スクーターの代名詞的な存在であり、世界中で愛されるベスパ。1990年代には日本でもベスパブームが巻き起こり、国内メーカーからも「和製ベスパ」ともいえるスクーターが登場しました。

それらはどのようなスクーターで、現在はどうなったのでしょうか。

「ベスパやん!ん?」ホンダもスズキも

 イタリアのピアッジオ社が開発した世界で最も有名なスクーター、ベスパ。日本では1990年代に爆発的なブームになりました。そんな空前のベスパブームを見越してか、国内からも「ベスパっぽい」原付が現れます。

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1998年リリースのスズキ・ヴェルデの初代モデル。全体のデザインはもちろんロゴの「V」もベスパゆずり(画像:スズキ)

 ホンダはベスパに似た造形のスクーター「ジョルノ」を1992年にリリース。そのジョルノがヒットすると、1998年にはスズキからも、やはりベスパに似た造形の「ヴェルデ」が登場しました。

 ジョルノのリリース時の謳い文句は「シンプルでエレガントなスタイルのお洒落なメットインスクーター」。フロントのレッグシールドからリアにかけてのデザインはベスパのそれを意識しているのは明らかで、本家・ベスパと信号待ちで並んだ際、少々肩身の狭い思いをするようなスクーターではありました。

 しかし、ジョルノをチョイスしたユーザーは、「ジョルノ自体の性能、使い勝手の良さがイイ!」と、ベスパ云々とは関係なく乗っていた印象もありました。結果的に、「和製ベスパ」としてではなく、ジョルノとしての価値が高まっていき、1999年にはカブのエンジンを備えたジョルカブや、排出ガスクリーン化を実現させた4ストモデルのジョルノクレアなどの進化モデルも登場。

 近年ではタイホンダによる排気量125ccのジョルノ+(プラス)が登場するなど、33年以上に及ぶロングセラーモデルになりました。

レッツのモッズモデル? スズキ「ヴェルデ」

 リリース当初こそ「ベスパの模倣品」「和製ベスパ」と揶揄されることもあったホンダ・ジョルノが、その品質と使い勝手によって相応の支持を集めたことを受けてか、1998年にはスズキもベスパ風のスクーター「ヴェルデ」をリリースします。

信号待ちで並ぶと肩身狭い? ブームに乗じた「和製ベスパ」たちが「カッコいいじゃん!」になるまで
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本家ベスパ。時代に応じてスタイルも変わってきた(画像:PIXTA)

 1996年登場のスクーター「レッツ」シリーズのエンジンを採用し、性能・信頼性も評価され、やはりヒットに至ります。その結果、ホンダ・ジョルノ、スズキ・ヴェルデ、そして「ベスパ由来」とは言い切れないもののクラシカルなデザインを取り入れたヤマハ・ビーノ(1997年)の3モデルによって、日本のレトロ調スクーターが出揃いました。

結果的に「スクーター界のネオクラ」誕生!?

 スズキ・ヴェルデは2004年モデルを最後に生産終了となりますが、前述の通り、ホンダ・ジョルノ、そしてヤマハ・ビーノは現在までロングセラーを続けており、これらによって「ネオクラシックスクーター」というカテゴリーが確立されたと言っていいでしょう。

 当初は、ベスパのデザインをただ真似ただけのようにも見えたホンダ・ジョルノでしたが、その性能、使い勝手の良さがベスパファンではない別のユーザーに支持されたのです。原付の歴史を振り返った際、実に興味深い現象だったようにも感じます。

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