大阪・関西万博会場へのシャトルバスのなかに、“特異な経路”を走るものがあります。そこは「建設中の高速道路」。
2025年4月13日(日)に大阪市の夢洲(ゆめしま)で、「EXPO 2025 大阪・関西万博」(以下大阪・関西万博)が開幕しました。10月13日(月)までの184日間の会期中、国内外から多くの観客が集まることが想定されています。
新大阪発の万博会場行きシャトルバス。将来的に淀川左岸線「豊崎入口」となるランプウェイを下りて本線へ。ここは手動運転(植村祐介撮影)。
ただ、この万博は、基本的にクルマ(自家用車)でのアクセスが認められておらず(障がい者除く)、鉄道での直接アクセスは夢洲駅まで延伸した大阪メトロ中央線に限られます。それ以外はタクシーを除くと、JR桜島駅をはじめ近隣駅、大阪市外内の拠点駅からのシャトルバス、あるいは遠方から万博会場まで乗り入れる高速バスなど、バスがメインです。
実はそのなかに、「特異な経路」を走るものがあります。
今回は阪急観光バスが運行する新大阪駅からのシャトルバスを利用してみました。このルートは建設途中の阪神高速「淀川左岸線2期」区間の「豊崎出入口~海老江JCT」を経由します。
きっぷは全便予約が必要で、予約手続きはスマホアプリ「KANSAI MaaS」で行います。乗車の前日、14時30分発の自動運転バスを予約し、運賃1500円をアプリ上でカード決済し、当日に備えました。
新大阪駅の乗り場は、JR中央口改札から北口に進み、通路で連絡する新大阪阪急ビルの1Fにある「阪急高速バス新大阪ターミナル」です。乗り場の係員にKANSAI MaaSアプリの予約情報を見せ、利用客名簿と付き合わせた上で乗車します。早めに到着したことで、運良く運転席すぐ後ろのシートを確保することができました。
シートに腰を下ろしてすぐ目に入ったのが、運転席上部に設置された2枚の大型ディスプレイです。左のディスプレイには自動運転/手動運転の各種ステータスが、右のディスプレイには自動運転のセンサーが関知した車両周辺の情報が投影され、“ふつうのバス”との違いが感じられました。
「作りかけの高速」入口は一旦停止 そこからアトラクション!?バスは定刻にターミナルを出発し、右折を繰り返して「宮原1」交差点からスロープを上がり、「新御堂筋」に入ります。そのまま「新淀川大橋」を渡り、淀川左岸に着く手前でパイロンに囲まれ、係員が待機した分岐へと左に進路を取ります。ここが将来的に「豊崎入口」となる場所で、いまは万博のシャトルバスのみが通行を許されています。

広大な夢洲第1交通ターミナルは、万博西ゲートまですぐ。
バスはパイロンの間を縫うように走り、“暫定供用”された淀川左岸線2期区間へのスロープを下りていきます。そして本線に合流する手前、「一旦停止」のサインと遮断機のあるゲートの手前で停止します。ここでドライバーから「これから自動運転に入ります」とアナウンスがあり、自動運転のスタートです。
なお今回の自動運転は技術的には「レベル4相当」となっていますが、法令上は「レベル2」のため、ドライバーが運転席に乗車し、ハンドルから手を離しながらも手動介入に備える形になっています。
淀川左岸線2期区間はほぼ直線ですが、ところどころで右左に緩やかにカーブします。バスは車体外部に搭載した「LiDAR」「カメラ」「磁気マーカーセンサー」で周囲の状況や路肩に埋め込まれた磁気マーカーを検知しながら、そのカーブに沿って滑らかに走って行きます。
ただ今回はシャトルバスを通すための暫定供用ということもあり、道路や周辺の構造物は、各所で工事途上をうかがわせる状況が続いています。完成形は、ほぼ全線がトンネルとなる予定ですが、いまは一部地上、一部トンネルとなっています。
バスはこの暫定供用された区間を順調に約5分間走ったのち、海老江JCTの手前で、ドライバーからアナウンスがあり、自動運転が終了しました。
ここからは手動運転で海老江JCTの左カーブを上がっていき、供用済みの淀川左岸線(1期)に合流、「北港JCT」直下にある「淀川左岸舞洲出口」から一般道へと流出します。
そしてしばらく一般車に混じって走り、「夢舞大橋」を渡ると、会場西ゲート前の「夢洲第1交通ターミナル」はもう目の前です。
短い時間のバス乗車でしたが、混雑しがちな大阪駅北側の市街地を約5分でショートカットできる淀川左岸線2期区間のポテンシャルを実感できました。開通後はいわゆる“キタ”の交通状況の改善に大きく貢献しそうです。
一方自動運転については、ハンドルの切りはじめに左右のGの立ち上がりをわずかに強く感じるところがありました。しかしそれはこちらが「自動運転だから」と身構えていたからこそ感じたものかもしれません。全般的には非常にスムーズで、不安感はまったくありませんでした。
東海道新幹線、山陽新幹線から大阪・関西万博会場へは、この新大阪駅からのシャトルバスが最短ルートとなります。淀川左岸線2期区間をひと足先に走ってみたい人、最新の自動運転バスを体感したい人も、利用を検討してみてはいかがでしょうか。