日本初のフルフラットシート「ソメイユプロフォン」を備えた、高知駅前観光の「スマイルライナー」。2段寝台の上段・下段で乗り心地は違うのでしょうか。

実際に乗車し、それぞれ寝比べてみました。

区画は当日に指定される

 これまで日本の夜行バスでは実現できなかった「フルフラットシート」。高知駅前観光の夜行バス「スマイルライナー」が、ほぼ寝台というべき特殊座席「ソメイユプロフォン」を備え、2025年4月現在は週1往復でモニター運行しています。

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高知駅前観光の夜行バス「スマイルライナー」(2025年4月、安藤昌季撮影)

「スマイルライナー(ソメイユプロフォン)」は2段寝台が並ぶ構造。長さ177.5cm、幅50cm程度の区画が用意されています。法的には「座席」とのことですが、頭の部分はカーテンに囲まれ、枕、毛布も備わるので、見た目も中身も寝台といえるでしょう。

 1月の報道公開時に上段と下段で乗り心地が異なると聞いたので、違いはあるのか寝比べてみました。

 最初は上段から。東京発は、東京ディズニーランドのバスターミナルウェストから出発します。ここはJR舞浜駅(千葉県浦安市)から徒歩15分はかかるので、始発から乗る人は注意が必要です。座席位置は当日に伝えられ、自由に選べません。筆者(安藤昌季:乗りものライター)は中央列の2番目でした。

 インターネット上では「狭い」という意見も多い「ソメイユプロフォン」ですが、中央列は頭上に荷物棚などないため、頭をぶつけることはありません。左右の荷物置場が使えるので、小物や靴(ビニール袋が渡されて、入口で脱ぐ)程度なら問題なく置けます。ただ、大きな荷物はどこにも置けないので、乗車時にトランクに預けることを強く推奨します。

上段と下段 それぞれでの過ごし方

 上段中央列は三方がカーテンに囲まれ、前には上段区画があるので、個室感を強く味わえます。横幅は標準体型の男性(173cm、73kg)である私でも狭いですが、フルフラットの快適さは、これまでのいかなる個室バスでも得られない、圧倒的な寝心地の良さです。

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「ソメイユプロフォン」上段(2025年4月、安藤昌季撮影)

 もし狭いと感じたなら、体を斜めにして、対角線上に寝るのも手でしょう。シートベルトはありますが、それほど締め付けられません。

 上段では左右の揺れを大きく感じました。重力が後ろにかかるような独特の感覚もあります。下段の揺れは普通のバスに近いので、揺れが不安なら下段でしょうか。前述した通り自身では区画を選べませんが、予約時に2人グループなら上段と下段になる模様です。

 走行中は、上段はそれほど走行音やエンジン音がしませんが、下段は絨毯で軽減されているものの、音がそれなりに聞こえてきます。

一般的な夜行バスより、頭の位置が床に近いからだと思われます。

 区画への出入りは、意外にも上段の方が楽だと感じました。ハシゴを登る必要はありますが、下段は区画に入れる場所(隙間)が少ないので、慌てて区画に入ろうとしたりすると、体が引っかかることがあります。

 区画内の居住性は、上段中央列は枕を使えば上体を少し起こせますが、下段は天井が低いので難しいでしょう。体を起こすのなら棒に掴まることが可能な上段の方が楽です。

モニター運行も盛況な模様

 個室感は上段・下段とも同じように味わえます。通路が狭いため、人の出入りがあるとカーテンを押されることがありますが、途中の停留所は起きている時間帯の停車ですし、休憩停車でも区画から出るのが大変なためか、あまり出入りする人はおらず、それほど気になりませんでした。

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終点の桟橋停留所は、高知駅前観光本社前(2025年4月、安藤昌季撮影)

 なお、上段の方がよく換気されるようです。下段は特に夏場、暑くなるかもしれません。

 現状の「ソメイユプロフォン」は試作車なので、コンセントや小物置場はありません。高知駅前観光によると、今後は取り付ける方向で検討しているとのことでした。なお、フリーWi-Fiはあります。

 筆者は、ポシェットを身に着けるのが最適解だと思います。カーテンにものを立てかけると、隙間から落ちる危険性もあり推奨できません。実際、上段の人がスマートフォンを下段の区画へ落とした事例があるようで、乗務員から注意喚起がなされていました。

 筆者は上段・下段のどちらでもよく眠れました。終点の桟橋停留所でも、寝入って区画から出てこない人を見かけたので、寝心地はよいということなのでしょう。東京ディズニーランド~桟橋間の所要は12時間ですが、途中のバスタ新宿~徳島駅間であれば8時間です。区間利用なら、あっという間のバス旅かもしれません。

 乗車率も1度目が満席、2度目も1席キャンセルが出ただけと盛況でしたが、ほぼ個室なので満席でも圧迫感はありませんでした。「ソメイユプロフォン」は総じて快適だと感じました。よって、たとえ料金が高くても移動手段のひとつとして筆者は選ぶでしょう。

 なお、モニター期間中は東京~徳島・高知間で7000円代と格安です。

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