんは2022年まで、トーイングトラクターを運転し乗客の貨物の積み下ろしを行い、木津谷さんは機内で乗客が使用するアイテムを載せていたほか、客室を清掃する仕事をしていたそうです。

 そのようななか、JGS内の新プロジェクトの一環として、彼らはスプリング・ジャパンの地上係員への配置転換の提案を受けます。そのときの経緯や苦労を、ふたりは次のように話します。

「実から学生時代のアルバイトも接客業をしており、実は就職活動のときも地上係員を第一志望で目指してしたんですが、ご縁がなくて。でも飛行機を通じてお客様とつながる仕事がしたいという思いでグランドハンドリングをしていました。

会社から地上係員職への提案を受けたときは、まったくマイナスの気持ちを持つことはなかったです。とはいえ最初は大変でしたけど、慣れるにつれて楽しくなりましたね」(岩村さん)

「私は専門学校を卒業し、20歳になるころにJGSに入って3年目なんですが、大学卒のグローバル職の方々と比べて、英語力にはかなりの差を感じており、英語で話しかけれても『なにをいっているのか分からない』状況からのスタートだったんです。最初の1か月は、本当に苦労しました。そのようななか、JALスカイの上司の方などに『わからなくてもいいから、徹底的に親身に聞く姿勢を貫く』ということを根気強く教えてもらいました」(木津谷さん)

まったく異なる職種&客層へどう対応したのか?

 また、JALグループとはいえ、スプリング・ジャパンはいわゆるLCC。座席を乗客好みに合わせ選ぶことや、定められた重量以上の手荷物を預ける・持ち込むということは、追加料金を要するオプション扱いとなり、その部分はフルサービスキャリアであるJALより、はるかに厳格な基準を求められます。

 そのうえ、スプリング・ジャパンは中国からの訪日需要をメインターゲットとした航空会社です。そのため、日本語・英語はもちろんのこと、中国語での対応を求められるほか、客層もJALのような国内フルサービスキャリアとは異なります。そのようななか地上係員として勤務する2人は、業務のなかで印象的なエピソードを次のように話します。

「去年まで機内清掃員でした」裏方→接客の最前線へ 異色の配置転換を切り抜けたJALグループ社員の“適応力”
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JGSの岩村昴樹さん(乗りものニュース編集部撮影)。

「日・英の2か国語はもちろん、中国語を話せないとハナシにならないと考えて、大学のときにさわりだけ学んだ中国語を学び直しました。中国語を話せるスプリング・ジャパンの方をはじめ、まわりの方に『この言葉をどうやったらうまく言えますか』と聞きました。英語の中国語読みをして『発音がわかりやすいね!』といっていただけたときは、結構うれしかったです」(岩村さん)

「以前、機内持ち込み荷物の重量制限を超えてしまって、『追加料金を払うなどの対応をしないと搭乗できない』お客様がいらっしゃいました。

それを本人に伝えたところ激昂してしまって、免税店のお土産を床に叩きつけ警察が複数人駆けつけてくる事態になったことがあるんです。そのお土産をひとつひとつ拾って、一生懸命慰めたところ、『また乗るね』という言葉といただけたことは印象的なエピソードですね」(木津谷さん)

※ ※ ※

 なお、彼らふたりは成田空港旅客サービス部門のスタッフを対象とし、2023年10月に実施された接客コンテスト「N-1グランプリ2023」に出場。JALの地上係員に引けを取らない高いクオリティの接客を披露しています。

 また、岩村さんによると、地上係員となった現在でも、トーイングトラクターの運転免許などは保持しているとのこと。将来的に、“地上係員とグランドハンドリングスタッフの二刀流”の出現は、珍しいことではなくなるかもしれません。

【映像】凄すぎる! これが「去年までグラハンだった」スタッフによる接客です
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