「鉄道はハードだけど安い、バスは楽だけど高い」――。東京近郊に住む人はそのような印象を受けますが、その法則が当てはまらない場所があります。

それが伊丹空港です。

羽田空港だとあるあるな「バス、楽だけど超高いな」現象

 東京都内や近郊に住み、羽田空港が最寄りの空港という人の多くは、安さの面などから考えて「空港からの交通は、鉄道一択」と考えているのではないでしょうか。羽田空港には「東京モノレール」「京急」が乗り入れ、前者は浜松町駅まで519円(IC乗車券運賃、以下同)、後者は品川駅まで327円となっています。さらにそこからJR山手線などを使えば、都心のどこへでも低コストでの移動が可能です。

「伊丹空港~大阪市街は鉄道一択や!」←当てはまらない!? そ...の画像はこちら >>

伊丹空港(乗りものニュース編集部撮影)。

 一方、羽田空港から都心を目指す「東京空港交通」のリムジンバスは、座席定員制で「大きな荷物を持っていてもハンズフリーで、かつ目的駅まで必ず座れる」というメリットはあるものの、その運賃は東京駅八重洲北口まで1200円、バスタ新宿まで1400円、池袋駅西口まで1400円と、鉄道に比べて割高となり、コスト面を考えるとやむを得ず鉄道を選ぶ人が多くなる印象です。

 こうした羽田空港の実情から「鉄道は安い」「リムジンバスは高い」と思い込んでしまうと、羽田から大阪の玄関口、伊丹空港に到着した際も、迷わず鉄道を選んでしまうかもしれません。

 ところが伊丹空港からの移動は、必ずしも「鉄道が便利で格安」とは言えない事情があります。以下、詳しくご案内しましょう。

 伊丹空港には大阪モノレールの「大阪空港駅」が直結し、その隣駅が阪急宝塚本線の「蛍池駅」です。鉄道で大阪市内を目指す場合は、蛍池駅で阪急宝塚本線の「大阪梅田駅」行きに乗り換えます。運賃は合計で440円です。

 大阪空港駅から蛍池駅までの大阪モノレールは、日中の時間帯、12分に1本の運行で、所要時間は3分です。また蛍池駅から大阪梅田駅までの阪急宝塚本線は、急行、普通ともに10分に1本運行されていますが、普通の大阪梅田駅着はあとから来る急行とほぼ同時刻となるため、実質的には「10分に1本の急行」で、大阪梅田まで14分かかると考えていいでしょう。

 そのため、大阪空港駅の改札を通るタイミングによっては、大阪空港駅、蛍池駅で待ち時間の合計が乗車時間の合計17分よりも長くなり、結果的に大阪梅田駅までの所要時間が30分以上になってしまうこともあります。

「伊丹空港から大阪都心」バスが実は最強説?

 また蛍池駅での乗り換えは、3Fレベルから1Fレベルへ、高低差のある移動が必要です。阪急の大阪梅田駅からは、大阪メトロ御堂筋線への乗り換えは比較的近いものの、JR大阪駅まではやや距離があり、ここでも高低差を含む移動となります。

 では、大阪市内までバスで移動する場合は、どうでしょうか。じつは伊丹空港から大阪市内各所に向かうリムジンバスは、便数も多く、所要時間も短く、かつ運賃も鉄道に比べそれほど高くないという特徴があるのです。

 まずは梅田エリア、いわゆる“キタ”へのリムジンバスを見てみましょう。

 梅田エリアへは「阪急観光バス」「阪神バス」が運行を担当し、梅田に4か所設けられたバス停留所まで、おおむね30分で結びます。

 日中の時間帯の終着点となる「大阪マルビル」「新阪急ホテル」「ハービス大阪」は、いずれも梅田の中心街に近く、かつ地上であることから、梅田エリアの北側、かつ3Fレベルからの移動となる阪急利用に比べ、便利です。

 そして運賃は730円で、鉄道よりも割高(290円)ですが、蛍池駅での乗り換えの手間、大阪梅田駅からの高低差のある移動を考えると、その差額は許容範囲ととらえる人も多いのではないでしょうか。

 さらにリムジンバスの優位性が際立つのが、大阪市内のなんばエリア、いわゆる“ミナミ”への移動です。

 伊丹空港からなんば駅前までは「阪急観光バス」が運行を担当しますが、運賃はこちらも梅田エリアと同額の730円です。そして所要時間は経路の大部分が阪神高速道路を走ることもあり、直行便で30分、JR難波駅(OCAT)を経由する便でも35分という俊足です。

でも「1区間に200円も払えない」そんな時の裏技とは?

 大阪モノレールから阪急、そして大阪メトロへと乗り継いでなんば駅に向かう場合の運賃は680円で、その差はわずか50円。乗り換えを含む所要時間はスムーズに連絡した場合でも約40分、状況によっては50分以上かかることを考えると、伊丹空港からなんばエリアへの移動は、リムジンバスに軍配が上がることは明らかでしょう。

「伊丹空港~大阪市街は鉄道一択や!」←当てはまらない!? その他にある“良コスパ”な移動手段とは
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大阪モノレール「大阪空港駅」は伊丹空港の正面、連絡橋を渡ったところにある(植村祐介撮影)。

 このように、羽田空港に比べリムジンバスのメリットが際立つ伊丹空港ですが、「それでも鉄道を使いたい」という人のために、ひとつ裏技をご紹介しましょう。それは伊丹空港から蛍池駅まで「歩く」という手段です。

 伊丹空港から蛍池駅までの直線距離は、実は500mほどしかありません。この間を歩く場合、空港の駐車場および外周道路をショートカットできる歩道がないため、いったん北側を大回りする必要がありますが、それでも蛍池駅までは15分ほどです。

 大阪モノレールの日中の運行間隔が12分に1本であることを考えれば、タイミングによってはモノレール利用とほぼ変わらない時間に蛍池駅に到達できて、その間の運賃200円を節約できます。その場合、阪急の大阪梅田駅までの交通費は、わずか240円です。

 もちろん、大きな荷物を持っての移動は論外ですが、バックパックひとつなどの身軽な旅行で、かつお天気に恵まれているときは、試してみてはいかがでしょうか。

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