自分の前をノロノロ走る車のせいで、車線変更のタイミングや信号通過のタイミングを逸してしまうなど、ストレスがたまる経験は誰しもがあるはず。じつは、そのストレスをためない方法があるといいます。
法定速度以下で走る前方のクルマ。そのノロさのせいで路線バス・路上駐車車両などの追い越しや合流のタイミングを失い、結果的に後続車だけが「待ち」になってしまうことがあります。また、それまでノロノロと走っていた前のクルマが、前方の信号の変わり目で急にスピードを上げ、そのクルマだけが信号を抜けた結果、後続車が「信号待ち」になってしまうことも。
前方のクルマのノロノロ運転のせいで後続車がうまく追い越し・合流ができなかったり、信号に捕まってしまう際のモヤモヤ感は経験があるはず(画像:写真AC)。
「交通社会はみんなの社会」……頭ではよくわかっていることですが、気持ち的にはこういうノロノロ車に巻き込まれると、かなりモヤモヤします。このモヤモヤ、どのように気持ちを整理するべきでしょうか。
交通心理士で近畿大学物理工学部准教授の島崎敢先生は、まず、こういったノロノロ車に巻き込まれた際のモヤモヤ感は「自然な感情ではある」と言います。
「後続車の運転者の立場からすると、前方のクルマの影響で、何らかの『待ち』になってしまい、予定通りに進めない焦りやストレスを感じるのは自然な感情です。特に、それまでノロノロ走っていた前方のクルマが信号変更のタイミングで急加速して通過し、自分のクルマだけが信号待ちを余儀なくされるような状況では、より一層のモヤモヤ感を覚えることでしょう」
そこで、前方の運転者の運転状況や心理を想像してみると、少しはモヤモヤ感が薄れるかもしれないと島崎先生は話します。
「まず、前の運転者は、後続車の位置からは見えない状況や障害物を認識している可能性があります。例えば、前方に見えない歩行者や自転車がいる、あるいは路上駐車の車両から人が出てくる可能性があるなど、後続車の位置からは把握できない危険要因を察知しているため、後続車からは『行けるだろう』と感じられる状況でも『行かない』という選択をしている場合があります」
あるいは、運転に不慣れであったり、道路状況に不安を感じたりして、必要以上に慎重な運転になっている可能性も考えられるとのこと。
ただし、ここまでの島崎先生の話は、あくまでも前方の運転者に寄り添った見方。一方で、単にスマートフォンをいじりながら、あるいはボンヤリしながら運転するという怠惰な運転者がいることも事実です。こういった場合、とにかくモヤモヤが募るわけですが、その際の気の持ちように関してもポイントがあるようです。

「運転中にモヤモヤする場面は必ずある」と事前に認識し、時間にも心にも余裕を持ってハンドルを握るべきです(画像:写真AC)。
「モヤモヤを感じないためには、時間的なゆとりが重要になってきます。たとえば出発前に時間に余裕を持った計画を立てることです。時間に余裕があれば、多少遅い車に出くわしてもイライラせずにすむのではないでしょうか。
交通社会では、運転スタイルや技量に個人差があることは避けられません。重要なのは、そうした多様性を受け入れつつ、自身の安全で快適な運転を維持することです。焦りや苛立ちを感じることは自然な感情です。しかし、それが安全運転の妨げにならないよう、心にゆとりを持つことを心がけたいものです」(島崎先生)
ここまでの島崎先生の話を受け、むしろ「モヤモヤする場面は必ずあるのだ」「モヤモヤを許容できるほどの時間にも心にも余裕を持って、ハンドルを握るべきなのだ」と筆者は解釈しました。遅いクルマに巻き込まれた際、こんな風に考えると、少しは気持ちに余裕ができるでしょうし、より安全な運転にも繋がるようにも思いました。