日本で導入した航空会社がなく、おもに他国の国内線で運航されていることから、レア機に分類される「ボーイング717」。珍しい形状を持つこの機に実際に乗ってみたところ、機内も独特でした。
日本の航空会社で長年多く採用されているのが、アメリカの航空機メーカー、ボーイング社の旅客機です。しかしそのなかで国内航空会社での導入歴がなかった数少ないモデルのひとつが「717」。胴体後部に2基のエンジンを備え、垂直尾翼最上部に水平尾翼が設置された「T字尾翼」を外観上の特徴とします。
今回、日本ではレア機に分類される「717」に乗ってみたところ、他モデルとは全く異なる特徴が各所に見られました。
ハワイアン航空のボーイング717(乗りものニュース編集部撮影)。
ボーイング717はボーイング社のライバル、マクダネル・ダグラス社のヒット作「DC-9」シリーズの系譜を組む「MD-95」として開発された旅客機で、開発途中の1997年、マクダネル・ダグラス社がボーイング社に吸収合併されたことで、型式名を「717」に変更したという珍しい経緯を持ちます。
ボーイング717の導入実績はなかった日本ですが、前身であるDC-9シリーズや、MD-80シリーズはTDA(東亜国内航空)や、その系譜をくむJAS(日本エアシステム)で導入していました。しかしJASは2002年に、ボーイング737を多数保有するJAL(日本航空)と合併、そののち経営上の理由や機材統一の観点から、これらのシリーズは全機退役しています。
2023年現在この機が運航されているのは、オーストラリアのカンタス航空グループや、ハワイアン航空など。717は短距離路線向けのモデルとして導入されたことから、距離のある日本に飛来してくることはほとんどないことに加え、機体も経年化が進んでいることから、運用中の機数も年を追うごとに減りつつあります。なお、カンタス航空グループも後継機の導入にともなって、20機ある717の退役を進めています。
そのようななか、いまだに多くの717を運航しているのが、ハワイアン航空。
そのような717の機内に入ると、まずシートの配置がほかの単通路機と比べても珍しい特徴的なものであることに気づきます。この機はビジネス、エコノミーの2クラス構成ですが、大多数の割合を占めるエコノミークラスが横2-3列の配置なのです。
エコノミークラスのシート自体は、短距離便で標準的なモニターやUSBポートなどがない薄型のものですが、緑色のカラーリングが特徴。足元の広さも通常の国内線仕様機とほとんど変わらなさそうです。
機体が動き出して感じるのは、滑走路まで向かう地上走行時のスピード感です。717は多くのジェット旅客機のようにエンジンが主翼の下に設置されていないことから、翼や胴体の位置が低く設定され、客席からも地面が地上に近く見えます。航空追跡サイト「フライトレーダー」によると、このときの地上走行時の速度は約40km/hだったそう。しかし体感ではもっと速く走っているように感じます。
その一方でエンジンが胴体後部についていることから、今回予約した前方席は他機にはない静かさが感じられます。客席を見渡すと前方席は埋まっている一方で、後方席はガラガラ。「717は前方が快適」というのを現地の方たちは知っているということでしょうか。

ハワイアン航空の717の機内(乗りものニュース編集部撮影)。
離陸滑走を始めるとこの「静かなのにスピード感が凄い」717特有の感覚はより顕著に。飛び上がると風切り音がほかのモデルより如実に聞こえます。エンジン出力を絞る着陸の際にはよりこの静かさが増し、旅客機というよりも、大きなグライダーに乗っているような不思議な感覚を味わえます。
後方に行くと全く異なる客室の印象&珍設備も?ドリンクサービスはお椀型のカップに入ったジュース、もしくは水から選ぶというもの。ボーイング717によるフライトは、ホノルルからマウイ島・カフルイまでの直線距離にして約160km、東京~静岡間を少しだけ上回る程度の距離を行き交うフライトなので、機内サービスが行える時間もわずか数分です。
化粧室前で他の乗客が出てくるのを待つ間、客室後部を巡ってみました。最後部の座席窓の前には、ジェットエンジンが迫っています。もちろん「ゴーッ」という巡航中のエンジン音は717の客室前方、ならびに他機種よりもはるかに大きく聞こえます。またエアコンの効き方や、気温も客室前方と後方では違う感じを受けます。この前後で全く異なる客室の様子も、717らしさのひとつといえるでしょう。
そして、胴体最後部に珍しいものがありました。

ハワイアン航空の717で提供されたドリンク(乗りものニュース編集部撮影)。
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日本では乗ることができない「ボーイング717」の客室は、国内で運航されている機種とはかなり異なるユニークなものとなっていました。日本からホノルルへは、ANA(全日空)が、特別な外装と機内仕様をもつ総2階建て旅客機「フライングホヌ」を就航させていますし、珍しい旅客機を“ハシゴ”してオアフ島以外に行くのも、航空ファンにとっては楽しめるものかもしれません。