航空会社のなかには、同じ型式で旅客機と貨物機の両方を運航するケースもあります。同じ型式の旅客機と貨物機では、操縦はどのように異なるのでしょうか。

搭乗前から違う!

 航空会社のなかには、同じ型式で旅客機と貨物機の両面を運航するケースもあります。同じ型式の旅客機と貨物機で、実は操縦にも違いがあるのだそうです。

実は結構違います!「旅客機と貨物機の二刀流」、操縦する側から...の画像はこちら >>

手前がANAのボーイング777F貨物機。奥がボーイング777旅客機(乗りものニュース編集部撮影)。

 とある航空会社に、たとえばボーイング777貨物機の場合、その乗務機会は5か月に1回程度。そこからパイロットそれぞれのエリア資格、空港資格の要件も勘案すると年2、3回乗るのが一般的ではないかといいます。

ではボーイング777のパイロットから見て、旅客機と貨物機(フレイター)はどう違うのでしょうか。

「777Fの場合、コックピットのスイッチは、旅客型の777と若干違いがあります。ちなみに777F貨物機の機内には、実は輸送関係者などが搭乗する場合を想定し、機体前方にお客様用のシートが4席備わっているのが特徴です」

 パイロットによると、違いは搭乗前からあるようです。国際線で泊まり用のスーツケースを持って行く場合、旅客便であれば乗客と同じくターミナルで荷物を預けるのが通常である一方、フレイターに乗る際は、荷物検査を受けた後にパイロット自らケースを駐機場まで持って行き、機側で搭載してもらうのが一般的なのだそうです。駐機場も、旅客ターミナルとは別のエリアにある貨物ターミナルを発着することも多くあるといいます。

貨物機は意外と気を使う?

 同パイロットによると、フライト前に事務所で行われる確認事項は旅客機、フレイターともに同じである一方、担当する飛行機についてからは差が生じるといいます。

 機内に入るとパイロットはフライト前に、消火器やライフベスト、救急用酸素ボンベなど客室内の非常用装備品が所定の位置、数量で搭載されているかを毎回確認するとのこと。これは旅客機だと、客室乗務員がチェックするのだそうです。

 また旅客便では、場合によっては翼の表面をパイロットが直接客室に出向き目視で確認することがある一方で、フレイターでは点検が必要な状況になった場合は一律で駐機場へ引き返し、再び作業を実施するとのこと。これは777Fの場合、飛行中にパイロットが貨物室に行くことが原則できないからだといいます。

 設定される飛行ルートは、旅客機、フレイターともに大きな差はないとしています。ただし、乗客の乗っていない貨物便は比較的揺れを気にしなくて済むため、ルートや高度選定は多少選択肢が広がるとも。

といっても、貨物の中には競走馬や絵画、高級車などが搭載されているケースも多いことから、基本的に大きな揺れを避けるというのは一緒だそうです。

 ただ、温度コントロールには、パイロットは細心の注意を払っているとも。

「777Fの温度調整は主貨物室前方と後方、そして床下前方と後方でそれぞれ別にコントロールが可能です。またメインデッキのエアコン流量は、2段階で調整できます。搭載貨物には、一部の医薬品や動物など細かい温度調整を求められるものもあり、そうした場合には事前に温度設定がパイロットに通知されます」