前を走るクルマとの間隔を「距離」ではなく「時間」で計る方法があります。高速道路で事故や渋滞を予防するために、車間距離ならぬ車間「時間」を約2秒キープしてほしいと、NEXCO東日本は呼び掛けています。
前を走るクルマとの間隔を「距離」ではなく「時間」で計る方法があります。高速道路で事故や渋滞を予防するために、車間距離ならぬ車間「時間」を約2秒キープしてほしいと、NEXCO東日本は呼び掛けています。
混雑した道路では車間距離がつまりがち。写真はイメージ(画像:PIXTA)
車間距離は「100km/hなら約100m必要」といわれることがありますが、このように速度(km/h)と同じ数字で車間距離(m)を確保する方法が見直されつつあります。
高速道路と自動車交通に関する調査研究を行う高速道路調査会(東京都港区)が2017年にまとめた報告書によると、100km/h走行時に100mの車間距離を空けると「逆に割り込みによる安全性や快適性が阻害され、混雑した状況では守られていないのが実状」といいます。
そのうえで、不十分な車間距離は追突事故や渋滞の要因になるものの、交通実態に合わない車間距離の確保を促すことは、交通規則全般に対する信頼や順法意識を損なうことにもなりかねないと指摘しています。
そこでこの報告書では、車間距離は「距離」ではなく「時間」で計る方法を推奨。前を走るクルマが、標識の柱といった目印を通過した時点から、自分のクルマがその目印を通過するまでの時間を計るというものです。
推奨される時間は、混雑時には約2秒、減速に時間がかかる大型車などは3秒以上が目安といいます。ただし2.5秒を上回ると、割り込みされやすくなるそうです。また、初心者や高齢者、ABS(アンチロックブレーキシステム。急ブレーキ時などにタイヤがロックするのを防ぐ装置)が装備されていないクルマは、反応時間の遅れや減速時間が延びる懸念があり注意が必要だとしています。
NEXCO東日本はこの約2秒(大型車は約3秒)を、前の車に追突しないための「車間時間」としてアピールしています。追突事故を防ぐのはもちろん、適度な車間がクッションになり後続車に減速やブレーキが連鎖するのを防げるため渋滞の予防にもつながります。
そのため混雑時は、「つかず・離れず」の約2秒の間隔キープを心掛けるよう呼び掛けています。
ただし、積雪や凍結、悪天候時はそれ以上の十分な車間時間をとる必要があります。
「2秒」のユニークな数え方高速道路調査会によると、このように車間距離を時間で捉える方法は世界中で見られ、特に欧米では一般的といいます。

高速道路では車間距離確認標識(矢印)も設置されている(画像:PIXTA)
必要とされる車間時間は国によって異なりますが、2010年開催の欧州道路管理者会議では「2秒」、または「時速(km/h)の半分の数字の車間距離(m)」が、特に適用できるルールと結論付けられたそうです。後者なら、車間距離は「100km/hならば50mでOK」ということになります。
なお、車間時間2秒の「数え方」も国によって様々。例えばポルトガルでは「um crocodilo, dois crocodilos(ワニが1匹、ワニが2匹)」と唱えると2秒に相当する、といった語呂合わせによる方法が紹介されています。
日本でも同様の方法が複数の警察から提案されています。埼玉県警は「0、1、0、2(ゼロ、イチ、ゼロ、ニ)」。「0(ゼロ)」をあえて2回加えて2秒間になるよう調整しています。
また、高速道路調査会は、例えば童謡『あめふり』の冒頭「♪あめあめふれふれ」の部分を歌うと、2秒を数えられるとしています。
ちなみに「100km/hなら約100m必要」という車間距離の目安は、昭和40年代に東名高速が開通した際、当時の日本道路公団が作成したパンフレットでそう説明され、これが1978(昭和53)年、国家公安委員会の作成した「交通の方法に関する教則」に取り入れられて広まったものとされています。
ただ、この目安について高速道路調査会は、「昭和40年代と比較して、自動車の性能向上により安全性が確保され、交通量が著しく増加した現代では、理想と現実が乖離(かいり)」していると前出の報告書で指摘しています。